凍える夜に 思うこと  抱擁編



1999年2月4日(木) はれ すごく寒い

有給休暇。

朝はニナが目覚ましと悪戦苦闘している気配で目覚める。いつもは僕が先に起きて後からニナを起こすのだが、今日はニナが自力で起きた。目覚ましをひっぱたくようにして止める。バシっと音がするぐらい。最後は目覚ましを抱いてたな。そんなに起きるのは辛いか。

--

この3週間ほど、残業続きでずっと資源ゴミが出せなかったので、今日こそは絶対に出そうと眠る前に誓っていたので、ニナがバタバタと支度をする様子を気配で感じつつ目を閉じていても、頭の中が「資源ゴミ、資源ゴミ」と言っていて眠りに集中できなくなってしまった。

結局ゴソゴソと起き出してどっさりと溜まっていた空き缶、空き瓶、ペットボトル類を分類カゴに入れる。肌が切れるような寒さだ。ああ、休みでよかった。

--

ニナを送り出し、しばらく呆然とテレビを眺める。ワイドショーで、美味しいおでんの作り方を放送していて、思わず身を乗り出して見てしまう。ふむふうむ。で、今夜はおでんにしようと決心。急にやる気が出てきて、洗濯、掃除を開始する。

--

12月からずっと残業だの休日出勤だのばかりしていたせいで、ずっと部屋の掃除をしていない。いろんなものがデタラメに散乱しているし、ほこりもひどい。一念発起して居間の大掃除をする。散乱したものを所定の位置に戻し、乾いたタオルをはたき代わりにして家具に積もったほこりを落とし、掃除機をかけ、洗剤を使って家具を磨き、エアコンのフィルターを掃除し、窓を磨いたらお昼になった。

きれいになった部屋でタバコを吸ってビールを一缶飲んでから、近所のラーメン屋へ行って昼食。午後は寝室の掃除をしようと思っていたんだけど、この時点ですっかり面倒になってしまい、寝室及び台所、浴室の掃除は今度の週末に延期することに。その代わり今日はおいしいおでんをニナに食わせよう。

--

ぷらぷらと歩いて20分ほどのスーパーへ。おでんのタネを購入。それにしても、郊外だと本当に平日の日中に若い男ってのは皆無だね。西麻布に住んでたころは、平日にスーパーに行っても全然違和感を感じるようなことはなかったんだけど、これだけ見事におばさんしかいないと、ちょっとビビってしまう。芸能人や業界の人が都会に集中して暮らしているのは、カッコつけてるだけじゃなくて、みんなで暮らせばおばさんパワーが怖くないからじゃないかな、などと思わず考えてしまったり。

ちなみにおばさんはやけにゆっくり歩いている。まるでよちよち歩きの子供のようなペースでスーパーの中を徘徊している。入り組んだ店の中をフラフラと歩き回るオバサンの姿を立て続けに見ていたら、ふと「平安京エイリアン」を思い出し、自分の両側に穴を掘ってオバサンを落としてやろうか、などと妄想してしまったり。

--

何とも居心地が悪いので、視線を落とし気味にしていそいそと買い物を済ませて帰宅。何だかとっても緊張してしまった。

家に戻ったら早速おでんの仕込み。まずは昆布を戻しつつ、卵を茹でるところからスタートし、野菜を切って鳥肉を切って、スタンバイ完了。

昆布の戻し汁と鳥肉と鰹節でだしを作り、塩だけで味を整えて大根とコンニャクを投入してぐつぐつと煮る。しばらく手が開いたので、その間にメイル書いたりちょろちょろと本を読んだり古書店に進捗状況を書き込んだり。

大根がいい感じになってきたら、ジャガイモとごぼうも投入。さらにぐつぐつ煮込む。また手が開いたので、台所で立ったままビールを飲んだり、シャツのノリづけをしたり。

ジャガイモも柔らかくなったところで、湯通ししておいた練り物関係とウィンナーを投入、さらにゆで卵も入れる。で、ここで醤油とみりんを入れて、おでんらしくなってきた。

--

鍋の火を一旦止めて、米を研いでおいてから、僕は小説を持ち込んでお風呂など。ああ、これぞ主夫の生活じゃ。極楽極楽。

風呂から上がるともうそろそろニナの仕事も終わる頃。炊飯器のスイッチを入れ、最後に投入するはんぺんを切ってから、再び鍋を火にかける。ニナから「帰るよ〜」の電話があり、はんぺんも投入して火を止め、おでんは完成。パチパチパチ〜。

--

というわけで、ニナが帰ってくるとすぐにご飯タイム。おでんは今日ワイドショーで見た通りの、みようみまねで作ったんだけど、これがビックリするぐらい美味かった。大根なんてもう最高でしょう。わははは、また作ろう。

それにしても、僕は絶対サラリーマンやめて主夫(&家内作業的仕事=小説書き)をしている方が幸せな人生を送れるよな。改めて実感しちゃったなあ。早くそうなれるように日々努力だな。

ああ、早く来い来い主夫的創作活動生活(憧)。

--

阿部和重、「インディビジュアル・プロジェクション」読了(がっかり)。








 

Past/Takeshi Tachibana/Future


Reach Me

(c) T. Tachibana. All Rights Reserved. 無断転載を禁じます。tachiba@gol.com