Drunken Butterfly / Sonic Youth


性生活というのはあまり他人にベラベラと話すようなものではないせいか、自分以外がどうしているのかを知る機会が以外と少ない。

変な話だけれども、僕はビデオや写真以外では、自分のもの以外の男性器が勃起しているのを見たことがない。通常状態のちんちんに関しては温泉だのサウナだので時々見かけることもあるのだが、臨戦体制に入っているモノというのはよっぽどのことがないとお目にかかれない。これからも恐らくあまりそういう機会はないと思うが、やはり他の男性のモノが一体どのようになっているのか、ちょっとばかり興味はある。

てことで、ちょっとこんなものを書いてみようと思う。

僕はセックスに対して一種の恐怖感のようなものを持って生活していた。常に自分の行うセックスに何らかの欠点があるのではないかと疑っていた。比較する対象がないので自分を安心させる要素は相手の態度や言葉ということになるわけだが、話題が話題なだけになかなかフランクに「どうなの?」とは尋ねられなかったりして困っていた。

ふとしたキッカケから、すぐに「自分の行為は相手を満足させられていないのではないか?」などと考え込んでしまい、相手が何も気にしていないと思われるような時でも一人でくよくよ悩んでしまったりしたものである。

他の男性にも似たようなことってあるのではないかと想像するのだが、こと性に関しては「くよくよ悩む」というのは非常に良くない結果を生んだ。相談も出来ずに一人でくよくよ悩んでいると、だんだん本当に具合が悪くなってくる。

僕が一回最悪の悪循環に陥ったのは21歳ぐらいの時だった。当時僕は新しい彼女ができたばかりですごく張り切っていたのだが、彼女との最初のセックスが良くなかった。

良くなかったと言っても気持ち良くなかったというのではなく、その日僕はベロベロになるまで飲んでしまい、行為自体ができないほどになってしまっていたのだ。ベッドの中で必死に何とかしようと思うのだが、下半身は全然ぴくりともせず、結局何とも煮え切らないまま眠ってしまった。

まあお互いまだ知りあってからそれほど時間も経っていなかったということもあって格段そのことで二人が気まずい雰囲気になったりはしなかったのだが、僕が一方的にそこで気負ってしまった。それからしばらくして彼女と再びホテルに行ったとき、僕のアタマの中には「前回の分まで気持ち良くしてあげなければ」ということがグルグルと回ってしまっていた。

二人でベッドに入って行為が段階を踏むにつれ、僕は自分がどんどん緊張していくのが自覚できた。ペニスを挿入しようとして彼女の上に覆いかぶさった時には緊張で両腕が震えた。

で、結果として僕はあっという間に終わってしまったのである。自分でも驚くぐらい早く果ててしまい、彼女も驚いているのが分かった。

言い訳をしようとする僕を彼女はなだめてくれたのだが、僕は彼女の言葉を信じて安心するだけの精神的な余裕がなかった。ちょっと大袈裟かも知れないけれども、「どうしようどうしよう」という言葉がグルグル回ってしまい、アタマの中が真っ白になってしまったような感じだった。

それ以来、週末になると彼女とデートしてホテルに行くのだが、毎回全身汗びっしょりになるぐらい(まだ何もしないうちから)緊張してしまい、いつもすぐに終わってしまうという状態が3カ月ぐらい続いた。最初は優しくなだめてくれていた彼女もとうとう欲求不満からくるイライラを爆発させるようになり、ひどい言葉で僕を罵ったりするようになった。

もうそうなると自分でもどうにもできなくなってしまい、一度はコンドームをつけようとしただけで射精してしまったことがあった。それにはさすがに自分でも呆れたが、解決法は何も見つからず、自分に肉体的な欠陥があるに違いないと思い込み、医者に通おうかとも思っていた。

そんな状態なのでもちろん二人の関係もうまく行くはずがなく、会うたびにケンカばかりするようになっていたのだが、ある日二人のイライラが頂点に達してしまい、東京ディズニーランドのど真ん中で大声で罵りあいのケンカになってしまった。

しばらくお互い音信不通状態になったのだが、いろいろ話をしてもう一度つきあおうということになった。

で、またホテルに行ったのだが、やはり僕は緊張してしまいあっという間に終わってしまった。本当にもう目の前が真っ暗になってしまったのだが、その時彼女が「2回目は頑張ってね」と言った。

それまで何故か僕はホテルに行ってもエッチは1回しかしないものと思い込んでいた(なぜなのかはいまだに不明)ので、その一言に猛烈な衝撃を受けた(笑)←笑い事ではない。そうか、すぐイってしまってももう一度すればいいのか!!

びっくりしながらもそれは確かにいい方法だと思い回復を待った。2回目は1回目よりも持続力があるのが普通だし自分はまだ若い(笑)からきっとうまくいくに違いないという妙な自信を持って臨んだ2回戦、僕はようやく自分でなんとか納得できるようなエッチをすることができた。彼女も「一応気持ち良かったよ」というどういうふうに解釈して良いのか分からないような言葉を僕に贈ってくれた。

本当に不思議だと思うけれども、自信を取り戻した僕の機能はそれ以降一気に回復し、1回目でも完全に自分でコントロールできるようになり、さらにおまけとしてセックスは2回以上続けてもいいんだということを知り、ホテルの延長料金がずいぶん高くつくようになった。

でもやはり性は精神的なものに支配されるのだろう、僕はその後もう一度この時に近いような状態に陥りかけた。その時はこの時のようにひどい段階まではいかなかったのだけれども。

え、今はどうかって?

それは、ひみつですよ。ひーみーつー。

きゃー。






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