マーケティング・ブランディング書評

フリー by クリス・アンダーソン 〜 無料の時代の新戦略を学ぶ [書評]

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ブックレビュー2010年の108冊目はクリス・アンダーソン氏著「フリー」を読了。

日本語版が出た当初からずいぶん話題になっていた本で、読みたいと思い図書館に予約を入れたのが2月。

半年以上かかってようやく手許にやってきた。すごい人気だ。

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フリー by クリス・アンダーソン 〜 無料の時代の新戦略を学ぶ [書評]

読んでみて非常に面白く、勉強になったのだが、不思議と「そうだったのか!?」的な驚きはなく、「ふーむなるほどやっぱりそうか」という印象が強かった。

恐らく僕がそういう印象を持ったのは、本書が取り上げているデジタルな世界のフリーのサービスや商品に僕自身がそれなりに深く関わっているためで、言葉として認識していないものの、フリーの世界の概略については掴んでいたためと思われる。

例えばこのブログを書いているCMS、Wordpressだって無料だ。

メールのやり取りはGmailを無料で使っているし、iPhoneアプリのウェザーニュースタッチも無料ならWebサービスのFoursquareだってEvernoteだってFlickrだってDropboxだって無料だ。

ブラウザのGoogle Chromeも無料ならブックマーク同期サービスのXmakrsも無料だ。

ネットとMacやPCを使いこなせば使いこなすほど我々は「フリー」と深くコミットすることになるわけで、意識せずとも日々「フリー」の利益を享受しているわけだが、やはりこうして体系立てて「フリー」の仕組みを学ぶことには意義があったと思うし、今後世界が向かう方向性が見えたという意味でも読んで良かったと思う。

コンピューター機器の性能が劇的に上がり、ストレージや通信にかかる費用が反比例して圧倒的に下がる結果として、デジタルな経済において全ての製品とサービスはフリーへと向かう。

この原則をきちんと理解しておくのとおかないのとでは、今後周辺でビジネスを行う人は進むべき道を間違いかねない。

音楽の世界にもフリーの波が劇的な速度で押し寄せた。

動向に敏感なミュージシャンは録音した音源をCDとして発売するのを止め、代わりに無料配信することを始めたりしている。

CDで売ればお金を得ることができたものを無料配信にする結果、アーティストは大きく知名度を上げ、コンサート動員を増やしたり関連グッズを販売することなどで成功する。

もちろんすべてのミュージシャンがその方法で成功しているわけではないし、今後も同様の方法を採れば必ず上手く行くという保障もない。

だが、デジタル化された音声ファイルは簡単にコピーしてネット上で配布することが出来るという事実は曲げようがなく、ファイルを格納するストレージも人とやりとりする通信コストも年々劇的に下がり続けている以上、デジタル音源の価値も限りなくゼロに近づくというのは自明の理なのだ。

無料で音源ファイルを入手でき、TwiterやFacebookを介して直接アーティストとコミュニケーションすることが可能となった時代だからこそ、アーティストは直接音源ファイルをファンに無料で配信して聴いてもらい、SNSで情報を共有することで、コンサートに足を運んでもらい、グッズを購入してもらうことが可能となる。

人々が音楽を求め、ミュージシャンが音楽を提供する限り、そこには共有できる価値観がある。

但し、中間に位置しているレコード会社や放送局の存在意義がなくなってしまう可能性は大いにあるのだが。

サービスの提供形態が変わるとそれに従事している人々の働く形も変わる。

DTPが出現するまであった「写植」という業務は既に過去のものとなり、フィルムカメラやアナログレコードの重要も大幅に減ったし、それに従事する人々の中には仕事がなくなってしまった人も多いだろう。

だが、それはいつの時代にも起こることなのだ。石炭から石油にエネルギーが移行すれば炭鉱労働者は仕事を失うし、全国の駅に自動改札が普及したことで出札係の駅員は大幅に人数が減っている。

フリーの時代がくれば、同じサービスを有料で提供していた人々はその価値を失うだろう。

だが、人々は何もかもが無料になるなどとは思っていない。

価値あるものにはお金を払い、デジタルの恩恵で限りなく価値がゼロに近づいたものがフリーへと移行するのだと理解している。

フリー時代には製品ではなく価値をいかに見出すかが生命線なのだと、改めて思い知った。

「フリー」のチェックはこちらからどうぞ!!

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