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ブログ運営にも応用できる! 書評:キャズム by ジェフリー・ムーア

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「キャズム」という言葉を聞いたことがある方は、意外と多いのではないだろうか。

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ハイテク業界に勤めていたり僕と同じように新しいモノ好きの人には「キャズム」という言葉はある程度浸透しているのではないだろうか。

「キャズム越え」という使い方をする。

「キャズム」とはもともとは地面や岩などの「割れ目」や「深い谷」を意味する英語だ。

そしてこの単語をハイテク産業におけるマーケティング用語として定着させたのが、本書「キャズム」である。

 

キャズムジェフリー・ムーア 翔泳社 2002-01-23
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実はこの本が当初アメリカで発行されたのは1991年。今から20年以上前のことだ。

その後時代の変遷に合わせて改訂版が1999年にアメリカで出版され、日本語訳が出たのは2002年のこと。

改訂版出版から13年、日本語訳から10年が経過しているが、この移り変わりの激しいハイテク業界において、この本の内容をまったく古く感じないのは驚きである。

それだけこの「キャズム」で説いている法則が絶対的なものということで、読んでいて何度も頷くことになった。

そしてもう一つ感じたのが、この「キャズム」で述べられている法則性は、ブログを運営していく人々に取っても、大きな指針として応用可能ということだ。

新型書評第2弾として、この「キャズム」を採り上げようと思う。

 

 

 

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「キャズム」とは何か?

そもそも「キャズム」とは何なのかをもう一度おさらいしよう。

著者ジェフリー・ムーア氏は、ハイテク製品の購買層を5つのステージに分類している。

 

 

とにかく新製品が出たら即買いし、テクノロジーの進化を堪能する「イノベーター」。その新製品が素晴らしいモノであっても、イマイチなものであっても、技術の進歩自体に興味があるため、最新の機器を自分が手にすることに主目的があるのが特徴だ。

イノベーターに続くのが「アーリーアドプター」。アーリーアドプターはイノベーター同様に新製品には飛びつく傾向が強いが、イノベーターと異なるのは新たなテクノロジーの「利点」「メリット」を追求する点だ。

そしてその次が「アーリー・マジョリティー」だ。彼らは新製品に対する興味は持っているが、多くの新製品が一時的な盛り上がりで消えていくことを理解しており、他者の動向を注視し、実利的側面を考慮してから購入に動く。

レイト・マジョリティー」は、多くの点でアーリー・マジョリティーと共通する思考をするが、決定的に違うのは、アーリー・マジョリティーは新しいハイテク製品を使いこなすことに抵抗がないのに対し、レイト・マジョリティーは新製品を使うことに抵抗を感じる点である。

そのためレイト・マジョリティーは、業界標準が確立され、手厚いサポートが受けられるようになったことを確認してから新製品の購入を決意する。

そして最後に位置するのが「ラガード」。これらの人々は新製品にまったく興味を持たず、見向きもしない。彼らが新製品を購入するのは、ハイテク製品が目に見えないように他製品に組み込まれた場合のみである。

 

 

それぞれの購買層ごとに人数も変化する。イノベーターからアーリーアドプターへ、そしてアーリー・マジョリティーへと人数は加速度的に増え、アーリー・マジョリティーとレイト・マジョリティーの境界線で人数は最大になる。

そして今度は徐々に人数は減り、ラガードで最小に戻る。

 

 

各購買層ステージの間にはそれぞれ特性の違いから生まれるマーケティング戦略のギャップが存在するのだが、決定的に異なる特性を示すのが「アーリー・アドプター」と「アーリー・マジョリティー」の間の溝だ。

これが「キャズム」と呼ばれる。

イノベーターとアーリー・アドプターに圧倒的に支持された新製品が、何故か、より人数が多いアーリー・マジョリティー層の指示を得られず、マーケットシェアを伸ばせず失速し、市場から消える例が後を断たない。

キャズムを越えること。それがハイテク製品のマーケティングにおける至上命題なのだ。

 

 

 

「キャズム」は何故発生するのか

説明したとおり、「キャズム」はアーリー・アドプターとアーリー・マジョリティーの間に横たわる深い深い溝だ。

では何故キャズムが発生するのか。

それはこの2つの購買層の思考の違いによるものなのだ。

 

 

イノベーターに続くアーリー・アドプターは、自分達の利益になることを重視して、その点がクリアできれば新製品をどんどん購入していく。

「キャズム」ではエンタープライズ市場を例にしているが、ここでは分かりやすくiPhoneを例にしよう。

イノベーターは、とにかくiPhoneなら新型は絶対買うと決めている人(僕もそうだ)。

そしてアーリー・アドプターは、「LTEが使える」「テザリングできる」「速い」「カメラが高機能」など、自分にとって「買うことによるメリット」が大きいと考えれば、率先して購入を決意する人たちだ。

 

 

ところがここから後ろが問題になる。

アーリー・マジョリティーの人たちは、アーリー・アドプターと同じくLTEやテザリングなどのメリットを感じつつも、「2年縛りが終わってない」「iOS6のマップを使いたくない」「今使ってるケースが使えなくなる」「ケーブルの互換性がない」などの「実利的」部分を重視する。

たとえば、個人でiPhoneを購入する場合は自分だけの判断でできるが、企業で営業担当にiPhoneを持たせている場合の、購買マネージャーと考えると分かりやすいだろうか。

どんなに営業担当が「テザリングが使えたらいいのに」と思っても、マネージャーが「まだ担当者全員分の2年縛りが残ってるからNG」と首を横に振れば、導入はできないのである。

 

 

ハイテク産業に置いては、この「実利的」で力を持っている人の首を縦に振らせることができるかどうか、ここにマーケットを制覇できるかどうかの決定的な溝がある。

どんなに旦那がiPhone 5にしたくても、大蔵省である奥さんを説得できなければ買い替えられない、ということだ。

 

 

 

キャズムを越えろ!

では、キャズムを越えるために企業はどのような戦略を立てるのが良いのだろうか。

それは、どんなに小さくてもいいから、ニッチ市場で1番になることを目指すべき、と著者は説いている。

実利主義者は、新しいハイテク技術を手に入れる代償として、自分に新たな金銭的・実務的負荷がのし掛かることを警戒している。

製品と付属品の互換性、バージョン違いのソフトウェアによる問題、貧弱なサポートによる社内担当者の疲弊などを避けたいと考えるのだ。

その時、実利主義者はどんな行動を取るか。それは、その製品分野におけるマーケットリーダーから購入しようという選択を取るのだ。

「○○で1位!」という看板が必要なのだ。業界ナンバー1の会社なら、サポートも手厚く製品の互換性もしっかりしており、価格も妥当。実利主義者はそのように考える。

だからこそ、キャズムを越えたいと願う人々は、どんなに小さくてもいいから、一つのニッチマーケットでトップを取ることに注力すべきなのだ。

その際に大事なのは、売上や利益を伸ばすことをある程度度外視してでも、ニッチマーケットの実利主義者顧客に対して、サポート面や互換性、それに付属品などのケアを徹底的に行い、「この製品はすごい!」「ここのサービスが1番!」と言わせてしまうことだ。

一つのニッチ市場を制圧したら、次のニッチ市場へと向かう。その時には最初の市場で蓄積したメリットや人間関係が活かせる市場であることが大切だ。

立ち上がりから全方位で攻めることは討ち死にしにいくようなものだ。

一つ一つのニッチ市場を制圧していくことで、キャズムを越えることができるのだ。

 

 

 

ブロガーへの応用とは

この「キャズム」理論は、ブログの運営にも応用できると感じた。

どういうことか。

僕自身もiPhoneやMacなどのガジェット系、書評、ランニング、料理など複数のジャンルを扱っているが、これらは同時に立ち上がったわけではない。

最初に火が点いたのはiPhoneとMacネタだ。ブログ開設当初はこのネタに注力し、アクセスも圧倒的にガジェット系が多かった。

iPhone・Mac系で一定のアクセスを得るようになってから、次に取り組んだのが書評の強化だ。

もちろんガジェット系も引き続き書いているが、強化分野としては書評に取り組み、結果としてはガジェット系と同等のアクセスを得るようになった。

そして最近アクセスが大きく伸びているのが料理レシピだ。

レシピの中で特に人気なのがパスタのレシピということが判明しているので、パスタのレシピに注力している。

 

 

このように、もしあなたが複数分野を一つのブログで扱う「総合ブログ」を構築してアクセスを伸ばしていきたいなら、同時に全部の分野のエントリーに力を分散させるのは得策ではないだろう。

一つの分野を抑えたら次、また一つを抑えたら次、という展開が望ましい。

あと、同じ「ガジェット」と言っても、「iPhone」と「Mac」では読者数が違うし、iPhoneを扱うにしても、ターゲットを「非常にマニアックな専門知識を持つイノベーター」に置くのか、それとも「1番読者数が多いアーリー・マジョリティー」に置くかでアクセス数も大きく変化するだろう。

一つのジャンルの中でも、このようにセグメント分けをしていくと、ブログの成長に向けた活路を見出せるのではないだろうか。

 

 

 

まとめ

「キャズム」という言葉は以前から知っていたし、その内容と仕組みについても漠然とは理解しているつもりだった。

だが、今回この本をきちんと通読することで、しっかりと内容が把握できたし、発生のメカニズムとその突破策についても理解できた。

この「キャズム理論」は多岐に応用可能と思われるので、今後も自分なりに勉強していきたい。

しかし20年経ってもまったく古びない理論というのは凄いと改めて実感。

今後自分がさまざまな活動をしていくうえで、この「キャズム」の存在は常に意識したい。

それくらい大切な理論だ。

分厚い本だが非常に濃くて深い本。

興味がある人は是非手に取ってみてください。おすすめです。

 

 

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