僕は作家であり、プロフェッショナル・ブロガーである。
「書くこと」は「タイプすること」
要は「書くこと」で食っている人間である。
そして、現代においては、「書くこと」と言っても実際には「タイプすること」を意味する。
今でも原稿用紙に万年筆、というスタイルの人もいるかもしれないが、僕は実際の原稿書きは100%コンピュータへのタイプだ(アイデア出しは手書きの方がいいのでノートやメモも使う)。
タイプすることが仕事ということは、タイプのスピードが速ければ速いほど、生産性が高いということになる。
もちろんどんなにタイプが速くても、書いた原稿の中身が詰まらなければ意味がないのだが、今はそれはちょっと脇に置いておく。
僕のように書くことが仕事とまではいかなくても、仕事で大量の文字をタイプしている人は実はとても多い。
報告書、議事録、企画書、メール、日報、始末書などなど、サラリーマンのデスクワークとタイプは今や切っても切れない。
また、プライベートにおいても、ブログやSNS、それにメッセやメールで文字をタイプする時間は爆発的に増えてきている。
Windows 95搭載機が一気にに普及して、オフィスや家庭に必ずパソコンがある、という状況が生まれてもうすぐ20年が経とうとしている。
以前は一部の専門職だけに必要だったスキル「タイプ」は、今やすべての国民が日々行う「日常のこと」へと変化したのだ。
デスクワークが長い人、そして書く文章量が多い人ほど、タイプスピードの差が仕事やプライベート時間の効率の差となってしまう。
ところが、多くの日本人は残念ながら、タイプスピードの差が生産性に重大な差をもたらすことに気づいていない。
なぜ日本人はローマ字入力するのか?
多くの日本人はコンピュータの入力方法を「ローマ字変換」にしている。
実際僕のセミナーで受講者の人に挙手してもらったことが何度かあるのだが、9割くらいの人がローマ字変換でタイプしている。
実はこの「ローマ字変換」が、日本人の生産性を低くしている大きな要因だと僕は思っている。
ローマ字変換は、日本語を打つのにわざわざアルファベットを使う。
「こんにちは」は日本語では5文字だが、アルファベットにすると、「Konnichiha」と10文字になる。2倍である。
アルファベットを打とうがひらがなを打とうが、タイプのスピードは変わらないのだから、2倍の文字を打つためには2倍の時間がかかる。つまり生産性は半分になってしまうのだ。
いろいろな本で、日本人のホワイトカラーの生産性はOECD諸国で最下位で、トップのアメリカの70%しかない、という話を聞く。
日本人のホワイトカラーの生産性の低さの要因の一つとして、僕はこのタイプスピードの「遅さ」があるのではないかと思っている。
そもそも、日本語変換というのは、一旦ひらがなで全文字を入力してから、漢字・ひらがな・カタカナに変換する必要がある。もともと二度手間なのだ。
それを、さらにわざわざ外国語であるアルファベットを最初に入力して、それをひらがなに変換し、さらに漢字やカタカナに再変換しているのだから、論理的に考えれば遅くなるのが当然だ。
ところが多くの日本人は、わざわざ半分しかスピードが出ない「ローマ字変換」を使い続けている。
これは本当にもったいないことだ。
同じくセミナー受講生に「なぜローマ字変換を使うのか」と質問したことがある。
回答は大体2種類に集約される。
1つ目は、最初にローマ字変換で憶えてしまったから。
2つ目は、英語を打つのと日本語を打つので入力方法が違うと面倒だから。
しかし、ではなぜ最初にローマ字変換を憶えてしまったのか。
たとえば中学生や高校生がパソコンを使い始めたとして、それから生涯タイプをし続けるとして、その生産性がずっと2倍違うのだ。
「とりあえず1種類憶えればいいや」と安易にローマ字変換でタイプを始めてしまうと、一生ローマ字変換しかできない人生になってしまう傾向がある。
そもそも欧米人は、パソコン普及前から「タイプライター」を使う文化があったので、年配の人でも驚くほどタイプが速い人が多い。
日本人はパソコンがやってくるまでタイプとは無縁だった人が多く、もともとの入力速度自体が遅い傾向がある。
最初からハンデがあるのに、さらに半分のスピードしか出ないメソッドを使っていては、勝負にならないのだ。
2種類のキーボード配列を憶える手間が多少かかったとして、延々とローマ字変換で1/2の生産性でタイプをし続けるのは、あまりにもナンセンスだと言えないだろうか。
親指シフトのススメ
僕は大学時代に卒論を英語で打つ必要があり、友人から中古のワープロを買ったときに、初めてタイプをする習慣を得た。
卒論が英語なので当然ローマ字打ちを憶え、会社に入ってからもずっとローマ字変換だった。そこになんの疑問もなかったし、不便も感じていなかった。
もう一つ別のメソッド「かな打ち」が存在していることは知っていたが、「何もそんな面倒なモノ憶えなくたっていいや」と思っていた。
22歳でキーボードを打ち始めてから39歳まで、僕はずっとローマ字打ちをしていたのだ。
転機が訪れたのは39歳の時。
僕はこのブログを始めたばかりで、まだサラリーマン。何とか独立したいと思っていたが、当時はまだPVは月間12,000程度の弱小ブログだった。
2009年の春に、一冊の本と出会った。この本が僕の人生を大きく変えることになった。
勝間和代さんの「無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法」である。
無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法
勝間 和代 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2007-04-05
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この本の中で勝間さんは、ローマ字入力でもかな入力でもない、第3の入力方法を推奨していた。それが「親指シフト」だ。
「親指シフト」とは、1980年代に富士通が自社のワープロ「オアシス」用に開発したキーボード配列だ。
親指シフトの特徴は、かな打ちなのに、ほとんどのキーをホームポジションで打ててしまうことだ。
「かな入力」の問題は、ひらがなが50文字もあるので、キーボードの端っこの遠いところにまで文字がアサインされていることだ。
つまり、「かな入力」だと、ホームポジションから遠いところに指を伸ばさないと打てないという問題がある。
それに対して親指シフトは、スペースキーの両側に配置されている「シフトキー」を押した場合と押さない場合でタイプされる文字が変わる。
従って、25のキーで、50音を表現できる。だから、ホームポジションから遠い場所まで指を延ばす必要がなく、タイプが高速になる。
無駄に2倍近い文字を打つローマ字入力はもちろん、かな入力よりも親指シフトが高速とされる理由は、考え抜かれたキーボード配列にある。
日本語には母音があり、母音のタイプ数はローマ字打ちでも親指シフトでも変わらない。
しかし、子音の場合はタイプする文字数が2倍になる。
従って、論理的には実際の打鍵数は、親指シフトはローマ字打ちの約6割になる。
スピードとしては、ローマ字打ちの1.6〜1.7倍になるのだ。
しかも、ローマ字から日本語という不自然な変換作業をしなくて良くなるので、モノを考えながら打つことができる。
従って、実際にはローマ字入力の約2倍のスピードで打つことができる(僕の場合)。
勝間さんのメルマガやブログ、書籍を読んでいる人は、「この人はいったいどうしてこんなに大量の文章を書き続けられるのだろう?」と疑問に思ったことはないだろうか。
実はその秘密がこの親指シフトにあったのだ。
勝間さんは19歳から親指シフトを始め、わずか3日でローマ字打ちよりもタイプ速度が速くなったという。
「これだ!」と39歳の僕は思った。
サラリーマンとしての多忙な日々を送りながら、ブロガーとしてどんどん記事を量産して、PVを増やしたい。
タイプ速度が2倍になるなら、今の2倍のブログが書ける!
僕はそう信じて、親指シフトの練習を始めた。
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。