ブックレビュー2010年の60冊目は、佐々木俊尚氏著、「マスコミは、もはや政治を語れない」を読了。
佐々木俊尚氏の著書に触れるのはこれが2冊目。
1冊目のバックナンバーはこちら。
前回読んだ上述のセルフブランディング本が非常に良かった上に、4月にあるセミナーで佐々木氏のお話しを直接伺うことができ、さらに名刺交換とメールの交換までさせていただき、一気に親近感が湧き、同氏の著書をどんどん読んでみようということで、まず選んだのが本書。
マスコミは、もはや政治を語れない by 佐々木俊尚 〜 僕らを待つのは「民主主義2.0」なのか? [書評]
この本では、レガシーのマスコミが「マスゴミ」などと揶揄されるようになって久しいが、マスコミの姿勢にどのような問題があるのか、そしてそれら旧来のマスコミとはまったく異なる潮流として現れた「ネット論壇」「ブログ論壇」はどのようなもので、どういった発言をしてきているのかを紹介しているとともに、先鋭化するネット右翼の現状などについても語っている。
セルフ・ブランディングの本とは異なる切り口だが、本書も切れ味するどく迫力もあり、スピード感に富む文章も相まって一気に読んでしまった。非常に良い。
佐々木氏がマスコミの問題点として挙げている「情緒的批判」という言葉には僕も強く同意する。
いつの頃からか、マスコミはあらゆる事象を分析したうえで論理的に報道することをやめ、関係者の怒りや悲しみ、哀れさなどを強調する報道姿勢となってしまった。
ここからは佐々木氏の主張ではなく、本書を読んで僕が感じていることなのだが、スポーツ新聞や大衆紙ならいざしらず、大手の全国紙がロジックに基づいた報道を諦めてしまった背景には、新聞・テレビ各社の業績の悪化が深く関係しているのではないかと感じている。
ネットの興隆に反比例する形で、テレビ・新聞各社の業績は悪化していることは承知の通りだ。
ネットの世界ではニュースは見出しが命で、クリックされないと本文を読んでもらうことができない。
そして新聞各社もその潮流を受け、見出しに本来のソース以上のインパクトを与えるべく、煽り気味の見出しを付けるようになっていると推測する。
見出しだけでなく内容に関しても、小泉「劇場」と言われた頃から、硬派な報道番組とバラエティー的なワイドショーの区別が曖昧になり、結果として、より大衆受けするワイドショー的、大衆紙的な「情緒」報道が一般紙や報道番組にまで押し寄せてしまったのだ。
また、「中立」という名のもとに、マスコミがその時々で、主張を180度変えてしまうことについても佐々木氏は糾弾している。
もちろん「民意」の表明に間違いはないのだろうが、もし主張を従来から変更するならば、変更する旨の宣言と、その経緯・理由の説明がされるべきだ。
そのように迷走する大手マスコミに対し、数々のブログ上に政治的意見が表明され、「ネット論壇」、「ブログ論壇」が形成されている。
そしてそれらブロガー達は、マスコミとは異なり、冷静かつ論理的に意見を表明し、その意見がTwitterなどを経由して広く伝播し始めている。
だが、ネット上での大勢は、まだまだネット以外の世界ではごく小さな声に過ぎない。仮にマスコミが衰退するとしても、個々のブロガーが、現状のままでマスコミの代わりになるとは考えられない。
明らかに政治とマスコミと国民を取り巻く環境は大きな変化の時期に到達している。これから我々を待っているのは、ひょっとしたら著者が語る「民主主義2.0」なのかもしれないし、最悪の事態として「ファシズム2.0」が到来してしまうかもしれない。
だが、我々には武器があるのだ。
意見を表明できるブログやTwitterという武器が。個人が多数に向かって自由に意見表明できる時代は過去になかったものだ。
これを有効に使い、僕達はより優れた時代へと、自らの手で扉を開かなければならない。じっと待っていてはダメなのだ。
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。