小説・フィクション書評

1Q84 Book 2〈7月-9月〉 by 村上春樹 〜 闇は深く、折り重なる言葉と想い [書評]

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ブックレビュー2010年の57冊目は村上春樹氏著、「1Q84 Book 2」を読了。Book 1に続いて1年ぶりの再読。

1Q84 Book 1のレビュー・エントリーはこちらから。

昨年読了時の1Q84 Book 2のレビューのバックナンバーはこちらから。

さて、1Q84の第二巻のレビューである。このレビューは先日発売されたBook 3を読み終えてから書いている。つまり小説の全体像を理解したうえで書いているという点で、昨年書いたレビューとは大きく性質が異なる。

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1Q84 Book 2〈7月-9月〉 by 村上春樹 〜 闇は深く、折り重なる言葉と想い [書評]

去年1Q84が発売された時には、この小説は全2巻と紹介されていた。

つまり今回発売された第3巻は存在しないという前提である。

ということは、この第二巻で小説は完結するとい前提で読むことになるわけで、そこで僕は随分混乱もしたし、また、困ってしまった。

本当にこれで物語は終わりなのか?と。

第二巻に入っても新しい登場人物が現れ物語の舞台も増え続け、第二巻の終り間際になっても、伏線は新たに張られ続け、謎は新たな謎をどんどん呼んでいる途中で、青豆が拳銃を自分の口に突っ込んで自殺して物語は強制終了。

そんな強引な終わり方って、と途方に暮れたのだ。

だが、今回はすでに第3巻が存在し、物語がまだまだ続くのだという前提で読むことができ、色々な意味で安心しつつ読み進めることができた。

元々パラレル・ワールドのように別々の物語かと思われていた天吾の物語と青豆の物語は、徐々に距離感を狭めつつ近づき始める。

時間軸が微妙にずらされているため、読み進めつつ不思議なずれを感じることになるが、これが1984年と1Q84年のギャップのように読者にざらりとした違和感を与えてくれる。

ふかえりを介在させ距離を縮める天吾と青豆。そして物語は第3巻へと続く。

うん、非常に収まりが良い。物語の展開や登場人物の行動、すべてが物語はこれからさらに深いところへと進んでいくことを示唆している。

しかし何故出版社も村上氏も、この物語がまだ続くのだということを事前にハッキリ教えてくれなかったのだろう?

マーケティング戦略的にはどうなのか分からないが、今回のこの手法は、あまり親切とは言えないように思う。

以前何かの記事で、村上氏がBook 3はもともとは予定していなかったが、後から書きたくなって付け足した、というニュアンスのことを言っていたのを読んだが、僕はその言葉を信じない。

これだけ精密で入り組んだストーリーを途中でぶった切ってそのまま完結という形で終わらせるつもりは、作者には絶対なかっただろう。

あくまでもこの1Q84は3巻を書く前提で構成されていたものだし、作者も出版社も当然そのことを知っていたはずだ。

4月にこれだけの分量の小説が出版されるためには、昨年のBook 1とBook 2の発売時期には、既にBook 3はある程度書かれているか、少なくとも構想は相当な部分まで進んでいたに違いないと踏んでいる。

いずれにしても、第3巻が存在することが明確になったことで、1Q84 Book 2の役割も評価もそれなりに変化することになった。

そしてそれはとてもポジティブな方向に変化したのだ。

青豆と天吾とふかえりの物語は、まだまだ終わらない。

1Q84 Book 2のチェックはこちらから!

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