書評

パーソナルプロジェクトマネジメント by 冨永章 — 自分自身のプロマネになるべし! [書評]

書評
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「プロジェクト」という言葉は一般的だが、あくまでも仕事上の言葉、という印象がある。

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そもそもプロジェクトとは何なのか。

それは、「特定の期限と目標がある1回限りの仕事」ということになる。

毎日定時になると行われる会議や日常的な顧客訪問などはプロジェクトとは呼ばない。

新規事業の立ち上げやIPO、それに他社との合弁、新製品開発など、一回きりの仕事をプロジェクトと呼ぶ。

 

 

このプロジェクトの考え方を、個人の活動に応用しようという本を見つけた。

タイトルはそのまま「パーソナルプロジェクトマネジメント」だ。

なかなか興味深い本だったので、さっそく手に取ってみた。紹介しよう。

 

パーソナルプロジェクトマネジメント

冨永 章,パーソナルPM研究会 日経BP社 2011-03-21
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PPMは「第二領域」と趣味に活用すべし!

パーソナルプロジェクトマネジメント(以下PPM)はとても興味深いアプローチだ。

僕らは多かれ少なかれ、ルーチンのタスクを抱えて生きている。

会社の仕事もそうだし、家族としてのタスクもある。

そしてそれぞれのタスクには優先順位があり、期限もある。

やらないと社会人としての責任をまっとうできないものも多い。

 

 

しかし、日々の多忙さにかまけていると、僕らは人生において大切な「学び」や「長期的ビジョン」、それに「教養」「趣味」といった分野に対する自己投資を怠ってしまう。

これらの「緊急ではないが」「重要なこと」は、スティーブン・R・コヴィー氏の名著「7つの習慣」では「第二領域」と定義されている。

この緊急ではないが重要なことこそが、中・長期的に見た時に僕たちの成長に一番大切な時間であり、その時間をいかに作り出し、コツコツと続けていくかが、5年先の自分のいる場所を大きく変えてくれるのだ。

 

 

この本は、日本IBMでプロジェクトマネジメントのプロとして働き続け、プロジェクトマネジメント学会の設立にも関わり学会長も勤めた冨永章さんを中心に、パーソナルPM研究会の方々がまとめた「個人向けプロジェクトマネジメント」の本だ。

「ダイエット」「引っ越し」「禁煙」「資格取得」など、個人のチャレンジを「プロジェクト化」することで、いかに効率良く、しかも効果的に進め、最大の結果を出すか、にフォーカスしている。

 

7つの習慣―成功には原則があった!

スティーブン・R. コヴィー キングベアー出版 1996-12
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ゴールに向かいコツコツ続け、振り返り軌道修正しよう

プロジェクトには期限が必要だ。

「引っ越し」や「資格試験合格」などの場合は、必然的に期限が決まるものも多いだろう。

また「ダイエット」や「趣味のバンドでライブ開催」などの自発的取り組みの場合は、自ら期限を設定する必要もあるだろう。

いずれにしても、最終的なプロジェクトのゴールが何なのかと、その期限を設定することがスタートとなる。

あとは、途中経過を確認する「マイルストーン」を設定し、進捗を確認し軌道修正していく。

プロジェクトが上手く進まなくなる可能性を考慮して、リスクを想定し、リスク回避のための手段も講じておく。

 

 

多くの人は、日々こなすべき仕事やタスクをたくさん抱えているだろう。

その多忙な中でも、1日30分といった時間を捻出して、コツコツと続けていくのだ。

ゴールがあるからコツコツ続けられる。マイルストーンがあるから自分を見失わない。

軌道修正するから、完遂できる。

プロジェクトマネジメント活動は、まさに個人の長期的な取り組みにピッタリなのだ。

 

 

 

タスク管理本を補完する位置づけだが問題もあり

タスク管理について書かれた本やブログを多く見る。

タスク管理の中には、日々のルーチンワークもたくさん入っていることが多い。

だが、タスク管理で重要なのは、ルーチンとプロジェクトのタスクをいかに両立して捌いていくかということで、その点に深く言及している本はあまりない。

そういう意味では、この「パーソナルプロジェクトマネジメント」はタスク管理本を補完する良いテキストだ。

 

 

ただ、この本を無条件で「オススメ!」とは言いにくい部分もある。

一言で言うと、若干専門的なのだ。

著者の冨永さんもパーソナルPM研究会の皆さんも、仕事でプロジェクトマネジメントをずっと実践してきている、プロの中のプロの方達だ。

そのためか、初心者向けに噛み砕いているようでも、詳細の説明と定義なしに「モダンPM」「WBS」「コンティンジェンシー計画」などのキーワードが使われる。

仕事でプロジェクトマネジメントに係わったことがある読者ならもちろん問題ないのだが、専門用語に触れたことがない人には、ややとっつきにくい部分があるだろう。

あと、OmniFocusやToodledo、エクセルやマイクロソフト・プロジェクトといった、具体的なITツールの使いこなしの部分にはまったく触れていない点も少々不親切に感じる。

ガントチャートやWBSを使った管理例は出てくるのだが、では僕ら一般の個人がどうやってガンとチャートを作るのか、WPSを簡単に作成できるアプリは何なのか、などには触れられていない。

この辺りに若干のハードルの高さを感じるので、初心者の人は他のITツール系のノウハウ本と併せて読むと効果的だと感じた。

 

クラウド時代のタスク管理の技術―驚くほど仕事が片付いてしまう!

佐々木 正悟 東洋経済新報社 2011-11-25
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まとめ

人間1日で達成できることは少ない。どんなに頑張っても、1日は24時間以上にはならない。

だが、1日たった30分でも、365日続ければ、182時間30分、丸々一週間分以上の時間(7日と14時間30分)にもなる。

だからこそ、日々ちょっとずつのコツコツ継続が大切なのだ。

しかし、僕らは遠い将来の自分を予測して進むことがとても苦手だ。

だからこそ、遠い期限を先に設定し、到達目標とそのためにすることを決め、途中で経過を振り返るプロジェクトマネジメントは目標達成に非常に有効だ。

この本には上述したとおり、若干ハードルが高い部分があるが、それを補うように豊富な実例が紹介されていて、楽しく読むことができる。

実際にメンバーが禁煙したり、突然の転勤に備えて引っ越しプロジェクトを作ったり、自炊にチャレンジしたりして成功していく様子は、僕らに勇気を与えてくれる。

何か自分なりの改善を目指したい方は、読んでみると良いだろう。

 

パーソナルプロジェクトマネジメント

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