あなたの温もり 思うこと  不明編


1997年4月21日(月)

Space Oddity / David Bowie

静寂の心地よさを楽しみたくてボリュームを絞り込み、


街道を走る車の音をBGMにして白い壁にもたれ掛かったまま、


しばらく目をつぶっていた。


いろんな人の声が聞こえてくる、


みんなの顔が浮かび上がってくる、


白い壁にもたれ掛かったまま、


本当に久し振りに記憶の糸をたぐりよせてみた。




脇目も振らず走り続ける日々が、


あの日に断ちきられ、


僕は殻に閉じこもった。


あの日を境に僕の世界は闇に包まれ、


灯を求めてもがくほど深みに沈んでいくようだった。


閉塞感から何とか逃れようと、


必死に進んでいると思っていても、


同じところで足踏みをしているのではないかと、


常に恐れ、おののいていた。


人に見られることを恐れ愛されることを拒み、


刹那的に訪れる激情を抑えることができずに、


僕は人を傷つけ続けた。


パックリと開いた傷口を目の当たりにして、


僕は吐き気を催しうずくまりアタマを抱えたまま、


きつく眼を閉じ息を止めた。



誰も愛せない自分を否定し誰かを愛する徒労のために走り回り、


自分の愛を立証するものを自分を愛する他人の愛と断定し、


誰も自分を愛してくれないと嘆き続けた。




自らが進むべき方向を見出すことができず、


進むことの出来ない自分を責め続け、


脆弱な意志を恨めしく思った。




自分が進んでいることを確認するために、


他人を蹴落とし自分の優位さを自信に置き換えようとあがき、


崖から這い上がる血まみれの顔を直視できずに、


机に突っ伏したまま濁った涙を流すふりを続けた。




今僕は一体どこに向かっているのか。


今僕は何をしようとしているのか。


僕は進んでいるのか、それとも止まっているのか。


歩き続ける僕が辿り着くのはいったいどこなのか。


僕は成長しているのかそれとも老いているのか。


来年桜が満開の花の下、


僕は何を思い何処にいるのか。













(c) T. Tachibana. All Rights Reserved. 無断転載を禁じます。tachiba@gol.com

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