書評

正しく頑張ろう! 書評「残念な努力」 by 美崎栄一郎

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残念な本である。

あ、いや、言葉が足りていない。残念な本なのではない。「残念」について語った本である。美崎栄一郎氏の「残念な努力」である。著者ご本人様より献本いただいた。誠にありがとうございました。

 

残念な努力

美崎 栄一郎 青志社 2011-01-20
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by ヨメレバ

 

しかもサイン入り。

 

 

 

世の中の多くの自己啓発書は「努力せよ」と僕らに命じる。

努力すれば成功する。成功すれば幸せになる、と。

だが、努力は正しく行わなければならない。

間違った方向に向かって必死に努力しても結果は出ない。

結果が出ないばかりか、害にさえなってしまうこともある。それが「残念な努力」なのだ。

本書では、世の中のあちこちにある「残念な努力」を列挙することで、それらの残念っぷりを反面教師と捉え、残念ではない状態を目指そうと試みている。

「ノート」、「サービス」、「時間」、「企画」、「人間関係」という5つの柱から、現代日本に蔓延している「残念」を列挙・分析していくのだ。

身近な小さな「残念」から歴史上の有名な「残念」までを網羅している。まさに「残念の百科事典」である。

 

 

 

本書に共通しているのは、「残念」な状態を生み出すのは人間だということ。

さらに言えば、残念な状態を作っている人間に足りないのは、ちょっとした気配りや心配り、それに戦略的な思考といった、心の機微であることが多い。

たとえば、「『先にお金を払う』と言っても『後にしてくれ』と断る努力」という項がある。

出張の多いビジネスマンなら経験したことがなると思うが、これはビジネスホテルのチェックアウトの話である。僕自身も経験したことがある。

チェックアウトの時間帯はフロントが混雑するので、チェックイン時に精算を済ませてしまいたいと思うことは良くあるし、そのような対応にしてくれているホテルもある。

だが、このチェックイン時の精算を絶対に嫌がるホテルが存在するのも事実。

利用前に先払いするという客を断るというのはビジネスの基本から逸脱する考え方だが、実際にあるのだ。

この例を読んでいて似たような事例を思い出した。レストランで帰ろうと先を立っているのに「テーブルチェックですから」と押し戻す店も残念だ。

高級店ならまだしも、日常的に使う普通のお店であれば、テーブルチェックを求める客に対してはそのレベルでサービスを提供すれば良いが、さっさと帰りたい客をテーブルに押し戻してまでテーブルチェックに拘る必要はないだろう。

 

 

 

このように、世の中には残念な努力が溢れるほどあるのだということが本書を読むと分かる。

ただ、美崎氏は関西人でしかも気を遣う人のようで、大上段に構えて説教する、という構図にならないように、かなりあちこちに工夫がされていて微笑ましい。

たとえば「残念な大人」の代表を自分にする。たとえば必要以上に本文中にダジャレを投入する。そしてたとえば必要以上に挿入したダジャレで意図的に滑る、など。

リズムが良く軽快な文章なうえに、読者を気遣いコミカルな演出をしてくれるので、「残念」というネガティブ・キーワードが主題になっているにも関わらず、誰かを攻撃した時のような後味の悪さが残らないのが凄い。

どうせ努力するなら正しい形で。残念な努力にならないよう、くれぐれも気をつけよう。

 

 

2011年47冊目の書評としてお届けしました。

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