真夏の夜の夢 思うこと Summer Edition
1998年8月19日(水)
being home, in the bed room with my powerbook
(c) T. Tachibana. All Rights Reserved. 無断転載を禁じます。tachiba@gol.com
最近全然時間がなくて、せっかくもらったメイルの返信もできずにいる。そればかりか、日記巡りさえも満足にできていない。まったく情けない状態だ。
でも、「時間がない」というのは、本当は正しくないかも知れない。時間は僕だけに対して少なくなったり、ひなたのひまわりみたいに長くなったりするものではなく、全ての人に対して平等にあるのだから。それに、時間というのは無尽蔵にそのへんに転がっているものではなくて、主体的に「作る」ものだ。誰にも何も強制されない状態で何かをしようと思うなら、時間があった時を望んでいてはいつまでたっても何もできない。そう、時間は作らなければ、いつまでたっても生まれてこない。
なんだかまわりくどいけど、僕の今の状態を、主観的にそして客観的に述べるなら、「もらったメイルに返信したり日記巡りをしたりするだけの自由な時間を作るだけの気力がない」ということなのだろうか。うむ、やっぱりまわりくどいなあ。
ああ、でも本当にメイルを下さってる皆さんには申し訳ないです。もともと強度のメイル無精者の僕だけど、これだけ長くこれだけ大量に未返信メイルを溜め込んだことってあんまりないっていうぐらい、メイルが溜まってる。いつって約束をするとプレッシャーになるからできないけど、近いうちに必ず返信しますので、もちょっと待っててくらはい>該当する方々。
面白がって、やたらと僕にメイルを送ったりしないように。て、書くと余計にドツボか。
そうそう、全然話しが変わるんだけど、今日、天王洲アイルでクマゼミの声を聞いた。そう、あのわしゃわしゃと鳴くセミ。
この日記を今読んでくれているあなたが住んでいる場所ではどうか分からないけれども、僕の行動範囲の中ではクマゼミの声を聞くことはまずない。東京23区内、いや、山手線内ではクマゼミの声なんて聞いたこともなかったし、実際クマゼミなんていないとずっと思ってた。
行ったことがある人は分かると思うけど、天王洲アイルってのは、品川の近くの海沿いのところにバブル後期に作られた超人工的な町で、自然なんて全然ない、都市美の象徴になりそこねた町みたいなところ。土はほぼ100パーセント埋め立ての土だろうし、木だってまだここ10年ちょっとの間に植えられたようなものばかり。つまり、クマゼミが鳴くような要素はまったくないところに、突如としてあのわしゃわしゃという賑やかな声が聞こえてきたのだ。
夏の間中クマゼミの声を聞いて生活している人からしたら、「何をバカなことに興奮してるんだ」という話しなのだが、一年に一度聞けるか聞けないかというセミの声を、まったく予期していない時と場所で聞かされたのだから、これはなかなかの驚きなのだ。銀座のマツザカヤの角を曲がったらガマガエルの大合唱だったとか、六本木で夜明かしして青山デニーズで夜明けのまずいコーヒーを飲んでたら一番鶏のコケコッコーが店中に響くような大音量で聞こえたとか、そういうことなのだよ、つまり。
天王洲アイルのシーフォートスクエアの中庭の木にへばりついて、ただ一匹だけ鳴き続けていたあのクマゼミは、いったいどこからやってきたのだろうか。ひょっとしたら、天王洲を造設した時の土の中に卵が混ざってて、7年ぐらいかけて地上に這い上がってきた奇跡のセミなのかも知れない。いや、きっとそうに違いない。
思わず仕事を忘れて、ニヤニヤしてしまった。クマゼミよ、一瞬の安らぎをありがとう。