秋の夜長に 思うこと  自閉編



1998年11月23日(月)晴

朝早く目が覚めたのだが、もう一度寝直す。9時頃再び目が覚めて寝転んで小説を読む。朝っぱらから京極夏彦というのはどうも正しい休日の過ごし方ではないような気もするのだが、面白いのだから仕方がない。

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11時過ぎになってもニナが起きないので、ぼちぼちと追い出し(布団から)にかかる。昨日は一日母につきあって終わってしまったので、今日はゆっくり遊ぼうという算段なのだ。

チャーハンが食べたいという僕の希望で、起き出して早々に出支度を済ませて近所の中華屋さんへ。いつもの店が休みだったので第二候補の店へ。プレハブみたいな店で心配だったのだが、味はまあまあ。ただ、ご飯がイマイチべた付いていて、もうちょっとぱらっと仕上がると素敵かも。

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当初は立川方面の昭和記念なんちゃらに、紅葉を見に行こうという話だったのだが、食事を済ませるといつの間にか三鷹の散策に行こうということに方向転換。まあ、そんなこともあるだろう。

バスに乗って三鷹に到着。いつも通勤では北口しか使わないのだが、今日の目的地は南口の玉川上水。階段をとぽとぽと上って降りて、南口に到着。

玉川上水方面にちょいと歩くと、古本屋が目に入る。本読みの我々としては吸い込まれるように入り込む。これがまたなかなかイカした古本屋。ユングだのジョイスだのプルーストだの、なかなか普段はお目に掛かれないような古本達が行儀良く並んでいてしばらく見とれてしまう。

何てことなく手にとった「死刑大全(図解入り)」という怪しげな本にどっぷりはまって読んでしまう。図解入りはいいけど、斬首刑の胴体と首の写真が延々と続くとさすがにちょっと食傷するかも。京極の小説じゃないんだから。

ぐるぐると狭い本屋の中を行ったり来たりして、結局「鉄道ファン」81年12月号などという雑誌を買ってしまう。250円。まだJRになる前の、国鉄時代のもの。中央線に201系が導入されただの、横須賀線と総武快速線が開通しただの、北海道の石勝線が開通しただのという話題。

やたらと大切そうに「鉄道ファン」を抱える僕を呆れた目で見つめるニナを従えて玉川上水に沿ってしばし歩く。家の近くの仙川上水と違ってかなりの水量があるようで、生い茂る草木の中には、カラスうりの朱色の実が鮮やかに生えていたりする。

10分ちょっと歩くと歩道沿いに大宰の記念碑みたいなものがあって、恐らくこのあたりから彼が入水したのだろうという見当がつけてある。今ではすっかり水量も減っていてとても自殺なんて出来ないような状態だが、記念碑のところにある写真では、当時はかなりの水量があったようだ。

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ついでだから大宰治の墓も見学しようということになり、下連雀付近でUターン。今来た道を戻り、三鷹の駅前通りをどんどん南下する。普段はあまり来ないんだけど、南口の商店街、結構怪しい店もいろいろあって楽しそう。大通りの一本裏は、結構場末チックでなかなかイカす。特に、貸本屋とかプラモデル専門店なんかは、なかなかポイント高いでしょう。後は、ハムカツだのクリームコロッケだのを揚げ売りしている肉屋さん。これもやはりかなりの高得点。吉祥寺とはまた一味違った魅力のある街だな。

商店街を抜けてしばらく迷ってから、目標の禅林寺に辿り着く。山門をくぐって(山門というほど山ではないのだが)寺の中に入り、ちょっとヘンテコな地下道を潜ってから墓地に入る。しばらく歩いて大宰治の墓を発見。墓には溢れるほどの花や供え物。目についたのは物凄い数のタバコが供えられていたことかな。

津島美知子さんというのは、大宰の奥さんなのだろうかということでニナと議論。ああいう死に方して一緒の墓に入るだろうかという話だったのだが、年齢を考慮してやはり奥さんだろうという推測で落ち着く。

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大宰治の墓に両手を合わせて、くるりと振り返るとそこは森鴎外の墓。というか、大宰が望んで森鴎外の墓の近くに葬ってもらったということらしいのだが。森鴎外の墓にも手を合わせる。

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禅林寺を出て今来た道を歩く。ずいぶん歩いたな。

ここからはいつもどおりのお買い物モード。まずは安売り店でバーボンだのワインだのを仕入れ、それから丸正で食材を購入。いい加減歩き疲れていたところに買い物で右往左往してどっと疲れ切る。

喫茶店(カフェではなく喫茶店)でコーヒーを飲みチーズケーキ(まずい)を食べ、駅を越えて北口に出てバスに乗って帰宅。はひー、歩いた歩いた。疲れた疲れた。

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夕食はニナ作の大豆のコンソメスープとオムレツとソーセージ。大豆のスープがもう絶品なのよ、奥さん。何杯でもお代わりできちゃう訳ですこれが。今日買ってきた見慣れないフランスのテーブルワインもなかなか美味しくて満足。

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久し振りにニナと一緒にお風呂に入った。狭いユニットにウォッカトニックだのみかんだの小説だのを持ち込んで、わいわいと入浴。入浴剤を投入しておいたのでやたらとあったまって気持ち良かった。でも結局みかんは風呂上りに食べた。

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ここのところずっと夜は寝室で寝転んでPowerBookから日記を書いていたのだが、今日は久し振りにPowerMac 7500を使って日記書き。小説を書き終わって以来すっかり7500の使用頻度が落ちている。また来年になれば次回作が待っているから、もうしばらく休ませてやろうかとも思う。








 

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