あなたの温もり 思うこと  不明編


1997年10月28日(火)

Love...Thy Will be Done / Martika

黄金色に染まった銀杏の枯れ葉を身に纏い、


あなたはコンクリに包囲された乾いた夜の冷気を切り裂くように、


静かにそして確実に歩き続ける、


青白く明滅する水銀灯の光がアスファルトに吸い込まれていく中、


あなたは冷気と温もりを幾重にも織りあわせると、


白濁した都会の夜を漆黒の闇へと塗り替えながら、


静かにアスファルトの上を歩き続ける。



天空高く儚げに輝く海王星の軌道を描きながら、


緊迫した大気が秋の夜に降り続き、


静かに眠り続ける都会のコンクリート達は、


遥か昔に失った記憶を追い求めるかのごとく、


静かに発光し始める、


あなたが街を漆黒の闇で塗り固めていく後から、


失われた時代を求めるコンクリの塊が乳白色の光を放ち、


そのあまりにも脆弱で無防備な灯は、


硬質な都会の水銀灯の流れの中で、


コンクリでガチガチにしこった僕の体の中に暖かい火を灯し、


都会のコンクリ達の囁き声に合わせて静かに唄い始める。



静かな笑顔を浮かべながら都会の夜を闇に織り込むあなたの姿が、


コンクリ達が放つ柔らかな光の中に浮かび上がるとき、


僕の中に灯った小さな炎は橙色にかすかにゆらめき、


僕のココロの中を暖かい涙が静かに通い始める。



あなたは静寂を纏ったまま静かな笑顔をたたえ、


僕はコンクリ達に祝福されるようにあなたへと近づいて行く、


震える僕の指があなたの頬に静かに触れたとき、


僕のココロの中の小さな炎は大きく燃え上がり、


コンクリ達は渾身の力を込めて暗黒の都会を白金色に染め、


海王星の銀色の輝きは天上から全ての闇を奪い去るほど強く僕達を照らし出し、


僕達は影を失った。



舞い落ちる黄金色の銀杏の枯れ葉に包まれるように、


漆黒の都会の闇の中で全ての眩い輝きに抱擁され、


僕のココロは熱い涙を流し続け、


あなたの微笑みに静かに唇を寄せる。



失われた時代の記憶を乳白色の輝きと共に放出し続けるアスファルトとコンクリに包まれたまま、


あなたは震える僕の手を静かに取り、


僕のココロを永遠に失われることのない安らぎへといざなっていく。



僕のココロは熱い涙を流したまま、


全てのアスファルトとコンクリに接吻し、


彼らの追憶の奥へと、


静かに旅立って行く。






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