あなたの温もり 思うこと  不明編


1997年5月14日(水)

With or Without You / U2


「僕は人に厭がられるために生きているんです。わざわざ人の厭がるような事をいったりしたりするんです。そうでもしなければ苦しくって堪らないんです。生きていられないのです。僕の存在を人に認めさせる事が出来ないんです。僕は無能です。いくら人から軽蔑されても存分な敵討ちが出来ないんです。仕方がないから責めて人に嫌われてでも見ようと思うのです。それが僕の志願なのです。」

「明」夏目漱石


Mysteron / Portishead


窓ガラスを雨粒がつるつると流れていく。


幾筋も競いあうようにつるつると流れていく。


窓の外は灰色の闇が、


車の吹き上げる水煙に煙っている。


窓を雨粒がつるつると流れていく。


涙のように見えた。


赤い涙がつるつると流れていく。


Sour Times / Portishead


遠くで子供の泣き声が聞こえる、



引きつるような細い泣き声が聞こえる、



遠くのごみ箱に捨てられたどこかの子供が、



泣き続けている。



泣き続ける子供の耳には、



雨を巻き上げながら走り去る、



ダンプカーの轟音と、



忘れかけた母親の、



心音の微かな残音のみが、



反響し続けている。





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