秋の夜長に 思うこと  自閉編



1998年11月28日(土)快晴

休日。

抜けるような青空に急かされるように目覚める。9時過ぎ。

ニナも10時過ぎには起き出してきて、どこかに出かけようよ、ということになる。

あれこれ話をして、代官山と中目黒に行こうということになる。洗顔歯磨き入浴を済ませて家を出るとお昼頃。風は強いけれども本当にいい天気。

空きっ腹のまま家を出たので、まずは家の近くの中華料理屋「華一会」で食事。僕は五目チャーハンと春巻、ニナは牛肉あんかけご飯。うまいうまい。やはりこれだけの味を出す店はなかなかない。ビートルズを聞きながら食う中華ってのもなかなか素敵。

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食事を終えるとしばしお散歩。近所を流れる千川上水沿いに歩く。清流の水量は少なくとも流れは秋の日に輝く。

心地のよい散歩を終え、バスに乗り込み三鷹駅へ。櫻の葉が散る晩秋の並木に、親父さんの笑顔を忍ぶ。

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吉祥寺から井の頭線に乗って渋谷へ。思わず居眠りしてしまい、頭がぼーっとしてしまう。低血圧な僕としては、一度眠ってしまうとテンションがなかなか上がらなくて困ってしまうのだよ。

渋谷で電車を降りてしばらく駅ビルの中を歩いていると、ふとソフトクリームを食べたくなる。東横のれん街の中にある立田野のソフトクリームを食べようとニナの手をひっぱっていそいそと歩いて行ったが、立田野の売り場はあるもののソフトクリーム売り場はなくなっていた。ああ。

のれん街のそばにはHobbson'sがあったのだが、ごく普通のソフトクリームが食べたかったのでパス。さくさくと歩いて246を越える。

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並木橋までの明治通りは、やたらとチェーン展開している飲食店ばかりが続いて詰まらない景色。並木橋のたもとに立っていた東京都の看板で、渋谷川(古川)の清流復活事業などというものが行なわれ、水量も随分増えているということを知る。古川というのは港区唯一の川で、僕が子供のころはちろちろと申し訳程度の水が流れていたという印象が強かったので、滔々と流れる水を見ていて何とも言えない感慨に浸る。

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並木橋を右折して代官山に向かって歩く。風がやたらと強くて難儀しつつ、たらたらと歩いて行くと、やがて陸橋の麓に目指す店が。L'accent du Midi。

ちょっとばかりドキドキしながら店に入る。店はすっきりとしたインテリアで、小物屋というには大物が多すぎるし、雑貨屋というには、雑とは呼べない家具が並んでいる。キョロキョロと周囲を見回すが、知った顔がないのでとりあえずレジにいた女性に声をかける。

「あのー、ミヤザキさんは、今日は?」
「あ、いますけどちょっと今食事に出ていて」
「あ、じゃあしばらくしてからまた来ます」

というわけで、一度店を出てたらたらと歩き、近所のレストランでお茶など。Down to Earthなる店。なかなか良い感じ。

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30分ほど時間を潰してから再び「L'accent du Midi」に戻る。二階建ての店の一階にはやはりミヤザキの姿はなく、先ほどの女性と、フランス人的男性が一ヶ。先ほど応対してくれた女性はお客さんと何やら真面目に話し込んでいるようなので話しかけにくい。

まあ適当に待っていればいいや、という感じで店の中の品物を見て歩く。南フランスで実際に家具として使われているモノばかりを集めたということで、なかなかの重厚感があるインテリア。店の中央にある狭い螺旋階段を上って二階に上がる。二階はベッドだのカップボードだのが並んでいる。変な皿がニナともども気に入ってみたり。

そうこうしていると先ほどのフランス人的男性がタッコタッコと階段を駆け上がってきて、そしてどこかへ消えて行った。ドアが開く音がして振り向いたら、あらミヤザキがいた。わはははは、久し振りだなー。

思わずハグとキスの一つでもと思ったのだが、彼女は仕事中だし、こちらはニナを連れているしということでちょいと遠慮して(嘘です)、久々の対面を喜ぶ。

ほぼ全ての読者の人はミヤザキを知らないと思うので解説しておくと、ミヤザキはかれこれ10年近くの付き合いになる僕の愛人親友で、お互い多感な時期をフラフラとくっついたり離れたりしながらも未だに仲良くしていられるという、ごく数少ない僕の親友の一人というわけ。

でも最後にミヤザキと会ったのは一体何年前なんだろうか、というぐらい会ってなかった。彼女に厳格な彼氏が出来て以来、なかなか会う機会がなくなってしまったのだが、かれこれ3年ぶりぐらいじゃないだろうか。

一緒に働いていた頃のコックの悪ガキ共の近況の話などで散々盛り上がり、数週間のうちに飲んで大酔っ払いになろうという約束を交わして店を後にする。店では、1,200円のデカンタを購入。これで美味いワインを飲もう。

それにしてもミヤザキは全然変わってないな。僕はミヤザキに「変わったね〜」と言われてしまった。僕の隣に佇むニナに向かって、「昔はカッコよかったんだよ〜」というのは、ちょっと哀しいぞ、おい。

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ミヤザキに別れを告げ、僕とニナは代官山をフラフラと歩く。コック悪ガキの一人、アクちゃんが今勤めているというフレンチの店を探して西郷山公園周辺をうろうろするが、結局目当ての店は見つからず。でも歩いているだけですごく気分のよい街並み&気候で二人して上機嫌に。夕闇迫る代官山駅から電車に乗って隣の中目黒へ。

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中目黒の駅を出て、山手通り沿いに246方面に2、3分歩くと目当てのラーメン屋、「百麺」があった。さっそく店に入り、僕は細麺+もやし+玉子を、ニナは細麺+チャーシュー+ネギを。

タンと置かれる器に満たされるとんこつ醤油ラーメン。うむむ。細いぞ、麺が。実に。

と言うわけでほとんど口も聞かずにひたすらラーメンを食む。食む。食む。んまいんまい。これがとんこつ醤油ラーメンか。ニナのアドバイスで揚げニンニクを投入すると、これがまたうまい。満足満足。

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すっかりオナカ一杯になって店を出る。夕闇迫る中目黒を駅に向かって歩く。六本木のLe Chaleureuxでバイトしていた頃は、やたらと中目黒で飲んでいたりしたっけ。なんで中目黒で飲んでたんだかは、もう忘れてしまったけど。

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電車を乗継いで吉祥寺に辿り着き、さらにバスに乗って家に帰ってきてもまだ7時前。ミヤザキの店で買ってきたデカンタにチリの赤ワインを満たしてさっそく飲んでみたり。

ニナといちゃいちゃしていたら、9時半頃に眠ってしまった。でもよく歩いた一日だった。心地良い疲れに包まれて眠る。








 

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