Hey Lula / Yutaka Fukuoka
Shakti / Yutaka Fukuoka
Blackwater / Rain Tree Crow
つんざくような鋭角な夜の大気の中を、風に押されるように歩く。
思い出が、突風とともに僕のアタマの中に入り込み、そのまま居座ろうとする。
向こうから歩いてくるカップルは二人とも皮を着込んでいる。
僕が始めて眩しさを感じたあの夏の日から、僕の日付は進んでいない。
僕は7月20日に死に、7月23日に再生した。
もうずいぶん時間が経っても、
夏の記憶は薄れることはなく、
僕の再生の証として、はっきりと、
首筋に残っている。
泳ぎかたを憶えたのはいつのことか。
いまでも自分で泳げているのかどうか、自信がない。
雨上がりの朝は、アスファルトから水蒸気が一斉に立ち昇り、
コンクリだらけの街に、一瞬有機的な安らぎの断片を与えてくれたように思ったが、
突風が全て持っていってしまった。
風が強い夜は、いつもより少しだけ星が多く見える。
米軍のヘリポートの向こうに見える高層ビルも、いつもより大きく見える。
コンクリの冷たさが、強調されている。
ビルの群れが、いつもより攻撃的に迫ってくる。
風の音と首都高速の轟音が、せっかくの音楽に不協和音を投げ掛けている。
視覚と聴覚を攻撃され、温もりが欲しくなる。
体温を確かめあえない夜だから、
せめて、声でも聴こう。
雑音を忘れられるように。
ひどい喉の渇きに似たような、
焦燥感を伴う孤独感、いや、孤立感。
風が強くて寒い夜にはよく感じていた。
胃から食道へと虫がうじゃうじゃ登ってくるような錯覚に陥り、
自分を必要とする人間はこの世に一人も存在しないと自分で断言する。
孤独に耐えられなくなって誰かに電話して、
声を聞いた瞬間に話すことなど何もないことを知り、
それでも話し続ける自分を卑しいものと思った。
自分を支えることができず、
ヒステリックに救いを求めて貪り食う。
言葉を失い、肉体を腐らせ、
ココロが凍る。
愛されることばかり望んで、
頬張りすぎて、全て吐きだす。
愛することの代償として、10倍愛されることを要求し、
与えられた愛情に嫌気がさし、
自分の愛が偽りだったことを思い知る。
寒い夜だ。
あなたの声を聞いて、
少しだけ、あったかくなった。
Haru/
shin-ya b/
かおり
nico/
Kana
Shimomi/
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