Bon Voyage / Yen Chang


昨日は僕の誕生日だった。特にすることもなく、出かける気力もなく、余りの暑さに部屋の中でうだうだと過ごしていた。体調を崩していたニナは一日グーグー眠っていた。

夕方に電話が鳴り、彼が僕の部屋にくることになった。彼も暇だったらしい。それまでのウダウダ感を一気に払拭してくれるような元気な声に誘導されるように、バタバタと買い物に行ったりなどして、米やワインやスコッチなどをリュックに背負ってクラクラしながら帰ってくると彼が吉祥寺に到着したとの電話。

今日の夕食はニナが作ってくれたビーフストロガノフとマリネとエビの焼いたヤツ。散々食べて飲んで、彼は眠ってしまった。僕も後を追うように眠ってしまい、睡眠十分のニナは一人で暴れていたらしい。

夜中に話し声につられるように目を覚ます。彼も何時の間にか目を覚ましていたらしい。最初に耳に飛び込んできた単語は「light my pillow」。ごそごそと起き出してまたあれこれ話を始める。久し振りにスコッチなどを飲みながらどんどん音楽を掛け、どんどん大笑いした。去年の誕生日には、こんなことをしていたんだって思い出した。

ふと気付くと、窓の外が少し明るくなり、碧のカーテン越しの空がもっと濃い碧に染まっていた。えんちゃんの「ur words」をリピートにしたまま眠った。

目が覚めると彼はもういなかった。

僕のマックのデスクトップには、彼からの贈り物が置いてあった。







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