ブックレビュー今年の24冊目の読了は千葉忠夫氏著、「世界一幸福な国デンマークの暮らし方」。
世界一幸福な国デンマークの暮らし方 by 千葉忠夫 〜 日本人は幸福になりたくないのかと思わされる一冊 [書評]
デンマークという国について、あなたはどれだけのことを知っているだろうか。国のある場所、首都、人口、言語、そしてそこで暮らす人々や文化など。
多くの日本人同様、僕はデンマークという国やそこで暮らす人々について、ほぼ何も知らない。
首都がコペンハーゲンであり、国は北欧に位置して国土が大きく半島部分と島嶼部分に分かれ、広大な未開の土地グリーンランドの領有権を持っている国。バイキングの国。そしてキルケゴールの国。その程度だろうか。
アメリカの研究機関、World Values Surveyが実施した幸福度ランキングという指標がある。
100カ国を対象に「あなたは幸せですか?今の生活に満足していますか?」と問うたところ、Yesと回答した人が一番多く、幸福度ランキングNo.1に選ばれたのがデンマークだった。
ちなみに2位はプエルトリコ、3位はコロンビア、アメリカは16位、フランスは37位、そして日本は43位という結果だった(2008年発表)。
イギリスの別の幸福度ランキング調査でも1位はデンマークとなり、2位がスイス、3位がオーストリア、そして日本はナ何と170カ国中90位という結果だった(2006年)。
「世界一幸福な国」というタイトルは、この両指標のランキング結果から導かれたものだ。
若くしてデンマークに渡りデンマーク人の妻と結婚し、デンマークと日本の掛け橋となった著者が、デンマークにおける政治や経済のある方と日本との文化や価値観の違いを表すことで、閉塞感に満ちた日本が今後どういう道を進むべきかを示している。
まず、日本と根本的に違うのは、デンマークでは医療費は原則すべて無料ということ。
ちょっと風邪を引いた時のような医療費から入院、手術に掛かる費用、末期治療や高齢者の介護までが無料だ(整形手術など一部を除く)。
また、失業保険はそれまでの給与の90%が最大4年間支払われ、それでも仕事が見つからない人には早期年金が支払われる。
障害者も同様で、早い段階から年金が支給され、人々は飢えることがない。
デンマークでは高齢者が老人ホームに入るという発想を捨て、高齢者はケア付きの住宅を集中させたエリアで極力自立した生活を送ることができるようになっている。
食事や掃除などのケアが十分受けられるうえ、万が一の時には10分で担当者が駆けつける体制になっている。
そしてこれらは全て年金で賄われるため、高齢者は自身の生活を心配する必要がない。
国会議員選挙の投票率は90%を超え、地方議員選挙でも70%を切ることがない。
そして人々は収入の25%を消費税として支払い、所得税等を含めた税率は50%を超える。
そして食糧自給率は300%を越え、ほぼ全ての国民が一戸建て住宅に暮らしている。
いかがだろうか。これがデンマークの暮らしである。
間違わないで欲しいのだが、デンマークは決して社会主義国ではなく、民主主義の国家である。
だが、デンマークは人々が豊かに暮らすための保障に対して国民が喜んで税金を支払い、そしてその税金が正しく使われている結果、国民の意識調査において、税率50%以上という現在のシステムに満足していると答えた国民が85%を超えるという。
そしてデンマークは少子高齢化をも乗り越えた国家だという。
一時期女性の社会進出に伴って離婚が増加し、出生率も低下したが、その後国を挙げて女性の職場環境の改善に取り組んだ結果、出生率は1.9にまで回復しているという。
如何だろうか?
これはデンマーク出身のアンデルセンの書いたおとぎ話ではないのだ。
こんな国が世界にちゃんと存在して、国民は我々と同じように生活しているのだ。
日本はアメリカに次ぐ世界2位の経済大国のはずだ。
何故デンマークで実現できていることのごく一部さえも実現できないのか。何故日本人はずっと豊かで幸福な自分を実現できないのか。
鍵はやはり選挙に対する姿勢を含む、国民の政治に対する本気度の違いなのではないかと感じている。
日本では国政選挙でも投票率が90%を超えることなど有り得ない。
投票率が低いとそのたびメディアでは「政治に対する不信でしょう」というようなことを言うが、それは間違いだろう。
政治に対する不信ではなく、「無関心」なのだ。
自分の生活や環境を自分達の力で改善して、豊かな生活を送ろうという意欲があまりないのだ。
それは結局のところは日本人は被支配体質ということなのではないだろうか。
誰かが良くしてくれる。誰かが何とかするだろう。
国のハンドリングをすべて政治家に丸投げしてしまい、投票にも行かずに自分がおかれている状況に甘んじてしまう。
それでは何も変えていくことができない。
「あなたの収入の半額を税金として国に差し出してください。その代わり医療費は全額無料にして、高齢者も全員が死ぬまで国が面倒をみます」
もし日本でこういう声が上がったら、あなたは真剣にその指導者に賭けて良いか考えるだろうか?
「そんなことできるわけない」と考えるだろうか?
それとも「どれぐらい本気かチェックしよう」と思うだろうか。
デンマークは理想郷ではないし、夢の国でもない。犯罪もあるし自殺者も多い。
だが、今日本人の多くが感じている閉塞感を打破するためのヒントを、非常に多く持っている国であることは間違いなさそうだ。
我々の力で日本をもうちょっと住みやすい国に、なんとかできないものだろうか。
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。