思うこと
1998年5月18日(月)
Crystal Ship / The Doors
最近時々、「立花さんの文章って、村上春樹のスタイルに似てますね」と言われる。自分でも時々似てるかなって思うけど、マネをしてる訳ではもちろんない。勝手に似ちゃうのだからどうしようもない。
超売れっ子作家と文体が似ていると言われればもちろん悪い気はしないけれども、僕としてはどちらかと言うと同じ村上でも村上龍の書く文章の方が美しいと思っている。
あ、村上龍って言っても、ぶくぶく太ってやたらと全体主義的なことばかり適当に書くようになってる最近の彼の文章じゃなくて、「限りなく透明に近いブルー」と「コインロッカーベイビーズ」の頃の彼の文章はものすごく美しいと思う。さすがはデビュー作で芥川賞をとるだけのことはあると、いつも感心して読んでしまう。
村上春樹の文章は、特にエッセイなんかは、すごく読みやすいし親しみのある文体なんだけど、イマイチ奥行きに欠けるような気がするなあ。小説の一部は結構素敵な文章も書いてるけど、でもやっぱり文体の美しさという点では、村上龍の文章の方がずっと趣があるように思えて仕方がない。
僕は英文科卒だったりして、翻訳会社に勤めたりもしていることもあって、前はずっと外国文学ばかり読んでいた。大学に入ったばかりの頃はもちろん翻訳ものばかり読んでいて、卒業する前ぐらいから原文であれこれと読むようになると、僕みたいないい加減な英語能力の人間でもやはり英語の美しい作家というのはとても素敵だと思ってしまう。
一昨年ぐらいから突然現代日本文学に目覚めて読みまくっているけど、ストーリーや奇抜な登場人物の設定にばかり目がいっていて、以外と日本語の美しさに目をむける作家が少ないような気がしてならない。って、それほどの数の本を読んでるわけじゃないから、偉そうなことは全然言えないんだけどね。
でもやっぱり、唄うような、浮かび上がるような、美しい日本語で物語を語ることができたら、どんなに素敵だろう、と、思わずにはいられない。
(c) T. Tachibana. All Rights Reserved. 無断転載を禁じます。tachiba@gol.com