真夏の夜の夢 思うこと Summer Edition
1998年8月15日(土)
23:35, silent rain, cold rain, the summer is gone?
rain, rain, rain...tapping the roof of the hotel
Crystal Ship / Doors
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思うこと、北の国からバージョン、第三日目。
さて、この辺でちょっとおさらいを。今、僕はカイシャの夏休みを利用して北の国へと遊びに来ている。北の国、と一口に言ってもずいぶんと広いのだが、今僕がいるところは青森県南津軽郡の某山荘。山並の間に煌めく集落の灯を眺めるように窓際にPowerBookを置いて、こうして書いている。今日で旅行は3日目に突入した。
というわけで今日も北の国的に目覚める午前6時10分。期待していたお天気は、今日は残念ながら曇り。窓を開けるとひんやりというよりは寒いぐらいの空気が部屋の中へと入り込んでくる。
起き抜けの儀式として、今日もいそいそと温泉へ。誰も入っていない広々とした温泉にゆったりと浸かると、カラダの細胞がゆっくりと目を覚ますようで、とっても心地良い。
風呂からあがって食堂で朝食を済ませ、しばし部屋に戻って窓の外を呆然と眺める。ふと気付くともうすぐ9時。慌ててフロントへと降りていく。
9時ちょっと過ぎに羊女運転の車に連隊長殿とニナを発見。やあやあと挨拶をしてさっそく車に乗り込む。弘前市内へと向かい、某駐車場にて羊女のパートナーである工兵隊員と合流。工兵隊員のバカデカイ車と連隊長殿の車二台に分乗して、ぶるるん、と市内を抜ける。
地吹雪の名所と連隊長殿が説明してくれた五所川原市を経由して、どんどん国道を北上していく。確かに田畑しかないまっ平らな津軽平野。これじゃあ地吹雪も起きようと言うもの。ううう、寒そう。今日は日がささないので、気温が低く(日中でも22度ぐらい)、半袖だと寒い。おまけに風がすごい勢いで吹いている。うわー、とても8月とは思えません。セーターが欲しい。マジで。
国道をずんずんと北上して行くと、やがて吉幾蔵の記念館などという訳の分からない建造物が見えてくる。みんなでバカにしながら通り過ぎ、もうしばらく進むと右側に「斜陽館」が。車を駐車場に入れ、斜陽館見学ツアーに突入。
御存知の方も多いと思うが、「斜陽館」は太宰治の生家で、戦後は旅館として経営されていたものを最近金木町が買収して資料館として開放しているもの。いわば「大宰記念館」といったところか。
大宰の生家は当時の津軽で5本の指に入るほどの裕福な家で、斜陽館もとても個人宅とは思えないほどの広さと豪奢さを誇る。家の造りも非常に興味深かったのだが、展示品がこれまた面白かった。特に大宰直筆の書簡や原稿、それに書も趣深い。それにしても、太宰治は字が下手くそだなあ。
「斜陽館」の展示品について一つ一つコメントをつけているとキリがないので割愛。没頭して見学してしまったので、しばし呆然と外観を眺めたりしてから再び車に乗り込み、一行はさらに北を目指す。
(ここまではリアルタイムで山荘で書いたのだが、睡魔に負けてここで中断。以降は今日(8/16)書いた昨日の日記)
津軽鉄道の線路と並行して国道をどんどん北上していくと、やがて左側に海が。海だと思ったら、湖だった。十三湖という名前の湖で、しじみがたくさん獲れるらしく、肌寒い曇天の中、多くの人達が遠浅の湖に入ってしじみを獲っている。我々は湖畔に車を止めて、ドライブインで名物「しじみラーメン」を食べる。うー、まずい。うん、まずい。あー、まずい。麺は粉っぽいし、スープは生臭い。救いはしじみが美味しいことなのだが、やはり名物に美味いものはない、ということなんだろうか。
しばしドライブインで休憩してから再び連隊長殿の運転する車に乗り込んで湖を出発。ちなみに南の方には十三湖の姉妹品の十二湖というのもあるらしい。国道をさらに北上していくと、次第にそれまでの田畑は姿を消し、車窓は寒々とした針葉樹林と荒地ばかりになる。とても8月とは思えないような低温(22度だった)とどんよりと曇る空と相まって、何ともわびしい景色。いよいよ最果ての地が近づきつつあることを予感させる。
十三湖を出てから小一時間ほどで、津軽半島の西側最北端に位置する小泊村に到着。漁港の外れに僅かばかりにある砂浜にはこの寒いのに十人以上の人々が海水浴をしていた(さすがに泳いでいる人はほとんどいなかったが)。村の景色はいよいよ寒々しくなり、日本海から吹き付ける西風は強烈になる。僕達を乗せた車は国道をそれて村へと入っていく。村と言っても、ごく小さな集落だけで成立しているのではないかと錯覚するほど小さな村。
村では丁度夏祭りを行っていた。小さな子供達が白いふんどしをしめて神輿をかついだり、大漁船をかたどったねぶたをひいていたりする。村のお巡りさん達もニコニコしながらお祭りの様子を眺めている。
ちょっとばかり道に迷ったりしながら辿り着いたのは、「小説「津軽」の像記念館」。太宰治の「津軽」という小説のクライマックス部分がこの小泊村だったということを記念して無理矢理作られた、何とも村おこし的な記念館だった。展示物も全然大宰に関係ないものも多かったり、大宰に関係するものでも「斜陽館」にも飾ってあったものの複製だったりで、全然ピンとこない。そもそも大宰の記念館ではなくて、小説「津軽」の記念館なので、パネル等の記述を見ても、「津軽」にとって、小泊村がいかに大切な場所であったかということを強引に説くようなものばかりで、なんとも残念。まあ、あまり期待していなかったので良いといえば良いのか。ふー。
車は小泊村を出てUターン、南下を開始する。僕としては本当はこのままさらに北上して竜飛岬まで行ってみたかったのだが、一行あまりの寒々しさにかなり嫌気がさしていたようで、黙々と今来た道を下る。十三湖を再び横目に見て、帰りは海沿いの道を走る。信号もなく単調な道の連続に、まずニナが撃沈。僕もすごく眠かったのだが、運転している連隊長殿ですら「ねみーな」などと言っているので必死になって話しかけたりしてお互いの眠気を覚ます。くそー、ニナめ、さっさと眠りおってからに。
鯵ケ沢の手前でちょろっと港に寄り、運転手交代。僕が運転して弘前市内へと帰りつく。弘南鉄道の中央弘前駅の前でみやちゃんと合流。うわははっは、北国オフって奴ですな。
一行向かうは焼肉屋。工兵隊員が僕が焼いた玉ネギを立て続けに食いまくるというハプニングに目を丸くしてみたり、羊女が美味しそうに飲む玉子スープに目を引かれたり。滞在わずか3日目ですでに僕が訛り始めているということが発覚。意識して真似しようとするとみんなに違うと言われ、普通に喋ってるつもりが、あ、訛ってる、と言われる。うーむ、あと一週間もいたら結構ヤバイかも。でも、周囲が全員津軽弁を喋ってるから、しらずしらずのうちに自分もついそうなってしまうんだよね。うーむ。
焼肉をご馳走になって羊女と工兵隊員はふっと姿を消してしまった。残った我々は連隊長殿を途中まで送り、簡単に挨拶してから弘南鉄道に乗り込んで再び弘前へと向かう。それにしてもなんでこの電車はこんなにゆっくり走るんだ〜&どうしてこんなに揺れるんだ〜。
窓にゴンゴンと頭をぶつけつつ再び弘前に到着。時計を見ると7時半前。外気は半袖では寒いぐらいなんだけど、女の子達は元気にキャミソールで闊歩していたりする。そして我々はみやちゃんの案内で何やら怪しい建物へと入っていく。なんでも檻のある店らしい(きゃー)。
辿り着いたバーは、ソウル系の音楽がかかる薄暗い店で、店の端の方には檻があって、その中にもテーブルがある。なるほど、檻のある店だ。
僕とニナはバーボンを、みやちゃんはカクテルをずびずび。下らない話しやちょこっと真面目な話しなど。ふと気づいたのだが、この店の音楽の選曲は実に328っぽい。この前328に行ったときにかかっていた曲も結構流れていたし、うむ、なかなかナイスな選曲だ。
いい加減飲んだ後で、連隊長殿とはもう明日は会えないということに気づいてしばし愕然とする。うー、これだけ世話になっておいて挨拶なしで帰るのか。まずいよな、それは。
しばし悩んだものの、もうどうにもならないので、東京に戻ってから電話でお詫びをすることに決定。うーむ、実に申し訳ない>連隊長殿(見てないってば)。
山荘の門限が11時なので(本当は10時だということを後から知った)、9時半過ぎにはバーを出る。東京で飲んでたら、9時半はまだ宵の口だけど、こっちではかなり夜中に近い時間。終電は10時半だしね。建物を出たら冷たい雨。いや、比喩的表現ではなくて、本当に冷たい雨。寒い。
タクシーで帰るみやちゃんに乗せてもらって中央弘前の駅まで。ここでみやちゃんとバイバイ。また東京で&日記で会いましょう。僕とニナは電車に乗り込んで山あいの街まで戻る。ニナのタクシーを遠回りしてもらい、山荘まで送ってもらう。山荘の前でニナとばいばい。
部屋に戻ってタバコを一本吸ってから温泉へと降りていく。誰もいない温泉でくつろぎすぎて、ちょっと泳いでみようかなーなんて思ってばしゃーっとやったところで人が入って来て、すげえ恥ずかしかった。しかもはいってきたのがちょっとヤクザ風のスキンヘッドのおっさんで、ジロジロ睨まれて怖かった(汗)。温泉で泳ぐのは止めましょう、はい。
部屋に戻ってビールだのブランディー(水筒に入れて東京から持ってきた)だのを飲んで日記書いていたら、ぐわんぐわんと睡魔が襲い掛かり、途中で断念してベッドに潜り込む。窓の外はずっと雨。雨の音以外何も聞えないというのもなかなかなのだが、満天の星空を期待していたのでちょっと残念。次にくるときこそは、絶対に見てやろう、うん。