料理研究家ケンタロウの本が好きだ。
僕は自分も本を書くようになってから、著名人や芸能人だからと呼び捨てにするのはやめたのだが、ケンタロウはケンタロウ。
「さん」を付けるとおかしくなる。ブランドとして「ケンタロウ」なのだ。だから呼び捨てがいい。
最初に彼のことを知ったのは、何かのバラエティー番組にゲストで出演しているのを見かけた時。
結構ズバズバと厳しい意見を言っていて、「ちょっと骨のある面白いヤツ」っぽかった。
しばらくして本屋に立ち寄ったら、ケンタロウのレシピ本が何冊も出て並んでいて、そのうちの一冊を買って帰った。
最初に買った本は、「ケンタロウんちの食卓」という本だった。僕がまだ麻布十番に住んでいた頃のこと。もう7〜8年前のことではないだろうか。もちろんこの本は今でも持っている。
ケンタロウんちの食卓ケンタロウ 講談社 2005-04-21
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六本木ヒルズがオープンしてまだ間もない頃で、ヒルズのツタヤで買ったことを良く憶えている。
当時はケンタロウがあの小林カツ代さんの息子だということも知らなかった。
僕の父は料理好きで、両親の離婚後、父は一時期後楽園の近くで飲食店を経営しつつ自分でキッチンに立っていた時期もあったりして、男性の料理家に親近感があったのかもしれない(父はテナーサックス吹きだったのにさっさと引退したのだ)。
おっと脱線した。本筋に戻ろう。
ケンタロウの料理レシピは豪快で簡単、そして美味しい。
男っぽくて、細かいところにこだわらないのがいい。
「面取なんかしなくてもいい。でもしたければしてもいい」とか「卵焼き器なんて俺は持っていない。フライパンで十分」とか、かなり大ざっぱ。
レシピも他の人の本よりも大幅に簡略化されていて、それでも美味しくできるから楽しい。
レシピの書き方も面白い。ステーキには「男らしく焼き目をバシッと付ける」とか、「まずは八百屋で野菜を可愛く値切る」などなど。
料理レシピ本を読んでいるというより、エッセイを読んでいるみたいな気持ちにさせてくれるのだ。
僕は今はまったくテレビを観ないが、一番最後まで観ていたのが、ケンタロウと国分太一さんの「男子ごはん」だった。
ゆるくて楽しく、そして美味しい。「男子ごはん」を観て憶えたレシピをいくつも作った。
そんなケンタロウの本の中で、異色の作品がある。
「ケンタロウと秘密の料理道具箱」という本だ。
ケンタロウと秘密の料理道具箱 (集英社be文庫)ケンタロウ 集英社 2006-07-20
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この本は、ケンタロウが日常的に使っている料理道具を、そのこだわりと共に紹介している本だ。
通常レシピ本は大判で横長のサイズになるが、この本は文庫サイズ。
そして、何といっても文章が多いのも特徴。半分以上は文章で埋まっているので、彼の文章をじっくり読んでみたい人にはぴったりだ。
生まれて初めて買った包丁の話、炊飯器、冷蔵庫、フライパンへのこだわりなど、道具を紹介しているというよりは、ケンタロウの生い立ちから幼少時代、若い頃の話などが盛り沢山で、まさに自伝的エッセイとして仕上がっているのだ。
料理道具から脱線して、カメラの話やギターの話なんかもでてくるのだが、これがまた面白い。
彼のマニアックさ、繊細さ、豪快さのバランスが、文章からすごく良く出ているのだ。
この本を最初に読んだのは、もう3〜4年前のことで、影響を受けて、ケンタロウが紹介している(そして「男子ごはん」でも実際使っていた)ペッパーミルを購入したりした。
そんなこんなでケンタロウ本はたくさん買った。
本は書斎の本棚に並べているが、料理レシピ本だけはキッチンの戸棚に並べてある。
もちろん他の人のレシピ本もあるのだが、ケンタロウの本が一番多い。
写真を撮ったら、こんなに持っていた。
ケンタロウは今年の2月にバイク運転中に事故を起こして高速道路から落下してしまった。
奇跡的に一命をとりとめたものの、その後の回復についてはほとんど伝わってこず、心配しているうちに「男子ごはん降板」というニュースが流れた。
そして秋になり、再起は絶望的という一報を読んだ。
この記事を読んで以来、悲しくて、ケンタロウのレシピ本を開くことができなくなった。
僕の3歳年下だから、今年で40歳。悪ガキっぽさとカッコ良さを併せ持つ、ケンタロウの元気な姿を本の中で見るのが忍びなくなってしまったのだ。
僕自身料理を作るのが大好きなだけに、キッチンに立てないでいる今のケンタロウを思うと悲しかったし、彼の無念を思うと料理を作る気持ちが萎えてしまうのだ。
だからしばらくケンタロウの本は全然開かなかったし、見たいとも思わなかった。
でも、最近になって、そうじゃないよな、と思うようになった。
彼はプロで僕はただの料理好きだけれど、彼も僕も「料理は楽しい」「美味しいは素晴らしい」ということを伝えたいという想いは共通だったんだと、再認識するようになった。
僕は彼とはまったく面識がないし、僕の勝手な思い込みかもしれないけれど、僕はブログを通じて、料理の楽しさ、素晴らしさを伝えるミッションがある。そう感じるようになってきたのだ。
ケンタロウを通じて料理の楽しさ、素晴らしさを体感した僕が、楽しく簡単な料理を伝えていくことは、彼がいまできずにいることを引き継ぐことになるのかもしれない。
そして、僕はまたケンタロウの本を手に取ることができるようになった。
何種類か彼のレシピを作ってみて思った。
やっぱりケンタロウのレシピは簡単で美味しい。彼の本のページをめくるのは楽しい。
先週新たにケンタロウの本を3冊買った。
その中には、あの「男子ごはん」の本も入っている。
太一×ケンタロウ 男子ごはんの本
ケンタロウ,国分 太一 M.Co.(角川グループパブリッシング) 2009-04-20
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僕がまだテレビを観ていた頃のレシピもたくさん入っていて、番組のことを思い出しながら読んだ。
ケンタロウ頑張れ。
是非もう一度元気になって、くだらないダジャレを言いつつ、雑で豪快だけど、決め所は繊細な、楽しい料理を作って欲しい。
待ってるぜ。
ケンタロウと秘密の料理道具箱 (集英社be文庫)ケンタロウ 集英社 2006-07-20
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やっぱり肉が好き小林 ケンタロウ 文化出版局 2011-09-02
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ケンタロウの和食 ムズカシイことぬき! (講談社のお料理BOOK)ケンタロウ 講談社 2000-03-15
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。