日本人は世界に誇る美しい美点を持つ民族だと僕は思っている。
それは、「和を以て貴しと為す」の精神で、譲り合い、お互いの気を読んで行動することとして、現代の我々にも深く根付いている文化だ。
しかし、その文化は、同時に我々日本人に、さまざまな弊害、副作用ももたらしているように感じる。
それが、日本人特有の「遠慮」という文化に現れている。
「思ったとおりのことを言ったら嫌われる」
「他人と同じように振る舞わないとマズい」
「やりたいようにやって生きると叩かれる」
日本人の間には、そのような「遠慮し合う」文化があり、でもそれは、時として「全員で我慢」という状況を生み出しているように感じる。
遠慮し合っていないと、本当にダメなのか?
やりたいことをやると、本当にマズイことになるのか?
そろそろ盲目的に遠慮して息苦しさ、生きにくさを全員で共有する時代は終わりにしても良いのではないだろうか。
そんなことを思っているタイミングで、素晴らしい本が発売された。
鳥居祐一さんの「遠慮しない生き方」だ。
同調圧力が強く「俺も我慢しているんだからお前も我慢しろ」という風潮になりがちな日本人に大きな学びを与えてくれる一冊だ。
さっそく紹介しよう。
遠慮しない生き方 by 鳥居祐一 〜 生きる息苦しさが消えて自分らしく生きられるようになる名著 [書評]
1. 遠慮しない生き方とは、わがままに我を通すことではなく、好き・嫌いをハッキリ伝え、発信すること
自分らしく生きるとは、ひとことで言ってしまえば、自分の好きなものや好きなことを追求していく人生ではないだろうか。
もちろん、人間誰しも義務や責任があるから、「やらなければならないこと」をする時間もあるだろう。
でも、そもそも多くの日本人は、「やりたいこと」「好きなこと」をまったく口に出さず、「やらなければならないこと」や「やるべきこと」ばかりをやっている状態だ。
本書で鳥居さんが提唱している「遠慮しない生き方」とは、わがままに我を通し、他人の意見や主張を一切聞き入れないような生き方では、決してない。
「遠慮しない生き方」とは、まずは自分の好き、嫌い、やりたい、やりたくないをしっかりと自分自身で認識し、それを口に出して行動することだ。
小さなことだが、たとえば会社の同僚や仲間内で食事に出かけるとき、ちゃんと「私はこれが食べたい」「このお店に行きたい」と発言できているだろうか?
「みんなと一緒でいいです」「他の人に合わせます」と顔色を見て遠慮することが習慣になってしまっている人がとても多い。
まずは「私はこのお店に行きたいけれど、皆さんはいかがですか?」と、自分の意見を述べたうえで、周囲の反応を聞けば良い。
これは小さなことだが、とても大切な最初のステップだ。
なぜなら、遠慮ばかりしていると、「本当に自分が欲しいものが何なのか分からない」という状況が生まれてしまうからだ。
鳥居さんの個人コンサルには、「自分を変えて成功したい」という人が押し掛ける。
しかし、鳥居さんが「ではどんな自分になりたいんですか?誰かロールモデルになるような方はいますか?」と問いかけると、「それが良く分からないんです」と答える人が多いという。
「こうなりたい」「こういう人生を送りたい」が自分で分からなければ、変化のしようがない。
そんな方は、まずは自分の「好き・嫌い」「快・不快」をしっかり感じ取り、それを発言することから始めてもらいたい。
2. 「八方美人」ではなく「一方美人」な生き方を目指す
遠慮しない生き方とは、好き・嫌い、快・不快を明確にし、それに基づいて決断して生きること。
そうなると、当然のことながら、自分とは好き嫌いが合わない人、快・不快の基準が違う人が現れる。
多くの日本人は、好き嫌いが合わないこと、主張が違うことを恐れるあまり、自分の意見を言えなくなっている。
ところが、八方美人的生き方は、結局のところ、誰とも本音では付き合っていないことを意味する。
むしろ、自分の「好き」「楽しい」を明確にして発信していくと、周囲には共感してくれる人が集まってくるようになる。
「くだらない」「興味がない」とそっぽを向く人が10人中9人だったとしても、それで構わない。
残った1人の人があなたの「好き」「楽しい」に共感して、一緒に楽しんでくれる。
そこには遠慮も嘘も見栄もなく、本当の人間関係が作られていく。
「八方美人」ではなく「一方美人」的に尖り、共感できる人と本当の付き合いをする。
それこそが遠慮しない生き方なのである。
3. 遠慮しないで生きるとお金と幸せと自由がやってくる
著者の鳥居さんが「遠慮しない生き方」を強く奨めるのに理由がある。
それは、遠慮しない生き方をした方が、稼げるからだ。
ただ稼げるだけではない。
お金と幸せと自由が同時に押し寄せてくるのだ。
それには、時代的背景がある。
20世紀は「組織の時代」だった。
大企業の製品やサービスが優れているとされ、大きな会社に勤めることが人間のステータスにもなっていた。
しかし、21世紀は「個の時代」に変化している。
インターネットの登場で人間の趣味趣向は細分化し、「超個別化」した。
商品やサービスは行き届き、品質が良いのは当たり前。
それよりも、「この人からどうしても買いたい」という、ファンマーケティングの時代になっている。
ブログやSNS、メルマガなどの発達により、個人のビジネスが格段にしやすくなっている。
鳥居さんも、そして僕も組織を持たず、個人として発信して生きている。
そんな個人は誰に向かってビジネスをするか。
それは、自分のファンに向かってするのだ。
鳥居さんは「B to B」でも「B to C」でもなく、「B to F」の時代、と説明している。
より多くのファンを魅了するのは、果たしてどんな人だろうか?
他人に遠慮ばかりして、我慢して縮こまって生きている人を、あなたは魅力的と思うだろうか?
そうではないはずだ。
堂々と自分の道を歩み、尖ってオンリーワンな生き様を発信し続ける人にこそ、多くのファンがつき、そのファンがあなたの商品やサービスを買ってくれる。
だからこそ、発信者は遠慮せず、どうどうと好きなことを追求し、あるがままに生きるべきなのだ。
4. 正しい人と付き合う
鳥居さんは本書で「人は人でしか磨かれない」と書いている。
僕自身、鳥居さんと初めてお会いしたのは2010年6月のこと。
当時まだサラリーマンだった僕は、「プロブロガーとして独立したい」と願い活動していたが、ブログだけではブランディングが不十分と感じていた。
僕はブログだけではなく、本を出版して著者になることこそ、自分ブランドの構築に欠かせない要素と考え、良いセミナーを探していた。
そんなとき、見つけたのが鳥居さんの「出版合宿セミナー」だった。
僕は鳥居さんともお会いしたことがなかったし、受講生にも知り合いは一人もいない「完全アウェイ」な状況のなか、合宿セミナーに参加した。
その合宿セミナーは本当に素晴らしいセミナーで、超一流の講師陣と受講生に囲まれ、僕はたった一泊二日で完全に「次元上昇」していた。
それまでは漠然とした「夢」だった出版が、明確な「目標」に変わり、仲間とともに切磋琢磨する「現実」へと変化したのだ。
そしてその合宿セミナーから1年後に僕は独立して「プロブロガー」になり、さらに2年後2012年に「ノマドワーカーという生き方」で著者デビューを果たした。
合宿セミナーのときは、鳥居さんや講師の樺沢紫苑さん、田渕隆茂さんらとは、人生のステージが違いすぎて、個人的なお付き合いなんて、考えることすらできなかった。
しかし、僕は「ノマドワーカーという生き方」のなかに、「人生のステージを変えたセミナー」として、鳥居さんと鳥居さんのセミナーを2ページに渡ってご紹介させていただいていた。
出版当初は鳥居さんに連絡することができなかったのだが(遠慮してしまった点を深く反省)、出版翌年に、あるパーティーで鳥居さんと偶然お会いすることができ、そのときは勇気を持ってご挨拶させていただいた。
そして、鳥居さんのセミナーに参加し2年後出版できたこと、お陰さまでヒット作になったこと、そして著書のなかで鳥居さんとセミナーのことを紹介させてもらったことを伝えることができた。
鳥居さんはそのことをとても喜んでくださり、それ以来、いつも僕のことを応援し続けてくださっている。
昨年僕が7冊目の本「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」を出版した際も、出版記念セミナーに遊びにきてくださった。
そして昨年末の鳥居さんのメルマガでは、僕の新刊を、「2018年ビジネス書年間ベスト10」でご紹介くださった。
鳥居さんが僕を応援してくださることで、鳥居さんのファンの方たちも、僕を応援してくださるようになる。
これだけたくさんのご縁とご恩をいただくと、恩返ししないわけにいかなくなっていく。
これこそまさらに、「人は人でしか磨かれない」ということなのだと僕は思っている。
5. 「この人は」と思う人には遠慮してはいけない
遠慮しない生き方をしていると、あなたの周りにファンが集まってくるようになる。
そのときに注意すべきことがある。
あなたのファンには、二通りの人がいるということだ。
一つは純粋に、あなたを応援してくれ、支えてくれるファン。
そしてもう一つが、「あなたをもう一段上のステージに引っ張り上げてくれるファン」だ。
もちろんどちらのファンも大切なファンであることは間違いない。
だが、後者の「人生のステージを上げてくれるファン」こそがとても大切だ。
そして、この後者のファンに対してこそ、遠慮してはいけない。
この後者のファンは、往々にして、あなたより年上で、あなたよりも人生のステージが上で、経済的にもあなたよりも遥かに成功している人の場合が多い。
そういう方が誘ってくれたり提案してくれたときに、「私なんかが行っていいんですか?」と遠慮してしまう人が多い。
だが、それは人生の損失そのものだ。
「この人は」と思う人からの応援は、多少無理をしてでもしっかり受け取ることが大切だ。
6. 「自分ファースト」の願望を打ち立てよう
なんとなく、ボンヤリな願望しか持っていない人は、なんとなく、ボンヤリした人生を送る。
何も願わず、何も求めず大成功という人は、まったくいなくはないのかもしれないが、稀だろう。
「人生をより良くしたい」「自分らしく生きたい」と願う人は多いが、「では具体的にどのように?」となると、曖昧な人が多い。
まずは、具体的にどのような人生を自分が望むのか、何を求めているのかを明確にしよう。
僕は、とにかく自由であることが最優先なので、社員は雇わず自分一人で成立する仕事を選んでいる。
鳥居さんと同じく物欲はほとんどないが、住居空間と食、旅にはお金を惜しまない。
だからこそ、麻布と鎌倉のデュアルライフを実践したり、旅をたくさんして、旅先の文化に触れ、旅先の人と会い、土地のものを食べるのが最高の時間に感じる。
自分ファーストの願望を打ち立てることは、他人をないがしろにすることではない。
個人がお金を稼ぐことが圧倒的に簡単になった現代だからこそ、自分の「好き」を先鋭化させること自体が、「自分への再投資」になり、さらに豊かな人生を送れるようになるのだ。
7. 「やりたいこと」を見つけるにはまずライフスタイルから考える
やりたいことが見つからないという人が多いと先にも書いたが、その人達の多くは、先にビジネスモデルを考えてしまうから、やりたいことが見つからないのだ。
「どんな仕事をしたいか」ではなく、「どんな生活を送りたいか」から考える。
つまり、ライフスタイルから先に考えることで、そのライフスタイルを実現させるためにはどんな仕事が良いかが浮かび上がってくる。
鳥居さんと僕は規模は違うが望むライフスタイルは似ていて、とにかく自由に動き回りたいというのが圧倒的にある。
そして僕の場合は、麻布・六本木の都会の生活と、海と山と空に囲まれた鎌倉での自然と一体化するライフスタイルを同時に手にしたい、という想いが強い。
だからこそ、東京と鎌倉のデュアルライフを実践しているし、鎌倉に引き篭もって執筆をし、六本木では講座やセミナーを開催する、という今のビジネスモデルがマッチしているのだ。
今後ライフスタイルが変化したら、また稼ぎ方も変わるかもしれないが、それはそのときそのときで、柔軟に変化させれば良い。
先にビジネスモデルではなく、先にライフスタイル。
これこそが、遠慮しない生き方の構築のポイントだと僕は思っている。
8. 「セルフイメージ」を上げて遠慮という言い訳をなくす
鳥居さんは以下のように書いている。
「遠慮は、ときに「美しい遠慮」を装った言い訳にすぎない場合があります」
これは本当に気を付けるべきこと。
良い意味の謙遜をしているフリをして、自ら無意識に「行動しない言い訳」「自分の殻を突破する不安に対する逃げ道」にしていることがある。
これをやってしまう背景には、セルフイメージの低さがある。
「どうせ自分は失敗する」
「挑戦して失敗したら笑いものになる」
「恥をかくくらいなら最初からやらない方がマシ」
こんなセルフイメージだと、人生のステージを上げてくれるチャンスをみすみす逃してしまうことになる。
セルフイメージを上げるためには、とにかく新しいことにチャレンジして、成功体験を積み重ねるしかない。
チャレンジすれば、100%の絶対的な失敗などというものは存在しない。
新しいものを得ることで、自分に自信がつき、さらに人生のステージを上げることができるようになる。
成功体験がさらに新しいチャレンジへの勇気になる。
遠慮が言い訳になっているケースは多い。
謙遜なのか言い訳なのか、良く考えよう。
9. 自分という情報を遠慮せずアウトプットする
僕は究極のブランディングは、自分のライフスタイル、生き様がブランドになっている状態だと思っている。
自分自身をブランド化していくために、絶対に必要なことがある。
それは、「発信」つまり「アウトプット」である。
そして、ただの情報発信ではなく、「自分」という情報を発信し続けることが、何よりも大切だ。
僕自身、ブロガーとして人気を得ていくプロセスがあった。
最初は誰しも無名なわけで、そこからファンを獲得していくために、最初は「iPhone」「Mac」「ビジネス書」などの力を借りた。
でも、そのままではただのブロガーで終わってしまうので、そこから「自分ブランド」の構築に乗り出した。
「立花が紹介する本なら素晴らしいはず」
「たっちーが紹介しているお寿司屋さんなら美味しいはず」
「たちさんが飲んでいるサプリなら信頼できる」
この逆転現象が、ブランディングのポイントだ。
鳥居さんはメルマガを駆使してご自身をブランド化させた。
メルマガを使ったブランディングは本書に詳しく書かれているので熟読してもらいたい。
ブログでもメルマガでもやるべきことは共通だ。
尖ってオリジナリティを持ち、それを飾らず盛らずに堂々と発信し続けることだ。
アウトプットも遠慮していては面白くもなんともない。
遠慮せずに尖るからこそ、ファンが熱狂するブランドが構築されるのだ。
10. 遊べば遊ぶほど富は拡大する
日本人には、お金を稼ぐというと、辛くて苦しい思いをしないといけない、という先入観を持っている人が多い。
しかし実際は、お金というのは、遊べば遊ぶほど入ってくるものだ。
鳥居さんは僕よりも遥かにスケールが大きいが、僕もその点には完全に同意である。
そもそも現代は遊びと仕事は完全に融合させることができる。
そして、楽しく遊べば遊ぶほど、多くの新しい人と知り合い、刺激を受けたり、新しい知識を得たりすることができるようになる。
現代は「個の時代」そして「B to F」の時代であると前に書いた。
だからこそ、我々発信する側の人間は、徹底的に楽しみ遊ぶことで、より魅力的な人間になり、発信も魅力的になることで、さらに多くのファンを魅了できるようになる。
そして、より多くのファンを魅了することは、ぐるっと回って、より多くの商品やサービスを買ってもらえ、よりお金を稼げるような人生になっていくことを意味する。
しかめっ面をして髪を振り乱しても、モノが売れる時代ではない。
楽しんで遊んで刺激を受けて、その楽しさや刺激を発信することで、さらにモノは売れるようになり、富が拡大していくのである。
まとめ
僕は41歳のとき、2011年に会社員生活に終止符を打ち、ブロガーとして独立した。
ブログを始める前の人生と、ブログを始めてからの人生は、180度違う人生になった。
なぜそんな大きな変化が起きたか。
それは、「情報発信」をし続けたからだ。
発信をするからには、「自分の軸」がないとメッセージは届かない。
そして、自分の軸を作るとは、そのまま「遠慮しない生き方」を実践するしかなくなるのだ。
それを10年繰り返したら、僕も遠慮しない生き方の実践者になっていた。
でも、鳥居さんのスケールは、僕よりも遥かに大きくて、最先端をいっている。
僕もこれからも鳥居さんを見習って、さらに遠慮しない生き方を追求していきたいと思っている。
遠慮しない生き方ができていないなぁ、どこから始めたらいいかなぁ、という人も。
遠慮しない生き方は実践してるつもりだけど、もっともっと尖りたい、という人も。
ぜひ手に取ってほしい。
鳥居祐一著、「遠慮しない生き方」超オススメです!!
「遠慮しない生き方」のチェックはこちらからどうぞ!!
著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。