書評

マラソンは超論理的スポーツだ! “非常識マラソンメソッド” by 岩本能史 [Book Review 2011-014]

スポンサーリンク

ブックレビュー2011年の14冊目は、岩本能史史著、「非常識マラソンメソッド」を読了。

 

非常識マラソンメソッド ヘビースモーカーの元キャバ嬢がたった9ヵ月で3時間13分!

岩本 能史 ソフトバンククリエイティブ 2010-10-18
売り上げランキング : 451

by ヨメレバ

 

 

現役ランナーとして超難関のギリシャ・スパルタスロンやアメリカのバッドウォーター・ウルトラマラソンなど、200kmを越える超・長距離走にチャレンジする一方で、”club MY☆STAR”というクラブチームを主宰し若手を育成する著者による、超実践的ランニング・メソッド。

今までもランニングに関する本は何冊か読んだが、本書は非常に論理的である。最小のトレーニングで最大の結果を出すメソッドと銘打っているだけのことはある。

「〜してください」という言葉のあどに必ず「何故なら〜」とその理由が書き添えられていることで言葉に信頼性が増す。従来読んできたランニング・メソッド本にはこの「何故なら〜」の部分が省略されているものが多かったので、本書はまさに目から鱗であった。

非常に論理的でかつ面白い本なのだが、一点困ってしまったのが、本書のタイトルにある「非常識な」という部分。

本書では、「他のマラソン本には○○と書いてあるが、本書では××することをお奨めする。何故ならば〜」という記載が多い。

例えば多くのランニング本に当たり前のように書かれている「ランニング初心者は厚底のシューズを履け」という指導。

こちらについて著者は、「初心者こそ薄い底のシューズを履け。何故なら厚底シューズは底が厚い分不安定であり、かつシューズが重い。重いシューズが不安定に移動するため、厚底シューズを履いて走ると膝を痛めやすい」となる。

さらに、著者自身が指導するクラブのメンバーが厚底シューズで膝を痛める人が多かった時に、薄底シューズを薦めたところ、たちまち膝の痛みが改善した、という実例まで出てきてしまうのだ。

著者岩本氏はトップアスリートだったわけでもないし大学のスポーツ学部の教授などでもない。一般の市民ランナーでありクラブチームの主宰者であるに過ぎない。

だからこそ、「多くの偉い人達は『厚底』と言っているが、実践の場では絶対『薄底』なんだ」という論調になり、タイトルも「非常識」となってしまうのだが、僕のようにこの手の本をあまり読み込んできていない人間が読むと、こういう論調で書かれてしまうと、すべてに対して「どっちが本当なの?」と確認したくなってしまう。

シューズの底の厚さだけではなく、あちこちに、従来の「常識」に対する「非常識」が理路整然としかも説得力たっぷりに書かれていて実に困る。身体に関することだけに、「非常識」を実践してケガをしたりしては大損だし、だが読んだ限りでは、岩本氏の論理がとても正しいように感じられるのだ。

これは岩本流を一つ一つ実践して試してみるしかないのだろうか。ケガのない範囲で。

だが、従来の手法を何でもかんでも否定することが本書の目的ではない。「常識」とされていることを岩本氏が正しいと判断した場合には、あっさりその方法を認めている。その点は安心できる。

本書は単なるランニング指導ではなく、フルマラソンを速く走りたい人向けの指南書である。著者が指導した中から、もっとも印象的だったクラブチームのメンバーアイさんは、本書のサブタイトル通り「ヘビースモーカーの元キャバ嬢がたった9ヶ月で3時間13分」でフル・マラソンを走り抜けている。

本書で提唱している「ビルドアップ走」や「峠走」は明らかにレース本番に向けての超実践的なトレーニング法だと感じるし、「マラソンは食べるスポーツだ」と書いているとおり、レース前やレース中の効果的な栄養補給方法についても非常に興味深い。

僕は3月20日に人生初のフルマラソンに出場する。今までは「完走」だけが目標だったが、本書を読んで、残り2ヶ月のトレーニングで「サブフォー」を目指そうかという気持ちになってきた。

岩本氏の教えに従って走れば、いつかサブスリーの扉が開くかも。そんな期待をさせてくれる本であった。あとは実践あるのみ。

タイトルとURLをコピーしました