あなたの温もり 思うこと  不明編



1996年10月16日(水)

Tunic (Song for Karen) / Sonic Youth





瞳を閉じる瞬間に、やけにはっきりとした残像が見えた。



わずかな時間を共有することによって甦る。



微笑みながらもう一度、ゆっくりと眼を閉じる。



最高の瞬間、きっちりと記憶している。



バーボンの酔いと、首都高の轟音に包まれて眠る。



距離感を感じない夜、言葉は溢れるように、流れて落ちる。



言葉の流れはやがて大河となって僕らのもとにも届くだろう。



全てを包み込み、暖めてくれるような、優しさとともに。



夜は、更けて。







Atmosphere / Joy Division

優しくありたい。



愛する人を守りたい。



家族を、守りたい。



シゴトの同僚を、守りたい。



強くありたい。



常に攻めていたい。



慌てず騒がず。



咀嚼して、ゆっくりと反芻して。



言葉にする。









カッコつけたって自分を守れない。



リキんでも、あなたを守れない。



誰かを責めたって、答えはでない。







自分を守れない人間は、他人を守ることなんてできない。



一人で生きられない人間は、他人と一緒には生きていけない。



他人と一緒に生きられない人間は、一人では、寂しすぎる。









進んでいきたい。



ゴールなんて見えない。



明日の自分も見えない気がする。



それでも進んでいきたい。



どこまでも、



どこまでも、



どこまでも、



ずっと、



あなたと。









Plainsong / The Cure





あまりにもたくさんの言葉が流れてくる。



耳を塞いでも、隙間から絶え間ない情報という名の言葉が前頭葉に流入してくる。



眼を閉じても、ラジオ、選挙演説、テレックスから流れてくる言葉がアタマの 中をぐるぐると渦巻いて、消化不良をおこしてる。



電車の車内広告、クライアントからの電話、タクシー無線、Beat U.K.、週間宝石、 出張報告書、東京新聞、コインロッカーベイビーズ、ヒトラーの演説、 わたしが見るもの、携帯電話のマニュアル、ダイレクトメール、少年ジャンプ、失われた時を求めて、 Lou ReedのCDのライナーノーツ、右翼の宣伝カー、この人を見よ、渋谷の交差点でスピーカー から流れる聖書の言葉、英検一級傾向と対策、ここにいるよ、一番線に下り普通列車熱海ゆきが 参ります白線まで下がってお待ち下さい、植物図鑑、戸籍謄本、Tokyo Walker、ただいま留守にしておりますぴーとなったら ご用件をお話し下さい、ぴー、中島みゆきのお時間拝借、暑中見舞い、Invincible Weakness of Being、秘密保持誓約書、あなたの健康を損なうおそれがありますので 吸いすぎに注意しましょう、セゾンカードご利用明細書、ラブレター、Plainsong、
おかけになった電話番号は現在使われておりません、
番号をお確かめになってもう一度おかけ直し下さい





あなたの声が埋もれてしまうよ、



こんなに言葉はいらないよ、



もう少し静かにしてくれ、







ゆっくり聞きたいんだ、





あなたの言葉を、





あなたの言葉を、





あなたの言葉を、





あなたの叫びを。











 

Past     Takeshi Tachibana     Future




(c) T. Tachibana. All Rights Reserved. 無断転載を禁じます。tachiba@gol.com