I think therefore I am

思うこと

1997年5月5日（月）

Willow Weep for Me / Billie Holiday

そば屋の老夫婦はなにやら夫婦ゲンカ中だったらしく、

カツ丼のタレがやや甘すぎるのことを考慮しても、
どう考えてもすでに離婚だの別居だのという話に発展するはずもなく、
粛々と時は流れてゆき、
オヤヂの言葉が悪いのは生まれつきなのであるからして、
こちとら江戸っ子でい、何か文句あんのか、てやんでい、
ごちそうさんでした、
喉はまだ若干ひゅーひゅー音を立てながらも、
夕暮れの風の爽やかさと閉めきった部屋の澱んだ熱気の交換を求め、
開け放した窓からは青梅街道の車の列の赤い音、
ブンブンと鳴り響きながらステレオの音を妨害する、
サボタージュだテロだ革命だ、
ノスタルジック・ゴーゴーだ、
休みが終わる夜は何事も早めに処理してしまいたいので、
明日は分別ゴミの日、
ゴミ袋の中味はビールの缶とバーボンの空きビンと、
連休の度に体調を崩してしまうのは、
日頃の行いが悪いのかそれとも体力の限界か、
腹筋を鍛えようと突然部屋で腹筋運動、
こりゃあビールの飲み過ぎですな、
夏までに逆三角形になるターザン、
そうそう、Joyceのような文章を書けるようになりたいんだった、
最近は全然意識しなくなったけど、
ジェームスジョイス、エアーヘッド、
東鳩キャラメルコーンの工場跡は、
只今マンション工事中、
できそこないのキャラメルコーンの叩き売り、
神社の境内で食べたあんず飴と仮面ライダーのお面、
ずいずいずっころばしごまみそずい、
縁の下から聞こえてくるネコの声、
抜けた乳歯は縁の下に放ってね、
餅つきの音、
廊下を雑巾掛けするばあちゃんの足音、
味の変わったカルピスは一番の御馳走、
高輪のおばちゃんちだとプラッシー、
眼鏡のおじちゃんの家のトイレの水はどうして青かったの、
青い水は怖かった、
オリンピック前はこの道路は川だったんだよ、
ふーんそうなんだー、川はどこにいったの、
道路の下を今でも流れてるんだってさ、
その川はどこから流れてくるの、
さあ、龍土町の交差点のあたりで地下に潜ってたねえ、
川が地下に潜るとどうなるの、
さあ、
水の中、
透き通った声、
水の色は透明なのに、
どうして水色って言うんだろう、
水の声、
後ろ姿に抱きつくと、
そこはもう夢の国、
今夜はばあちゃんと一緒に寝ましょうね、
ママはどこ行ったの？、
ちょっと遠いところ、
ちょっと？、
そう、ちょっと、
さびしいな、僕、
もう眠りなさい、
眠りなさい。