凍える夜に 思うこと  不明編



1999年11月17日(水) 


Stay / Shakespeare's Sister



よくできた機械のように行儀良く並ぶ、


薄汚れたグレーのスーツ姿の男達に混じり、


ふと気づくと僕自身も薄汚れたグレーのスーツを着込み、


僕のスーツと同じぐらいに薄汚れた通勤電車に乗って、


今にも墜落してきそうな薄汚い空に向かい、


一糸乱れぬ整列のまま、


いままさに突っ込んでいこうとしている。





口ずさんでいたはずの美しい音楽はいつの間にか消え去り、


僕の口は乾き唇はひび割れ、


呪詛と媚びの入り交じった鼻歌を、


つるつるした白い電話機に向かい吐き出し続けている。





ざっくりと切り落としたように鋭かった眼差しは排気ガスと諦めに濁り、


凍えるように両手を胸の前で組んだ君は今、


濁って澱んだ河のほとりで独りブツブツと小声で呟き続けている。


君の名を呼び叫ぶ僕の声をかき消すように街宣車が通り過ぎていく、


街宣車は勝利の歌を高らかに唄いつつ、


紙切れと化した株券や債券を紙吹雪のようにばら撒き続けている。





コンクリの廃材を満載したダンプカーの列が、


紙の小旗を打ち振る人々の前を隊列をなして行く。


砂塵が起こり君の姿が霞むなかを、


僕はようやくスーツを脱ぎ捨て、


薄汚れた男達の流れに逆らい歩く。


街宣車はやっきになって僕の耳を潰そうと、


金属質の雄叫びを上げ続け、


ダンプの列はもうもうと砂塵を上げ僕の顔を泥だらけにする。





スモッグと砂塵にはるかに霞む君に向かい、


僕は薄汚れた姿のまま、


恐らくは聞えないであろう叫びを上げる。





薄汚れた空を大きな鳥が一羽横切っていく。





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アーネスト・ヘミングウェイ、「老人と海」読了。

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今日の重:94.0キロ(今週末の目標:94.0キロ)←(ダイエット決意時の体重は96.4キロ、11月14日の体重は95.6キロ)

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