あなたの温もり 思うこと  不明編



1997年9月21日(日)


Deity / Ministry


人間は一度プライドを捨ててしまうとそこからはずるずると崩れ落ちていくだけでそこから這い上がるのは容易なことではない。


自らの許容範囲を確認し、常に自分よりも低いレベルの何かを眺めることにより自らの位置を確認し、さらなる深みへと滑り落ちていく。


泥沼から生還するためには自らの置かれている位置からの決別が必要であるが、完全な中毒状態に置かれた人間がその状態から決別するのには容易ならざる精神的苦痛を伴うものである。


波のように次々と襲いくる禁断症状に打ち勝つことが必要であり、さらにその禁断症状が収まった後にも常に再発を念頭に置いた精神的な葛藤を続けなければならない。


ある事象にのめり込んで行く際、一次的にその事象を楽しむことができる人間はまず中毒に陥ることはなく、何らかのストレスのはけ口としてや、トラウマを埋めるための二次的な何かとして事象にのめり込んでいく人間は容易に中毒状態にまでのめり込んでしまうことが多い。丁度酒好きはアル中にはならず、寂しさをまぎらわすためやストレスのはけ口として酒を飲む人間がアル中になるかのように。


中毒症状を呈す人間の多くは何らかの精神的な不安定要素を抱えており、潜在的に存在する不安定要素を根本的に取り除かない限り常に再発の可能性が高いことを認識しなければならない。


中毒症状の中には禁断症状の他にも、被害妄想や幻覚などの症状が挙げられるが、特に象徴的なのは、現実世界の中にある特定の幻覚が非常なリアリティを持って現れてくることにある。典型的な例としては、完全な現実世界の中に誰かが自分の悪口を言い続けていると言った症状や、刃物や銃砲等を持った人間が自分を殺しにくると言うような妄想を抱くことである。


中毒状態の人間には現実と幻覚の区分けが非常に困難であるため、周囲にいる人間からは全く理解のできない行動を延々と続けることがあるが、周囲の人間が中毒状態の人間に対する理解を示すことにより中毒状態の人間は幾分の安定状態に入ることになる。しかし、その状態はあくまでも一時的な安定期であり、周期的な妄想状態はやがて激しい躁鬱症状へと推移し、症状を抑える為に投与される三環系坑鬱剤の副作用として一定周期の喪失状態が現れるようになる。


一定期間躁鬱状態と喪失状態を繰り返した後、中毒症状を呈した人間は回復基調に入る者と半永久的に続く深い鬱状態に突入するものに大別される。回復に向かう人間は幻覚や幻聴から徐々に解放され中毒症状も軽減していくが、鬱状態に突入した人間は意識のある状態においては継続的に被害妄想的な幻覚と幻聴に嘖まれ続け、ドーパミン分泌異常に伴う自律神経の失調により極端な凶暴性を示すことや異常性向を現すこともある。


いずれにしてもこのような中毒状態の人間に対しては徹底した初期治療が重要であり、中毒症状に至る過程における問題要素を速やかに取り除き精神を解放することが不可避であると同時に、中毒の対象となる事物(酒、薬物、麻薬、日記etc)からできるだけ遠ざけることが必要である。





Swimsuit Issue / Sonic Youth


僕は弱い人間である。そのことは重々承知している。


脆弱な存在である自分自身を守るために、僕は常に薄い膜が自らを覆い、誰も僕を傷つけないように武装している。


自らを守る為になら名前も捨てよう、地位も捨てよう、日記名だって捨てても構わない。


キーボードとモニタから離れている間、僕はごくありふれた社会的地位を持つ人間として全うに生活している。


しかし、CPUがハードディスクにアクセスする音とモニタが放つ電磁波を浴びた瞬間に僕の知性も感覚も完全に麻痺してしまい、


僕は完全なトランス状態に突入する。


キーボードを打ち続ける僕の指はまるで革命広場でマスゲームを踊り続ける幼児達のように従順であり、


モニタに次々と表示されていく文章は僕を完全なる陶酔状態へと誘う。


この瞬間だけ、僕は全てのコンプレックスから解放されることができる。


この瞬間には、僕は全ての人間を超えることができる。


この瞬間には、誰も僕をバカにすることはできない。


そう、この世界では、僕は独裁者になることができる。


僕のこの世界を邪魔する人間は、一人残らず惨殺してやる、


そう、この従順な、愛しい自分の世界の中で。






注:この文章は僕の妄想であるが、僕自身のことを書いたものではない、念のため。




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