思うこと
1999年8月17日(火) 雨
南の島旅行記、今日で第五回(旅行は四日目)。前の回は、このページの一番下の←から戻ってください(手抜き)。--
今日も目が覚めると雨。島に着いていらい、ひたすら雨、雨、雨。一日中ずっと降り続いているのではないのだが、気温も低く、唐突に土砂降りになる。浜のうねりも高いので、泳ぎには行けない。
昨日は一日観光をして何とか潰せたのだが、そろそろ我々も雨にうんざりモードに突入。天気予報を聞いても、相変わらず熱帯低気圧が停滞していて、今日一日はずっと雨とのこと。この予報、3日前からテープが更新されてないんじゃないかと思ってしまうぐらい、ずーっと同じ。注意報もずっと同じのが出てる。大雨洪水雷波浪注意報。三日間出っぱなし。ああ、うんざり。雨の確率は90パーセント。ああ、うんざり。
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ニナはキレてしまったらしく、いそいそと水着に着替えたりしている。外を見ると、ほんの一瞬太陽が覗いたりはするのだが、その1分後には土砂降りの雨が降ってきたりという感じで、どうも望めそうにない。
昨日一日かけて観光した後だったので、もう今日は車でぐるっと屋久島を一周する気にもなれず、しばらくぼんやりして、うつらうつら眠ってみたり起きてみたり。外は雨がドバーッと降ってみたり、小降りになってみたり。
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昼前になって本格的に起き出す。やることがないから、部屋でやけ酒にワインでも、という話になる。一昨日行った、安房の「Some's」というスーパーは、ウィスキーもワインもなかなかの品揃えだったし、宮之浦には何軒か洋酒を置いてる酒屋さんも見つけておいた。
コインランドリーで洗濯したいというニナと共に、車で宮之浦へ。スーパーでお昼用のお弁当を買い、酒屋でワインだのソーダ水だのを買い、コインランドリーで洗濯を済ませる。ちょっと情報収集ということで、屋久島環境文化村センターへ。あれこれと屋久島に関する資料を読んで時間を潰す。
この旅行記の初日のところにも書いたけど、屋久島というのは実に山が多い島である。というか山しかないという感じ。九州で一番高い山(宮之浦岳)が島の中央にあるだけでなく、島全体がとても高い山の群れで構成されていて、それが海岸沿いまでずっと続いている。そして海岸沿いでガクンと高度が低くなり、そのまま海となっている。だから気候も亜熱帯から亜寒帯まで幅広いし、鹿児島の南にある島なのに、冬になれば山頂には雪も降る。なるほど、すごい島だ。
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環境文化村センターを出て、一湊の海岸で弁当を食べる。この肌寒い気候に、泳いでいる高校生が2、3人。ちょっと僕は泳ぐ気にはなれないなあ。屋根のついたコンクリ造りの小屋みたいなところで、もぐもぐと弁当を食べる。
一湊の海岸を出て、永田に向けて走っていると、雲がちょっとだけ切れて、太陽が顔を出した。陽光を浴びると、右側に見えている海が途端に生き物のように美しくキラキラ輝く。このまま晴れれば泳げるかもしれないっ。我々はそんな淡い期待を抱きつつ、宿へと帰った。
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だが、コインランドリーで洗った洗濯物を部屋に干したりしている間に、いつの間にかすっかり陽光はなくなり、また元どおりのどんよりとした空に。それでもニナは水着に着替える。今日二回目。僕も着替える。だがその直後から、外は猛烈な雨に。我々は溜息をつき、買ってきたワインを開けることにした。
夕方に会社に電話をした。部長が「天気はどうだ」と言うので、「ずっと雨です」と答えたら、「東京に戻ってきて外堀で泳いだらどうだ」と大笑いされた。くぅぅ。
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高校野球、青森山田高校は、三回戦も買った。大分の日田林工と延長11回の大接戦。
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夕食の時、昨夜から泊まりに来ている親子連れ4人の、奥さんが声を掛けてきた。「こんな天気が悪くてどこで遊んでるんですか」と。
どこでも遊んでないので、「部屋で飲んでたんですよ」と答え、笑われる。これがきっかけとなり、しばらくこの夫婦と話をすることになった。彼等は現在は東京在住だが、もともと鹿児島出身で、学生時代は毎年屋久島に来ていた。お盆で帰省したので、せっかくだから足を伸ばして屋久島に、ということでやってきたらしい。
二人は延々と永田の浜がいかに美しいか、満天の星の夜空がどんなに凄いかを、まるで夢でも見ているような甘美な表情を湛えて滔々と話す。話を聞いてると、どんどん羨ましくなってくる。僕らなんか、まだ一度もその夢みたいに綺麗な海も、流星群が来てなくてもヒュンヒュン流れ星が見える夜空も、経験してないんだよ。くそおおお。
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話し相手になっていた夫婦の二人の女のお子さん(4歳と6歳)が徐々にヒートアップ。僕らの周りを駆けずり回り、座布団が積んであるところにダイビング。女の子独特の金属質の嬌声を上げて走り回る。
それにつられて、旅館の若女将の一人息子、テル君(5歳)も徐々にヒートアップ。一緒に遊びたくて仕方がないのに、恥ずかしくて声を掛けられない状態でじたばたしている。
そこに、牧旅館の若旦那が登場し、みんなで永田浜のウミガメの産卵のビデオを見ませんか、と誘ってくれた。
食事を終えた我々は、ロビーに移動してビデオ観賞。と言ってもヒートアップした子供3人を広いところに連れていってしまったわけだから、全然ビデオに集中出来ない。ソファーをひっくり返しそうになったり、置物を倒しそうになったりで、あっという間にすっかり仲良しになってしまった子供3人にふりまわされっぱなし。
でもこうして子供がバタバタ走り回っていて、それを両親がニコニコしながら見守っている図って、なんだか温かくていいね。そんなに子供好きではない僕だけど、今日ばかりは愛想良く子供らと遊んであげた。
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ビデオ観賞もそこそこに(というか若旦那はビデオをセットするだけセットしたら、ご飯を食べにいなくなってしまった)、親子連れは部屋へと戻っていった。テル君もちょっと眠そうだったので、そこでビデオを消して我々も部屋に戻ることに。
今日もバーボン飲んで眠る。眠る前に天気予報をチェック。明日は夜には晴れるでしょう、とのこと。夜にはだとー。
ひょっとして、我々はこのまま一度も海に入れないまま、屋久島を引き上げることになるのだろうか。ああ、それはちょっと悲しすぎる。
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