Return to Innocence / ENIGMA
低く垂れこめて僕に閉塞感と孤立感を募らせていた雨雲が、徐々に途切れ始めている。
途切れることなく、永遠のもののように感じられた厚い、灰色の雲が、小さな塊の不規則な連続となり、西から東への風に乗って流れていく。
多量の水分を含んだ大気から、細かい粒子の水分が、太陽光線の予感に、上昇気流をつくりだし、僕の眼をハレーションさせている。
もっと空が見たくなって、屋上に登ってみた。微細な水の粒子が僕のカラダのまわりからも立ち上がっている。
アスファルトとコンクリに囲まれたこの町が、莫大な数の水蒸気を立ちのぼらせ、呼吸をしているように感じる。
タバコに火をつけて、両手を高くかざして、みた。
光が、眩しくて、眼を、閉じてみた。
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Fading Like a Flower / Roxette (thanks akko)
誰かを傷つけては、ふたたび自分の殻に潜り込み、己の孤独を嘆く。
殻の中で僕は口から白い細いキラキラ輝く糸を吐きだし続ける。
細くて白い糸は僕のカラダを覆い始め、やがて僕は視界を失う。
キラキラと輝く糸に包まれ、僕はずっと音を聞いている。
繭の中で、僕はずっと映像を見ている。
暗闇の中で。
傷つけたもの、失ったもの、愛したもの、乗り越えられなかったもの、大切なもの、乗り越えて行きたいもの、愛していきたいもの、失いたくないもの、傷つけたくないもの、
暗闇で眼を見開いてみると、そこには細い血管が無数に走っているように感じる。
負傷兵が、傷ついた脚とココロで、それでも胸をはって歩いてくる足音が聞こえてくる。
歌声が聞こえてくる。横隔膜と声帯が痙攣し、途切れるように唄い続ける声が。
バリバリと轟音を立て、シコルスキー型ヘリが飛び立っていく。
少しだけ、繭に亀裂が見えるような気がする。
手を伸ばして亀裂に触れてみる。
拳を握りしめて、自分にチカラが戻ってきたことを確認する。
自分のチカラを確信して、繭から、飛び出す。
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Chelsea Girl / Ride
少しずつ、近づいてくる、もう少し、もう少し、
距離感が非現実的な速度で、圧縮されていく。
重苦しい大気を引き裂くように、光の帯が街から街へと僕に向かって這うように飛んでくる。
時間軸と距離軸がゼロになる、僕の次の時代が始まろうとしている。
足下を掬われないよう、警戒しつつも、全力で走っていきたい。
Haru/
shin-ya b/
かおり
nico/
Kana
Shimomi/
安原/
山本/
わっちゃん/
松木/
松永/
岡田/
江口/
Alice
うえだ/
わっきー/
阿部/
おおつ/
たかの/
貞奴
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