秋の夜長に 思うこと 自閉編
1998年10月31日(土)
8時過ぎに目覚める。昨夜眠ったのが5時半だから、2時間半ぐらいの睡眠だが、頭は驚くほどスッキリしている。いつもの二倍ぐらいのコーヒー豆を投入して濃いコーヒーを入れ、モニタに向かう。本当のラストスパート、完全没入。
途中でニナが起きてくる。二日酔いだーと嘆いている。僕はそれでも作業を続ける。
昼前に全ての「作業」が終わる。最後に表紙をプリントアウトして、原稿をまとめると、ニナに「終わったよ」と告げる。ニナは「吐いちゃった」などと、全然噛み合わない話をしていて、ずっこける。
村上龍もそうだったらしいが、終わった瞬間にそこら中を駆け回りたいとか、友達全員に電話したいという欲求に駆られる。やたらとハイになってしばし騒ぐ。
でも寝不足と脱力感に見舞われてしまい、あっという間に萎え萎えに。昼を大分過ぎてからようやく始動し、ニナと吉祥寺に出る。一緒に文房具屋に行き、あれこれと必要なものを買い揃える。で、ニナと別れて僕は郵便局へ。
三鷹の駅前のべっカーズに入り、テーブルで封筒の宛名書きをしたり、出来上がった分厚い原稿をクリップで留めたり梱包をしたりしていると、あっという間に郵便局が閉まる3時の10分前に。間に合わなかったらしゃれにならないので、あわててタクシーに乗り込む。途中三鷹通りが工事をやっていて、タクシーが郵便局に着いたのが3時2分前。ぎりぎり滑り込む。
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窓口で原稿を配達証明付きの書き留めで、しかも速達にしてもらう。1,670円だって。かー、高いね。配達証明の控えの伝票を受け取って、おじさんが原稿の入った封書を奥に持っていくのをしばらく睨みつけるようにじーっと見つめる。おっさん、なくしたら、殺すからな。
郵便局を出て、思わず深く深呼吸を一つ。肩の荷がおりたというか、気が抜けたというか、何とも不思議な気持ち。でもすごく心地良い。でも窓口の横には「時間外受付窓口」なるものがあって、結局は夜の8時まで大丈夫だったらしい(笑)。
やってきたバスに乗り込んで家に帰る。のんびり眠ろうと思ったのだが、ふと見ると部屋の中はまるで魔窟のような散らかりようで、思わず片付けを開始してしまう。今日はお客さんが来るのだよ。
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部屋を片付けて、洗濯物を畳んで、台所の洗い物を片付けたころにニナに連れられアキラとしおりんが登場。やーやー、どもどもーと挨拶。
しばし談笑の後、ニナとしおりんが食事の支度にとりかかる。僕はさすがに今日は支度は免除されて(やらなくていいはずの部屋の片付けもしたことだしな)、アキラとゴロゴロしながらだべって過ごす。アキラに完成した原稿をちらりと見てもらったりする。
食事の支度を進めていると、某奥様より電話。無事バス停まで到着したとのことで、某ご夫婦様を出迎えに。どもどもと挨拶をして僕の部屋に。一気に部屋が賑やかに。
あーだこーだとだべっているうちに食事が完成。ニナとしおりんの大作。炊き込みご飯、あさりの澄まし汁、重ねロールキャベツ、きんぴらごぼう、ほうれん草のベーコンと玉ネギ沿えのおひたし、さらにグリーンアスパラガスのお浸し。
「作業」が完成したら、ドンペリニョンを飲もうと、前からニナと約束していたので、みんなでドンペリを抜いて乾杯する。ぷはーっっ、これはうまい。しゃれにならないぐらい旨い。癖になりそうで怖い。
みんなしてわはわは言いつつ食事をし、飲みたいものを各自飲んで御機嫌さんモードに突入。食後はチーズを切ったり、某ご夫婦様のお土産のコーヒー大福(絶品!)だの団子だのカボチャのパイ(ハロウィーンモード)だのを頂き、お茶だの酒だのを飲む。
某ご夫婦は電車がなくならないうちに帰るということで、バス停付近まで見送りに。風邪気を付けてくださいねぇ、某旦那様。
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部屋に戻ってさらに飲む。僕は時折訪れる強烈な眠気に耐えて何とか目を開いている。MTVを見たりうだうだと喋ったりしているうちにみんなも眠そうになってきたので、これはチャンスとばかり全員で寝室に移動。
まだみんなは喋っていたのだが、僕は寝不足と疲れであっという間に撃沈。肩の力が抜けてて、眠りに落ちる寸前はやたらと気持ちが良かった。うはははははー。
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いやー、でも終わって本当にほっとした。第一稿を書き始めたのが3月の下旬だから、7カ月で書き上げたことになる。途中引越だの旅行だのもあったし、深夜残業もあったし休日出勤もあったわけだから、まあ自分なりにはよく頑張ったと思う。特に第二稿は約2カ月半で470枚書いたのだから、これはこれでよしとしてやらなきゃ。
初めて書いた長編小説がいったいどのような評価を受けるのかは僕には全然想像ができない。書いたものが良いものなのか悪いものなのかも、あまりにも作品と仲良くしすぎてしまったから、自分では全然評価できない。
まあ、もう自分の手を離れてしまったから、僕にはどうすることもできないわけで、逆にとても気が楽になった。後は出版社の人々が、煮るなり焼くなり好きにしてくれることだろう。ダメだったら、また書けばいいだけのことだし。気負うことなく発表を待とう。
応援してくれた皆さん(webな人も実生活の人も)、おかげさまでようやく完成にこぎつけることができました。どう評価されるかは全然想像できませんが、まあとりあえず満足のいく結果が残せたと思ってます。どうもありがとうございました。
運良く皆さんの目に触れる日が、ひょっとしたら来るかもしれませんので、その時はどうぞよろしくお願いします。お蔵入りになった場合は、まあその程度だったんだな、と笑ってやってください。
明日からしばらく休憩して、元気を回復してから次の作品のアイディアを練ろうと思ってます。あ、日記は書きますよ、多分(笑)。
ではでは。
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