あなたの温もり 思うこと 不明編
1997年4月6日(日)
Schizophrenia / Sonic Youth
銀色の霧雨が夜の街道の視界を儚げに妨げている、
街灯の周囲が銀色の霧雨に照らし出されて所在なげに明るく霞み、
車輪が巻き上げる灰色の水飛沫と融合し、
僕のカラダは羊水に包まれるように、
寒さも熱さも感じることもなく、
見えない瞳を水銀灯に向けコトバにならない嗚咽を吐き続ける。
半透明の繭に包まれた春の夜の銀色の雨の中、
アスファルトにへばりつく桜の花の満開の花びらの上を、
温もりを確かめるかのようにゆっくりと踏みならしながら、
不器用な白い指が黒髪を梳く光景を反芻し、
銀色の霧の降る街にあなたの姿を見出すように、
僕は一人銀色の霧を纏い踊る、
銀色の月から放射される銀色の霧雨を塗りこめた歩道橋の上で、
僕は銀色の霧雨と共に踊り続ける。
To Hear Knows When / My Bloody Valentine
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指を触れればその瞬間にあなたは音を立て消えていってしまうようで、
黒い髪に触れ肩を抱き寄せる手は汗ばみ微かに震え、
書痙の記憶を思い起こさせる、
唇を寄せたくなる衝動を実行に移すためのサブルーチンは備えていないようで、
寝顔に触れていられるよう、僕は部屋の中に銀色の星を降らせ、
銀色に照らし出されるあなたの寝顔に白い指を重ね、
白い夢に満たされるあなたに僕の白い指が届くよう、
そっと耳元で僕の思いを伝え続けよう、
小さな部屋が銀色の星達に埋まり、
あなたの白い夢と僕の白い指が、
白金色に融合し化合される結晶が、
銀色に輝く霧雨を乱反射し、
夜はやがて霧に包まれた朝に続く。