僕は翻訳会社に勤めている。
翻訳というのはどうしても職人的なシゴトなので、翻訳家個人の力量に依存してしまう傾向が強く、ここ数年の大量文書の短期間処理というクライアントの要望に対して遅れをとりがちである。
また翻訳会社というのは、設備投資が殆ど必要ないため、脱サラ組やリタイヤ組が個人又は2人程度で起業するケースが非常に多く、3,000社あると言われている翻訳会社のうちの8割以上が1人または2人という超零細企業に分類されている。
大量のマニュアル等を短期間で翻訳する必要がある大企業からの受注を獲得することが、翻訳会社にとっての至上課題であり、逆に同一顧客からの大量文献を処理して利益を上げている翻訳会社は安定した経営がされていると言うことができる。
今年度僕に与えられた課題は大別して3つ。一つは受注金額を67%上げること。一つは社内外作業の標準化を推進すること。もう一つは社員の意識改革を含む翻訳作業の電子化。
受注金額アップに関しては非常に厳しい数字であることは確実なのだが、到達不可能な数字でもない。
昨年度僕の勤めているカイシャは設立11期目にして初めて経常利益を計上した。もちろんこれは大変結構なことなのだが、通期で考えれば当然ながら過去10期分の赤字が累積している訳なので、まだまだ健全な経営状態とは言えない。現在の社員数と売上高を比較してみると、まだ一人当たりの売り上げ額が大企業の平均数値と比較して33%程低い。
ということは33%受注を増大させれば健全であるということに理論的にはなるのだが、通期の累積赤字を返済しつつ設備投資を行い、さらに給与のある程度のアップを計るためには33%では足りないことになる。あれこれ数字をひっくり返していて落ち着いた数字が67%アップ。この数字が「努力目標」ではなくて「達成目標」であることはもちろんやりがいにもつながるのだが、一方で猛烈なプレッシャーがかかっているのである。
4月は前年比で受注は35%アップではあったのだが、目標が67%アップなのだからもう全然×である。今月も健闘はしているもののやはり目標達成はなかなか厳しいというところだろう。
一気に受注を増大する為には前述した通り、大量文献の翻訳、版下作成、印刷・製本、電子マニュアル作成を一括受注できるようなマニュアル翻訳の受注が不可欠なのだが、大抵需要のあるところには既に他社が入り込んでいるわけで、そいつをいかに奪い取るかという話になる。
細かい部分はちょっと書けないのだが、あれこれ試行錯誤していたところへ丁度我々の求めているようなクライアントが向こうから飛び込んできた。んだもんで今週はずっとプロポーザル作ったり業者に行ってデモを見せてもらったり先週発売になったばかりのAdobe Acrobat 3.0J買ってきてサンプルファイルを作ってみたりプレゼン原稿を作ったりCD焼いたりしてすごしていた。
まず受注させてもらって、シゴトが軌道に乗るまではしばらくバタバタするのだろう。しかしこのシゴトを軌道に乗せられればどうやら今年度の目標達成は見えてくるので、何とか気合を入れて頑張りたい。
残りの課題についても書こうと思ったんだけど、ずっとシゴトの話ばかりってのも詰まらないからこのへんで〆。
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