あぁ、なんだか寒いなあ。ぽっかり一日日本晴れってわけにはいかないのかな。
去年の桜はものすごく印象に残っている。それは、急にやってきた初夏のような陽気のもとで一気に満開になり、その後花冷えの日が続いて満開が長く続いたせいでもあり、また僕がごく短い間であったが僕がとても親しく感じ、そしてとても尊敬したある人物の死と直結しているせいでもある。
親父さん(と僕は親愛と尊敬の念を込めて呼ばせてもらう)とは、あと100回でも200回でも会って話をしたかった。自分の考えや思いをストレートにぶつけて、議論をしてみたかった。父親を子供の頃に失い(死んだわけじゃないがあれは父親じゃない)、その後も別にそれほど父親というものを渇望してきたつもりはなかった僕だったのだが、親父さんは初めて会った一昨年の夏の日から、僕の中にすごく自然に入り込んできた。そして僕は、こんな人が僕の父親だったら、いったい僕の人生はどんな風になっていただろう、と思った。
もちろん僕はほんの数回しか親父さんに会っていないわけで、彼の良い面しか見ていなかっただけなのかもしれない。それは自分では理解しているつもりではある。でもそれを差し引いても、やはり親父さんは僕にとってとても素敵で偉大な人であることに変わりはない。そして、タミーさんや真也さんを見ていると、親父さんがいかに家族の中で愛されていたのかということが、ものすごく伝わってくる。そしてそれが、あの家の暖かさとなって家中に満ちあふれている。
親父さんの遺影を前にする度に思う。もっともっと会って一緒に酒を飲み、タミーさんや真也さんと共にいろんな話をして笑いあいたかったなぁ、と。
親父さんの遺影の前に座り、ロウソクに火をつけてお線香を上げ、ちーんと鐘を鳴らして手を合わせる。声に出さずに「こんにちは、また遊びに来ちゃいました。今日も色々お話しましょう」と囁く。背中越しに、タミーさんと真也さんの声が聞こえる。僕の隣にはニナがちょこなんと座っている。宴の前の静けさと慌ただしさの中で。
真也さんタミーさんそして親父さん。これからもどうぞ僕とニナと仲良くしてやってください。僕はあなた達家族の暖かさと優しさにずっと触れて生きていきたい。いつまでもずっと。
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