春の麗らの 思うこと 繚乱編
1998年4月19日(日)
My Side of the Bed / Suzanne Hoffs
ヨコハマ旅行記の二日目。ちなみに一日目はこちらに。
慣れない柔らかいベッドのせいもあり、明け方に何度か目を覚ます。途中まさに「限りなく透明に近いブルー」な時間帯に目を覚まし、しばし呆然と眼下の景色を眺めたりも。ニナと布団の取りあいをしつつ再び眠る。
次に目が覚めると9時。しばらくぼんやりしていると、ルームサービスの朝食が運ばれてくる。テーブルに乗せられた朝食ですよ。これこれ、やっぱりシティホテルに泊まったら一度はこれをやらなきゃねぃ。寝ぼけ眼のまま二人でテーブルに座り、思わず「インターコンチネンタルブレックファスト」を写真撮影してみたり(笑)しながら、もぐもぐと食事。クロワッサンは絶品でしたな。
食事が終わり、次々とシャワーを浴びてさっぱりして、今日もいざ出陣です。窓の外はくりぬいたような青空と、同じぐらい青い海が。うわははははっ、天気予報、見事に外れたな。やはり日頃の行いが良いせいでしょう、などと全く根拠のないたわ言を放ちつつ外出。ホテルのロビーは結婚披露宴ラッシュらしく、そこら中におめでたそうな人々が溢れていた。おめでたいおめでたい。
It's a Shame / Monnie Love
外に出ると何故か右翼の街宣カーがうようよと。何故だ。
昨日とは違う道を通ろうということで、みなとみらいを横浜美術館へと向かう。観覧車がなくなっちゃってホントに残念だねーなどとほざきつつどんどん歩く。横浜美術館の庭でも結婚式が行なわれていた。一体今日一日横浜で何組の結婚式が行なわれているんだろうか。
ぽかぽか陽気というよりも、暑いぐらい。てくてくと元町を目指して歩く。あんまり根を詰めて歩いてもなんだから、途中で目についたちょっと古くさくてこじんまりとした店に入ってビールを一杯ずつ。それにしてもどうして横浜の店はどこにいっても「ハイネケン」なんだろうか。街を歩いていてもやたらとハイネケンの看板が目立つし、実際店に入るとビール=ハイネケンという店も少なくない。やっぱり何かしらの歴史的背景があるのかも知れん。
ビールを飲んだ店はオールディーズが流れるこざっぱりとした古くさい店で、不器用そうなおばちゃんが切り盛りしていた。実に心地良い。ちょっと東京にはあんな店はないなあ。
店を出ると再び元町を目指す。途中山下公園で一服。天気が良いので海が濃い青をしていて美しい。あちこちでチューリップが満開で、これまた美しい。からからと笑いながらてくてくと歩き続ける。
元町の入口にある「アニエスb」に入る。そうだ、僕がダイエットを続けている最大の理由は「もう一度カッコ良くアニエスが着られる体型を手に入れる」ためなのだ。敵情視察にも気合が入る。今まであんまりアニエスのネクタイは魅力的だと思ったことなかったんだけど、今シーズンのはなかなか良いかも知れん。お金貯めて買いましょ。
元町の商店街をあてもなくぶらぶらと歩く。いい加減お腹も減ってきた。今日の昼はパスタと決めていたので、適当に目についたパスタ屋に入る。
Shiny Happy People / R.E.M.
入ったパスタ屋はなかなか小奇麗で、客も結構入っている。僕達が入った時点で空きテーブルは一つだけ。ラッキー。やっぱり日頃の行いが、などと高飛車に席に着く。二人で種類の違うワインをグラスで一杯ずつ。僕はシャブリを。
パスタは僕が海の幸のトマトソース(いわゆるペスカトーレ)、ニナは「ソーセージときのこのかつおだし」のスパゲッティ。それにサラダも。
サラダはまあどこにでもあるような平凡なもの。で、パスタ。ああ、まずい。
いやー、参った。こんなにまずいパスタは久し振りに食べたっていうぐらいまずい。何がまずいかっていうと、まず、トマトソースは完全に市販のトマトピューレをコンソメで割っただけのもの。ワインもニンニクもオリーブオイルも生のトマトも(ホールトマト缶さえも)入っていないというのが明らかで、しかも海の幸を投入した後に十分に火を通していないのでやたらと生臭い。これはヒドイ。はっきり言ってヒドイ。これで700円とかならまだ納得するのだが、1,880円もとっておいて、こんなパスタを出すな。がおー。
ニナの頼んだ方もかなりヒドイ味で、なんともガッカリして店を出る。やっぱり場所柄放っておいても客が入るから、こんなにまずい店でもそれなりに客は入ってしまうんだろう。ああ、もう二度と入るものか。しくしくしく。
気を取り直して再び元町の商店街を闊歩する。商店街を抜け、今夜夕食を採る予定の店がまだ潰れていないことを確認してからUターン。サングラスを購入。
今来た道をてくてくと歩き、今度は「港が見える丘公園」へと向かう。いやー、観光旅行のお手本みたいな行動パターンだなぁ。
フランス山地区で適当なベンチに腰掛けて、さっき購入したばかりのサングラスを掛けると、パチっという不吉な音と共にレンズが落ちる。ぎゃー、まだ買ってから一時間も経ってないぞ。ううう、どうも今日はついていないらしい。
ぶちぶちと文句を言いつつ山をのぼり、いわゆる「港の見える丘公園」に到着。晴れ渡った空と海を眺めてしばし放心。
一人で来ていたおじいちゃんに頼まれて記念撮影してあげたり、ダックスフントと戯れてみたりして穏やかな午後を過ごす。神経がどんどん弛緩していくのが分かる。でもこれってなかなか良い気分。時間の感覚がだんだんいい加減になっていき、つまらないことにイライラしなくなる。
いい加減夕方になってきたので、再び丘を下りて、元町の店へと向かう。
Owner of a Lonely Heart / YES
元町の店へ到着すると、披露宴二次会のため貸し切りという無情な看板が。ああああ、わざわざ店が潰れてないか下見までしたのにぃいい。貸し切りのパーティーばっかりやって適当に儲けてるような店は今に潰れるぞ、ぎゃー。
ぶつぶつと恨み言を発しながらも、実際あの店が潰れてしまったらとても寂しいので、仕方なく元町商店街の一本裏の道を歩き、適当に目に入ったブラッスリーに入る。
なかなかキレイな店だけど、イマイチ没個性。ビールはやっぱりハイネケンだった。その後はコート・デュ・ローヌの赤をボトルで。やけに甘い赤だった。料理はニース風サラダ、鶏のレバーのテリーヌ、ピッツァ・マルゲリータ、チキンの香草ソテー。
味もまあまあ、値段もまあまあ、雰囲気はイマイチといったところだけど、まああの店に入れなかったんだから仕方ないでしょう。
昨日に引き続き店を出るとまだ日が暮れていない。さすがに今日はホテルまで歩く気になれず、タクシーに乗り込む。
横浜美術館の横でタクシーを降り、美術館の前の噴水広場を散歩する。噴水があまりに美しくて、つい写真を撮りまくったり。
ぽくぽくと歩いてホテルに戻る。ちょっと飲もうかということで、ホテルのメインバーに入る。意外と空いている。僕はアメールピコンのロック、ニナはピーチのお任せカクテル。バーテンさんはホテルのメインバーとは思えないような軽快で雑な動きでさっさとカクテルをいい加減に作り、乱暴にグラスに注ぎ、さっさといなくなる。これじゃあ吉祥寺のカーブじゃなくてケーブのバーテンさんの方がよっぽど丁寧だぞ。
もう一杯ずつ飲もうということで、僕はバンブーというカクテルを、ニナはコアントローのソーダ割りを。バーテンの動きを眼で追っていると、やっぱりかなり雑だ。マティーニにレポンピールを忘れるようじゃ、バーテン失格だよ、キミ。
それほど居心地の良い場所でもないし、値段もすごく高いだろうから、適当に切り上げて店を出る。伝票にサインするだけって、すごく非現実的で、ろくに値段も見ないんだよね、これってマズイよね。でも実際は二人で二杯ずつ飲んで4,000円弱だった。ホテルのメインバーでこの値段って、結構破格かも。でもサービスも良くなかったから、まあこんなもんか。
部屋に戻ってしばらくうだうだすると、まだ9時前だというのにニナは疲れて眠ってしまった。何度か起こそうとしたんだけど全く起きないので諦め、僕はのんびりと風呂に入り、ルームサービスでクラブソーダと氷とグラスを持ってきてもらい、今夜もバーボンのソーダ割りをずびずび。
一人で窓の外を眺めながら読み掛けの本を読んだり、ボンヤリと何かを考えているような考えていないような、そんな漠然とした時間を過ごしてみたり。昨日よりもずっと天気がよかったので、夜景もずっとハッキリしていて美しかった。
結局一人で0時過ぎまで飲んで、それからゴソゴソとニナの隣に潜り込んで眠った。ぐー。
(c) T. Tachibana. All Rights Reserved. 無断転載を禁じます。tachiba@gol.com
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