あなたの温もり 思うこと  不明編


1998年8月24日(月)



Stay / Shakespeare's Sister


虚空を彷徨い続けるあなたの細く小さな手は、



なにか大切なものを探すかのように闇夜の中で空を掴み続け、



濃く深い夏の暗闇の中にあなたの銀色の瞳だけが輝いている。






白くか細いあなたの指がもがき彷徨う様は、



一夜の命を磨り減らしつつ羽ばたき続ける蜉蝣の羽のように透き通り、



あなたの笑顔は青い月光を浴び夜の匂いの中へと溶けだしていく。






夜露に濡れ輝きを増す夏草の匂いと夜行性の虫達の音色に祝福され、



あなたの瞳は永遠の輝きを約束された恒星のように、



固く閉ざした僕の心を銀色の煌めきでゆっくりと溶かしていき、



虚空を彷徨うあなたの小さな手を僕は手を伸ばしてしっかりと握ろうと思う。






移り気な夏の夜風が僕達の心を包むように舞う中で、



夏の終わりを告げるかのように濃く蒼く茂る櫻の葉は細やかな合奏を続け、



天上高く輝きを増す夏の夜の白鳥は翼を一段と大きく羽ばたかせ、



熱帯夜がもたらす宿命的な情熱に煽られるかのように、



僕はあなたをきつく抱き締め、お互いの温もりを重ね合っていく。






夏の夜の夢を抱き、



夏の夜の夢に祝福され、



夏の夜の果てまでも、



一つになったまま重なりあったまま、



真夏の夜に包まれたまま、



静かに心を揺らし続けよう。






そして、









 

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