秋の夜長に 思うこと 自閉編
1997年9月7日(日)
Hey Lula / Yen Chang
一年ぶりに会う慎太郎は少し痩せた様子で、頬がこけた分精悍な顔つきになったような気がした。彼が一大決心をして購入した鵠沼海岸のマンションのドアを開くと、広末涼子の等身大パネルが僕に微笑みかけていた。
真っ白な壁に真っ青なカーテンとソファ。ガランとした部屋に無造作に置かれる29インチのテレビとオーディオセット。窓の外には湘南海岸の水平線が静かに波頭を立てている様子が見える。
驚いたことに、慎太郎の部屋のカーテンは僕の部屋のものと全く同じものだった。スケールは全然違うが、基本的な部屋のコンセプトは同じらしく、相変わらず妙なところで「繋がっている」な、と苦笑いする。
持参した福岡ユタカの「ur words」を聴き、薄曇りの空を眺めながらビールを飲む。慎太郎も「ur words」はひどく気に入ったらしい。次回訪問時にはプレゼントとして持参しようと思う。
慎太郎の彼女は白のノースリーブのワンピースを着ていた。僕達が床の上にクッションを置いて座ったり直接あぐらをかいたりするので、ミニの裾を気にしていて気の毒だった。途中で何時の間にか黒のパンツスーツに着替えていた。
慎太郎と彼女を見ていると、いつも何か彼女が不安そうな顔をしているような気がしてならない。あまりに強い慎太郎の個性を受け入れるでもなく拒絶するでもなく、うまく受け流すということができない女性のような気がしてならない。まあ、僕がそんなことをいくら心配したところで、慎太郎と彼女は2年以上きちんと仲良くやっているのだから、そんなものは何も問題ではないのかも知れない。
ふとしたことから村上春樹の話になる。慎太郎は村上春樹の小説は殆ど読んだそうだが、やはり「ダンス・ダンス・ダンス」が一番好きだということだった。「ノルウェイの森」は彼には辛すぎる小説だそうだ。僕はすごく納得したが、その理由をここには書かない。
海岸線が何時の間にか暗くなり始めた頃から、彼女の手料理を一品ずつ味わう。ビールから白ワインへ、白ワインから赤ワインへ、赤ワインからスコッチへ。味わうようにゆっくりと時間が流れる。
タラコのパスタがすごく美味しくて感動した。今度僕も挑戦してみようと思う。
ダイアナさんの葬儀のテレビをぼんやりと眺めたり、シューティングゲームにはまったりしているうちにあっという間に電車の時間がやばくなってしまった。
慎太郎の車で藤沢まで送ってもらったのだが、駅の直前で車がぶっ壊れてしまった。冷却水が洩れ、エンジンが軋むような異常音を発している。深夜の交差点で完全にエンコである。慎太郎にハンドルを操作してもらいながら車を押して何とか邪魔にならないところまで車を移動した。しばらく呆然としていたのだが、終電の時間が迫っていたので謝りつつ彼らと別れた。結局今回は深い話はあまりできなかったのが残念だった。家に着いたら1時半を過ぎていた。神経が疲れているのか興奮しているのか良く分からなかったが、眠くなかったのでしばらく飲みながらニナと話していた。突然バサッと眠気がやってきて、気絶するように眠った。
Yen Calling / Yen Chang
外が暗くなったころ、せんべいさんから電話。松木さんと会っているので出てこないか、とのこと。丁度読書にも疲れていたところだったのでほいほいと吉祥寺まで出て行く。
井の頭線の改札でどーもどーもと挨拶してから「みんみん」で餃子とチャーハンとビール。汗だくになる。松木さんがお酒はあまり飲まないということだったので「くぐつ草」でコーヒー。日記リンクスネタだの●●●●さんネタ(自粛)で盛り上がったり。←ばうわうネタではない。念のため。
やっぱりちょっと飲もうかってことで「More」に移動。せんべいさんと僕はEarly Timesのロック。松木さんは白ワイン。何だかんだで話しているうちに10時近くなってきたので解散。バスに乗って帰宅。
ばあちゃんが外出許可が出て自宅に戻ったと電話。話していたら一昨日の夜、実家にドロボウが入り、現金数万円を盗られたとのこと。今日は警察が来て大騒ぎだったらしく、母親は興奮状態で大変だったらしい。そんな日に僕が実家に帰っていたらきっと大げんかになっていただろうと思い、ちょっとだけホッとした。日記を書き始めてからようやく、今日は是非「Sometime」に行ってみたかったんだということを思い出し苦笑する。次回は是非。
それにしても松木さんの年齢を聴いてビックリ。まさか●●歳だとはっ!
Yen Calling / Yen Chang
秋の夜長は自閉で過ごす、これが僕の毎年のパターンかも知れません。今年の自閉はちょっとだけいつもの年よりも強力かも知れないと思うのは、僕の中で何かが動きだそうとしているからなのか、それともただ単に疲れているからなのか、その辺はまだ自分でも良く分からないのです。自分が立ち止まっているのか、それとも走り続けているのか、自分で見えなくなりつつあるようです。少し自分を見つめ直す時期にきているような気がするので、自閉にはもってこいかも知れません。少しずつ大気が冷えて、体とココロが引き締まるような気がするこの季節、僕は結構好きです。
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昨日は夜中まで外にいたので、今日は何となく家でのんびりしていた。布団を干したりコーヒーを時間をかけていれたりして、午後はのんびりと本を読んだり、Sidewalk Storyの今後の展開を考えたりしていた。
夜の風がすっかり秋らしくなってきたようなので、Summer Editionは終わりにして、今日から秋色の日記にしてみました。