あなたの温もり 思うこと  不明編




1996年11月20日(水)

Orqange Rolls, Angel's Spit / Sonic Youth/i>



コンクリのビルの間から、真紅の巨大な月が顔を出している、


真紅というよりは、赤と青のハイブリッドのような色かも知れない、


水かさがましてきて、もう僕の足は、アスファルトの地面よりも4メートルも上を漂っている、


水浸しになった僕はどうやったら陸にあがれるんだろうと考えながら、


もつれた足に絡みついてくる腕を必死に振りほどこうともがいている、


もがきながら、ふと空を見上げてみた、


まるで星が降ってくるようだったから、


思わず眼を閉じてしまい、父と子と聖霊の虜になっていくように思い、


唄を、唄いたくなった。





Mildred Pierce / Sonic Youth



喉元に突き付けられた言葉に息をのみ、


唄っていた僕の声が狂気に包まれる。


オクターブを正確に聞き分ける僕の細胞の一部分が、


鏡の割れる音を正確に聞き取っていた。


うつむいたままでほとばしる紫の液体と、


両目からこぼれ落ちる白い砂が、


瓦礫の中で眠るあなたの乳房のように、


狂おしく、


あなたの声に僕のカラダが、


のけ反っていく。




To Here Knows When / My Bloody Valentine



シーツがこすれるような、さらさらとした音が、


微かに灯る光に浮かび上がる、


あなたの影と僕の影を、


融合させ、沸騰させ、融解させる。


髪を通る指と、重なり合う影が、


瞳の中に映る、あなたの瞳の中を、


映しだしている。


溺れる神経と、張り詰める肉体が、


湿気を孕んだ冬の大気を、


くすぐるように、


愛撫し続ける。


Love will Tear Us Apart / Joy Division

前かがみになる、


前後の脚にチカラをいれようと思うが、


ふわふわと浮き上がるような感覚に包まれてしまい、


思うようにいかない、


ぐっと脚にチカラを込めて、


滑走路を全速力で走り始める。


全速力で走っているのに全然苦しくない、


徐々にカラダからチカラが抜けていき、


土を蹴る感覚が失われる。


額に浮かんだ汗が蒸発し、


風の抵抗も、体温も感じなくなったとき、


あなたのココロはゆるやかに離陸し、


僕達を見下ろしながら、


何回も何回も上空を旋回し、


やがて、一気に上昇し、


雲の間に見えなくなった。


見上げている僕達はいつまでもあなたの光跡を追いかけ続け、


眼を閉じて、一生失わないように、


鍵を二つ、掛けた。







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Haru/ shin-ya b/ かおり
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