このブログを読んでくださる方の多くは、自分でもブログを書いていたり、もしくは書こうとチャレンジした経験があるのではないだろうか。
ブログを書いたことのある人ならば、誰でも思うこと。
「どうしたらもっとアクセス数が増えるのだろうか」
本書「あっという間に月25万PVをかせぐ人気ブログのつくり方」は、著者がブログを開設してからわずか半年で月間25万PVという素晴らしい成果を出すまでの経緯とその戦略を書いた本である。
著者 @OZPA 様よりご献本いただました。ありがとうございます。
あっという間に月25万PVをかせぐ人気ブログのつくり方
OZPA 秀和システム 2011-09
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魔法の杖は存在しない
本書は地味な本だ。
扇情的なタイトルが付いているが、帯に登場している @goryugo がいうとおり、「特別なこと」はやっていないのだ。
特別なことをやっていないから、内容は地味になる。
だが、それが王道なのだ。やるべきことをコツコツと繰り返す。それ以外に道はない。
だから、その地味さを補うために著者 @OZPA は必死でおちゃらけている。
文体については、変な場所に不必要なダジャレが挿入されていると、フォトリーディングがそれを「異物」と関知していちいち読むスピードが落ちるので、ありがたくなかった(笑)。
さて、同じブロガーとして、著者OZPAが考え実践してきたことは、ほとんど僕自身がやってきたことと一緒だ。
だが、幾つかの違いがあり、その結果OZPAは非常に短期間で大きなアクセスを獲得した。
一つ目は非常に大きなことで、寄稿だ。
僕は他の人のブログに寄稿をするという発想を今まで持ったことがなかったし、寄稿したいと感じたこともなかった。
それこそコツコツと、一人でブランディングしながらやってきた。
だが、OZPAの場合は既にEvernote界では有名ブロガーだった @goryugo のブログに寄稿したことで、非常に短期間に知名度を上げることに成功している。
そしてもう一つは「はてブ」の活用だ。
僕自身、はてブの存在はずっと前から知っていたし、何度かたくさんのブックマークをしていただいたこともあるが、「はてブを稼ぐ」ことを意識してエントリーを書いたことはない。
エントリーの性質が僕とOZPAとでは違うのだ。OZPAのエントリーの場合、バイラルを起こすにははてブだったということだろう。
OZPA氏は早い段階からはてブのHot Entryを意識してエントリーを書いていたようで、これが功を奏している。
だが、これらの工夫も,特別なことをしているわけではない。
彼はもともとEvernoteやiPhoneが好きで、goryugoのブログに惹かれていた。そして自分のブログからしっかりgoryugoのブログのリンクを貼り、存在をアピールしていた。goryugoはOZPAのブログを読んでそのクオリティーを認めていた。
だからこそgoryugo から寄稿の話もあっただろうし、寄稿した記事が多くのはてブを獲得したのも、内容が良かったからだ。
間違ってはいけないのが、「寄稿させてもらえばアクセスが増える」と、知りもしない人に無闇に頼んだりしてもまったく意味がないということだ。
はてブにしても、OZPAは早い段階から自分のエントリーとの親和性が高いことに気づき、「良い記事」を書いた。
はてブは、読者が「良い」と思った記事をクリップする場合がほとんどなので、読者が「いい!」と思うようなクオリティの記事を輩出できたという点は、彼の努力なのだ。
自発的動機付けの素晴らしさ
この本を読んで意外に思ったのだが、実はOZPAは結構な自己啓発マニアか、そちら系の本を好む人間なのではないかと感じたこと。
本書では、至るところに「おっ」と思わせる、ちょっといい言葉が出てくる。
たとえば、「外的要因が引き金のモチベーションは長続きしない」という一節。
話題はそこから「自発的モチベーションを高める方法」へと続き、そこからさらに「目標設定」と「レビュー」、つまり「PDCA」の話に流れていく。
この手の本をある程度読んでいないと、ここまでスムーズにこの手の話を書けるはずがない。
ただのすうどんかと思っていたが、実は結構「地頭」が強い男なのかもしれないと思わされた瞬間だった。
さらに、OZPAのチャンスに対する準備の良さもかなりのもので、ここも見習うべきところだと感じた。
難しくいえばセレンディピティなわけだが、偶然の幸運に対する準備が完全にできているから、突発的にやってくるラッキーをしっかり掴める。
成功への最短経路を考えるうえで、この「強欲」スレスレくらいの準備は是非見習うべきだろう。
というわけで、この本では「自発的動機付け」がキーワードになって話が展開していく。
OZPAが非常に端的に書いている一文があるので引用しよう。
ブログは「原因(記事を書く)」と「結果(アクセスが増える)」の関係性がはっきりと見て取れる稀有なメディアです。しかし、短期間でアクセスアップを目論むのが目的になってはいけません。ブログは何よりも継続が大切というメディアでもあるからです。
だからこそ、ブログを続けるためのモチベーションを保つ上での目標を。
目標を達成するための戦略を。
途中思うようにいかないときにはポジティブシンキングを。
どうせやるなら全力でやったって良いじゃない。
全力でやることはカッコいいじゃない。
だから、本書には、SEO対策のテクニックなどは何も書いてない。
外部リンクを増やす裏技的なモノも皆無だ。
自分と対話し自分を見つめ、そして自分を進化させる。
予想外にまっとうなことがたくさん書いてあって戸惑う思いもあった。
やたらとページ数が多い(P276)のも意外だった。
だが、どうやらOZPAは本気で本を書いたのだ。それはとても嬉しい誤算だったし、本気の努力の成果が、このようなまっとうな本だったことについて、僕は本気で尊敬する。
一番大事なのは中身だ
さて、この本は短期間に大きなアクセスを得るブログを作ったOZPAの成功例について、自身が述べる形で構成されている。
OZPA自身は謙虚なのか、一番大切な部分についてあまり多く触れていないので、僕が代わりに書いておこう。
OZPAが短期間にブログを大きく成功させた理由のうち、一番大切なのはブログの中身だ。
中身とは、分野・ジャンルであり、デザインであり、文章であり、そして全体の構成だ。
OZPAのブログが短期間で大きな人気を得たのは、これらがバランス良く高水準にあったからだ。
この本を読んでブログを始めようという人は、寄稿とかバイラルとか考える前に、まずはブログの中身を徹底的に磨くことを考えるべきだ。
どんなに文章が上手くても、扱っている題材がつまらなければ、アクセスは集まらない。
どんなに題材が良くても、デザインがひどくてごちゃごちゃしていたら人は読んでくれない。
どんなにデザインが良くても、内容が空っぽの記事ばかり並んでいたら、寄稿どころの騒ぎではない。
趣味の日記的に、身内だけに読んでもらうブログなら何だっていい。すぐに始めればいい。
だが、もしこの本を手に取って「自分も月25万PVを狙えるブログを」と思うなら、まずは人が読みたいと思うエントリーを書く努力から始めるべきだろう。
まとめ
ブロガーがブログに関する本を出す。しかもアクセス数についての本と聞き、最初はあまり良い気がしなかった。
舞台裏の開陳みたいな本は場を荒らすだけだし、後に残るのもがない。そんな本だったらどうしようと心配していた。
だが、不安は良い意味で裏切られた。
この本は中身と著者の顔が地味すぎるので、タイトルを扇情的にしたのだ。とてもまっとうな本だし、努力すればある程度応用可能なノウハウとしてしっかり分析されている。
そして何よりも、OZPAの文章が上手いのに驚いた。
半年で25万PVは確かにすごいことだ。
そしてそこにはラッキーな要素が多々含まれている。
だが、本人はそのラッキーをたぐり寄せるための準備をして、タイミングを狙っているのだ。
恐ろしく自己啓発的であり、そして自己実現的だ。
彼の成功を真似するためには、彼の生き方を真似する必要があるかもしれない。
さて、普段は書かないのだが、最後にちょっとだけ感想を。
書評エントリーを柱の一つとして運営しているブロガーとしては、提灯記事のようなレビューを書くことにはまったく意味がないと思い、正直ベースで書かせてもらった。
だから、賞賛の言葉はない。ごめんねOZPA。でもとてもいい本に仕上がったね。おめでとう。
どうでもいいけど、全ページにある脚注欄、いらないんじゃないかと思うんだけど、どう?w
あっという間に月25万PVをかせぐ人気ブログのつくり方
OZPA 秀和システム 2011-09
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。