ほんの少し前まで、自分の仕事のステップを設計することは、ビジネスマンにとって当たり前のことだった。
だが、現代は「キャリア設計」ができない時代となってしまった。
そんな時代に僕らはどう生きるべきか。
本書「キャリアショック」が、渾沌とした時代に僕らを導くガイドとなってくれる。
キャリアショック ―どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるのか?
高橋 俊介 ソフトバンククリエイティブ 2006-06-28
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キャリア崩壊の時代
平和な時代はついこの前まであった。
一流大学を出て大企業に入社し、主流の部門で出世をしてキャリアを積み上げていく。
20代後半は工場部門で現場を知り、30代で北米の海外法人に駐在、帰国後は本社で経営企画室に配属され、40で部長、というような筋書き。
これこそが「キャリア設計」だ。
だが、今やこのような「キャリア設計」はまったくできない時代になった。
本書では例として日産自動車を挙げている。
日産では、北米に駐在することがエリートコースの証と言われた時代があった。
ところが経営不振となった日産はルノーの資本を受け入れ、カルロス・ゴーン社長がやってきた。
その結果、北米の現地法人の中核メンバーは、ルノーから乗り込んできた欧米人に取って代わられた。
それまで北米現地法人で活躍していたエリート達は、行き場を失い帰国し、彼らのエリートとしてのキャリアはそこで途切れてしまった。
最近の例ではパナソニックに合併された三洋電機。
つい先日、パナソニックは三洋電機との重複事業である白物家電を、何と中国の会社に売却すると発表した。
20年前、バブルの頃には誰が、三洋電機が中国の会社に売り払われることを予測しただろう。三洋電機に入社した人達の「キャリア設計」は、完全に崩壊してしまったと、言わざるを得ない。
発想を転換せよ!
キャリア設計ができない時代。簡単に言ってしまえば、勤めている会社がいつなくなるか分からない時代。
そんな時代に僕らが生き残るために必要なことはたくさんあるが、まず必ず実行すべきは、発想の転換である。
「会社から北京駐在勤務を命じられた」、「来月から生産管理部に異動になり、群馬の工場に勤務となった」。
サラリーマン社会では、ごく当たり前のことだ。異動や転勤、部署異動は日常茶飯事のことだ。
だが、この常識を疑ってみる。何故あなたは会社からの命令により、住む場所や働く場所を勝手に変更されなければならないのか、と。
ここには、「雇用保障」を武器に会社が社員の「人生を支配する」という構図が構築されているのだ。
将来の雇用や生活を会社が保障する代わりに、あなたの人生を思うように支配させてください。
この構図がもはや成立しなくなりつつある。
たとえば会社の倒産。倒産しないまでも、ある日会社が突然外資に買われ、経営陣が外国人となる可能性もある。
従来約束されていた給与体系や人事考課がある日消滅することは、もはや当たり前のことになりつつあるのだ。
給与と生活の保障の代償として自分の人生を会社に差し出す。
この構図は、もうないのだと、ハッキリ自覚するべき時がきた。
自分のキャリアは自分で切り開け
会社による人生の支配というと言葉が悪い。
この構図は、言い換えれば、自分の代わりに会社が自分のキャリア構築を行ってくれていたことになる。
だが、今後会社はあなたのキャリア構築を手伝ってくれることはなくなるのだ。
では、そんな時代には、何をするべきなのか。
本書では、最終章を割いて、個人がするべきこと5つ、そして企業がするべきこと5つを掲げている。
僕らが気になる個人がするべきことについてのアクションは、以下の通り。
- 「自分の値段」ではなく、「自分の動機」を知る
- 動向を読み、賭けるべき流れを選ぶ
- 自分のビジョンとバリューを掲げる
- 価値あるWHATを構築するコンピタンシーの強化
- キャリアリスクを減らしキャリア機会を広げる
これら5のアクションの内容について詳細は本書を読んで理解して欲しいのだが、僕の言葉で簡単にまとめると、以下のようになる。
- 自分がやりたいことを見つける
- やりたいことがマネタイズできるポイントを探して特化する
- 特化したポイントに基づいてパーソナル・ブランディングする
- 人脈を構築し活きた情報を得て、チャンスに対する準備をする
- 自分の立ち位置を常に検証して、必要に応じて改良を加える
- 心を柔軟に保ち仕事を選びすぎない
会社という、赤の他人に自分の人生を任せてきてしまった人にとっては、眩暈がする部分もあるかもしれない。
まずは始めてみよう。そして試行錯誤しつつ、改良を加えていけばいい。
まとめ
変化が激しい時代だ。
先を明確に見通そうと思っても、曲がりくねった迷路を高速で突っ走っていては、先を見ることはできない。
だが、悲観することはない。条件は万人に共通なのだ。
見えないものを無理に見ようとしても始まらない。
見えないと嘆いても意味がない。
ただ、「前は見えないのだ」ということをしっかり認識すること。
そして、「見えないならば、どうする必要があるのか」を必死で考えること。
これを行うことから、すべてが始まるのではないだろうか。
自分のキャリアは自分で切り開き、自分の人生は自分で作る。
悪くない時代だ。僕はそう感じている。
キャリアショック ―どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるのか?
高橋 俊介 ソフトバンククリエイティブ 2006-06-28
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。