2001年11月12日(月) 2日目 晴れ
午前6時30分起床。夜中に冷房を切って、天井のファンだけにしたのだが、部屋の中はまだ涼しい。広い広いベッドから飛び起き、木製のブラインドを一ヶ所だけ開けてみると、部屋の前には真っ青な海が広がっている。「南の島のパラダイス」を絵に描いたような景色。景色を見ながら、日本から持ってきたノートに、昨日の出来事を簡単にメモする。そのうち一人ではもったいなくなって、ニナを起こす。バルコニーに出ると、道が濡れていて、夜の間に雨が降ったことが分かる。外は暑くて湿気もすごい。下の写真は、朝起きてすぐに部屋のバルコニーから撮ったもの。
朝食は、ルームサービスを取ることにする。二人とも、American Breakfast。ホテルの食事は、どうせすぐ飽きてしまうと分かっていても、しばらくぶりに旅をすると、一度はアメリカンを食べたくなるものだ。ルームサービスにしない場合は、Resortの中の「Coconut Terrace Restaurant」でバイキングとなる。ちなみにアメリカンが一人前16.5ドル。僕が選んだのはスクランブル・エッグ、ソーセージ、グレープフルーツジュース(これはカットしたフルーツも選べる)、コーヒー、クロワッサン。クロワッサンはちょっと不思議な味がした。ニナは、バターの違いのせいだろう、と言っていたが、日本で食べるクロワッサンとは、風味が違う。
クロワッサンが3個の他に、トーストがたっぷりついてくる。あと、小さな容器に入ったサルサがついてきて、これがすごく辛いのだが、美味い。コーヒーもポットにたっぷり。軽くカップ3杯分はある。
すっかり満腹し、しばらくボーッとしながら今日の予定を決める。今日はリゾートの中でたっぷり遊ぶことにして、さっそく水着を着込み、その上からTシャツを着込み、Resortのプライベートビーチにぶらぶらと歩いていく。途中、Resortの従業員達や、欧米人達とすれ違い、その度に「Good Morning!」と挨拶しているうちに、本当に遠いところにやってきたんだ、とい実感が湧いてきた。
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Palau Pacific Resoft(以下PPR)のビーチは、完全なプライベートビーチである。宿泊客以外は入ることができないのだが、これがまた、絵に描いたように美しい。
真っ白で木目が細かい砂、一瞬毎にどんどん変化する海の色、ゴミ一つ落ちてなくて、きちんと整備されている。砂浜には、適当な感覚をおいて、ビーチベッドとパラソルが並ぶ。隣同士のプライバシーがきちんと保たれる距離感だ。ビーチの隅の方には、ビーチバレー用のネットや子供が遊ぶすべり台とぶらんこもある。
ビーチには、我々の他に2、3組の旅行者がいるだけ。実にぜいたくである。ビーチを歩いて一番奥の突堤まで行く。突堤の先にテーブルとベンチがあり、しばらくそこで景色を眺める。太陽は真上から照りつけてくる。じりじりと体が音を立てる。Tシャツがあっという間に汗まみれになる。北緯7度の威力を知る。
しばらく洋服を着たまま、木陰のビーチベッドに寝ころんで、日本から持ってきたヘンリー・ミラーの「北回帰線」などを読んでいたのだが、洋服を着たままビーチにいるのがバカバカしくなってきて、我々も水着になることに。バスタオルはビーチ横のプールハットで無料で貸してくれる。これもプライベート・ビーチならではのサービスだと思う。そうそう、水着になる前に、プールサイドかつビーチサイドのバーで飲み物を頼もうとしたら、開店前(開店は午前11時)だというので、ほぼ無理やりココナッツ・ジュースを買わされた(というか、まだ支度ができてないから、他のものはない、と言われた)。ココナッツの実のてっぺんに穴を開け、ストローを差しただけの、あのココナッツジュースである。なかなか濃厚な味がして悪くないのだが、いかんせん真昼にビーチで飲むには、ちょいと濃厚すぎるかも。
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水着になって木陰に寝転んで本を読み、暑くなると水に入る。水はびっくりするぐらい透明で、かなり遠浅である。波はほとんどない。上から見下ろしていても、水の中に魚がいるのが見える。ゴーグルとシュノーケルが欲しい。ということで、プールハットに行って、ゴーグルとシュノーケルを二人して借りてくる。我々のパックには、PPR内でのアクティビティ・パスというのが付いていたので、ゴーグルもシュノーケルも無料。一般の旅行者は、一度借りると$5かかる(当日のみ有効)。
で、ゴーグルとシュノーケルをつけ、勢い良く水に入る。で、これがまたびっくり。水面から見えていた魚の、100倍以上の、色とりどりの熱帯の魚達がいるわいるわ。水深が僕の膝ぐらいまでしかないところでも、つかみ捕りができそうなほど。デジカメにマリンパックをつけ、必死に魚を撮ろうと追いかけるのだが、まだ慣れていないのでほとんどきちんと写らなかった。我々は泳ぎがそれほど達者でないので、少なくとも僕の足が立つ範囲で、魚を追いかけ回して延々と遊ぶ。しばらく遊んで疲れたら陸に上がり、木陰のベッドに横になって本を読んだりうとうとしたり。しばらくしてまた暑くなってきたらゴーグルをつけて水に入る。極楽極楽。
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いい加減疲れてきたし、午後の日光が一番キツイ時間にもなってきたので、水着にTシャツを着込み、ビーチのすぐ奥の、「Coconut Terrace Restaurant」で昼食。左の写真が、僕たちが座った席からの眺め。昼時を少し過ぎていたせいか、客は我々の他には一組しかいない。欧米人(おそらくアメリカ人)の老夫婦。
僕はBLTサンドイッチ、ニナはローストビーフ・サンドイッチに、二人ともビール。アサヒのスーパードライ。普段はスーパードライは好きじゃないのだが、こういう状況だと、何でもうまく感じるものです。
運ばれてきたBLTサンドもローストビーフ・サンドも、やたらにデカイ。運んできたウェイトレスも、「Very Big!」と笑いながら持ってきた。サンドイッチの量はまだしも、一緒に付いてくるフレンチフライの量が半端じゃない。僕は何とか平らげたが、ニナは半分ぐらいでギブアップ。ウェイトレスのおばちゃんが、「ラップしてあげようか(英語)」と言ってくれたので、ありがたくお言葉に甘えてラップしてもらう。
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ぶらぶら歩いて部屋に戻る。ルームメーキングが終わっていて、冷房が心地よい。ベッドには、昨夜はかかっていなかった、派手なベッドカバーがかかっている。これも演出なのだろうか。
順番にシャワーを浴び、しばらくのんびりする。日本から持ってきたガイドブックを読んだり、Resortのパンフレットを見たり。部屋には大きなテレビがあったのだが、これがなかなか威嚇的で嫌な感じ。番組表を見ると、何とNHKの衛星放送が入るのだが、何もパラオまで来てNHKなんか見なくたっていい。良く見ると、テレビは壁に作り付けの棚に収まっているのだが、観音開きの扉が棚についていて、それを閉めるとテレビの存在を忘れることができることに気づいた。さっそく扉を閉め、テレビ様にはご退場頂く。部屋からテレビがなくなったら、何だかぐっと雰囲気が(さらに)良くなった。
夕暮れ時、部屋の電話が鳴る。僕は今回長期休暇を取るにあたって(たかが一週間だけど)、社員全員に、このResortの電話番号を残してきた。長い長い引き継ぎメモは作ったのだが、現状では、僕しかしていない仕事というのが、会社には多すぎて、どうしても引き継ぐことができない部分がある。なので、電話が鳴った時は、さっそく会社からSOSだろう、と思い、諦めて受話器を取った。しかし電話は会社からではなく、PPRのツアーカウンターからで、昨夜我々を空港からPPRまで送ってくれたs君であった。こっちが「Hello」って電話に出てるのに、「もしもしー」と、非常に営業慣れした猫なで声を出すのは是非ともやめて頂きたい。仕事を思い出すから(笑)。
で、s君の用件は、明日何かオプショナル・ツアーを申し込まないか、という勧誘である。なかなか仕事熱心で結構だが、明日は我々はダウンタウンに出かけることにしていたので、お断りする。
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パラオには、公共の交通機関というのがほとんどない。路線バスもないし、鉄道もない。あるのはタクシーと、観光客向けに最近夜間だけ設定された、シャトルバスぐらいのものである。PPRは、アラカベサン島という島にあり、ダウンタウンはコロール島という島にある。歩いてはとても行けない距離であり、観光客がダウンタウンに出かける場合、日中はタクシー、夕方から夜にかけては、シャトルバスかタクシーということになる。タクシーの場合、ダウンタウンまでは$5程度。タクシーにはメーターとかは何もないので、乗る時に運転手に値段を確認してから乗る。
一方、シャトルバスは、有料のBBIバスと、無料のNECOバスがある。BBIバスは、コロール島にある飲食店やショッピングモールなどをかなり細かく丁寧になぞり、コロール島を挟んでPPRと反対側に位置する、ホテル日航までを結んでいる。パスは$5で、一度買うと一週間有効で乗り放題。バスは1時間に1本走っている。NECOバスは無料なのだが、BBIバスほどたくさんの場所に止まらないし、本数も少ない。そもそも無料でバスを走らせる理由は、NECOグループという、パラオきっての財閥グループが運営する博物館やお店に、ホテル滞在の客をピストン輸送しよう、というものなので、止まるのはNECOグループに関連したところばかり。
朝食も昼食もResortの中で食べたので、夕食はダウンタウンへ繰り出そう、ということになり、有料のBBIバスのチケットを買う。二人で$10。バスと言っても、ボロボロのワゴン車である。良く見ると、昨夜空港からPPRまで我々が乗ったワゴン車である。フロントガラスが割れていたのですぐに分かった。
6時発のバスに乗り、コロールを目指す。乗り込んだのは我々だけ。すでに日が暮れている。運転手のパラワン(パラオ人のこと)はよく喋る(英語)。だんだん分かってきたことなのだが、パラオは公用語が英語とパラオ語なのだが、英語のレベルは決して高くない。単語の羅列で済ませてしまう人も多い。パラオ語も、英語と日本語と現地語のちゃんぽんみたいな言語で、「ダイトウリョー(大統領のこと)」、「スコウジョウ(飛行場のこと、なまったらしい)」、「アジ・ダイジョウブ(美味しい)」など、日本語がほとんどそのままパラオ語になっている例も多い。
30分ほどバスに揺られ、「どらごん亭」に到着。日本人経営の居酒屋である。ガイドブックやWebの情報でも、この店は非常に推薦されていたので、まずはここに行ってみよう、ということになったのである。
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地元産のビール、「Red Roosters」を試してみる。非常に宜しい。パインのような、フルーティな香りのするビールである。こいつを二杯ずつ頂く。熱帯のお刺し身を頂く。三種盛り。これも大変宜しい。マスターのtさんが登場し、唐辛子醤油で刺し身を食ってみろとアドバイス。さっそく頂く。なるほど。
他に、カンクンのソテー、じゃがまんなるオリジナル料理を頂く。マスターが与那国島出身で、メニューに泡盛があったので、南国つながり(ほぼでたらめだが)ということで、泡盛を二人でロックで頂く。そろそろ酔っぱらったというころに、マスターが再び登場。今日はそれほど他にお客もいなかったので、そこからマスターとの長い長い話になる。
なかでも面白かったのが、ストーン・マネーの話。パラオの近くにあるヤップ島では、今でもストーン・マネーが流通している。「はじめ人間ギャートルズ」に出てくるような、石のお金である。このストーン・マネーには、すべて歴代の所有者の系譜がついていて、石を切り出す時にどのような苦労があり、何人の人間が犠牲になったか、とか、どのような高位の人物が持っていた、だとか、そういうことが事細かに記録されている。ストーン・マネー本体は同じ位置にごろりと転がっていても、所有者が移動すると、それがまた記録される。つまり、動かすことのできる不動産みたいな使われ方をしているのである。
中には、船で運んでいる途中で船が沈没してしまい、海中に沈んだストーン・マネーもあるが、海中に沈んでいても、系譜がきちんと残っていれば、ストーン・マネーとしての価値は落ちない(実際海の底にあって手に取ることができなくても、存在していることに変わりはないため、価値は減じない、という理屈である。なかなか壮大で宜しい。
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我々がクイクイと泡盛を飲むので、マスターが喜んでくれて、樽詰めの特上の泡盛を、安く飲ませてくれる。確かにのど越しが全然違う。泡盛のアルコール度数は、約43度。ウィスキーと同じぐらい。与那国には、60度の泡盛もあるが、ロックやストレートで飲む人はいない、とのこと。なるほど。
地元の保存食、「ワス」もサービスで食べさせてもらった。「ワス」とは、ナポレオン(フィッシュ)の魚汁をどんどん煮詰めたもの。野菜につけて頂く。最初の風味は、タタミイワシの匂いに似ていて、非常に宜しい。
帰りのシャトルバスの時間を気にしながら飲んでいたら、マスターが、車でPPRまで送ってくれるという。散々サービスしてもらって、そこまでしてもらっては申し訳ないと言うのだが、マスターはどうもBBIバスのことも、タクシーのことも嫌いらしい。これについてはいろいろと面白い話を聞かせてもらった。
で、結局マスターの好意に甘えることに。ちなみに会計は$83。パラオは物価は日本とそんなに変わらない(10パーセントぐらい安いかもしれない)。どらごん亭は数少ないクレジットカードが使えるお店なので、カードで決済してもらう。マスターの車のフロントガラスも、BBIバスと同じところが、同じように割れている。車窓から夜のダウンタウンの写真を、デジカメで何枚も撮ったのだが、シャッターの下りるタイミングがまだつかめず、ほとんどまともに写っていなかった。無念。
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PPRに戻り、まだ眠くないし時間も9時なので、もう少し飲もうということになり、プールサイドのバーでカクテルを買ってからビーチへ。ビーチベッドに寝転んで空を見上げれば、満天の星である。南十字星を見つけようと躍起になったのだが、見つからなかった。後で調べたら(部屋に星図表があった)、南十字星が見えるのは、春から夏にかけて。今はシーズン・オフであった。これは残念。
1時間ほど星を眺めながらカクテルを飲み、いい酔っ払いになってぶらぶらと部屋に戻る。我々の部屋の前の通りに、椰子の木にくくりつけたハンモックが吊ってあって、それに乗っかって遊ぶ。酔っぱらったニナが無茶をして、僕はハンモックから転げ落ちてしまった。
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部屋に戻ると、再びベッドメイキングが終了していた。さっき掛けられていた派手なベッドカバーが再び取り去られ、枕の上にコイン型のチョコレートが一つずつ置かれている。ライティング・テーブルの上には、明日の夕方、Resort主催のカクテル・パーティーへの招待状が置かれていた。
ちなみに明日は、コロール州の選挙があり、午後7時まで、お酒は禁止されているはずである。でもカクテルパーティーは5時30から。Resortの中はお酒、いいのかな?ひょっとして。
さんざん遊んで、くたくたになっても、まだ時計を見ると10時15分である。眠るのがもったいな、と思いつつ、目を閉じたらあっという間に眠ってしまった。
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