あなたの温もり 思うこと  不明編



1997年12月8日(月)


Magical Mystery Tour / The Beatles


Give Peace a Chance!。

そう、今日はJohn Lennonの命日だ。

僕はBeatlesもJohn Lennonもリアルタイムで聴いたことはない。僕が中学2年生の時、John Lennonの未発表作の「Milk and Honey」が発表されて、ビルボードの上の方にいたのをリアルタイムで知っていたぐらいのもので、彼は僕がまだ分別もつかない小学生で、仮面ライダーだのマカロニほうれん荘だのEF58だのケードロだのに夢中になって、夕方暗くなると口裂け女が出るぞという噂に怯えている頃、自宅の前で狂信的なファンの銃弾に倒れてしまった。

BeatlesとJohnだけではない。僕はDoorsもJanis JoplinもJohn ColtraneもT-RexもVelvet Undergoundも、Sid Viciousさえもリアルタイムでは知らないし、日米安保闘争も全共闘も連合赤軍もよど号事件も、中東戦争もキューバ危機もベトナム戦争も文化大革命も、モンタレーもウッドストックも、マリファナもコカインもLSDも、かぐや姫も赤い鳥もジャックスも、何もリアルで経験していない。

それは本当に残念なことだ。

今日、村上春樹のエッセイを読んでいたら、Jim Morrison以外が唄うLight My Fireには、肉の匂いがしない、というようなことが書いてあった。確かにJimの声には野生の雄叫びを彷彿とさせるものがあると思うが、それ以外に村上春樹の文章からは、リアルタイムで経験したものにしか分からない何かがある、という主旨のものを僕は感じた。

僕が生まれたのは60年代の一番後ろの方で、丁度その頃若かった人達が経験したリアルな現象というものは、僕が彼らの年齢に追い付いた80年代後半とは明らかに異なるものだ。

僕達に与えられた80年代後半という時代には、街にはヒューマンリーグだのカルチャークラブだのデュランデュランだのバナナラマなんて連中が幅を利かせていて、それからちょっとすると今度はボビーブラウンだのM.C.ハマーだのバニラアイスだの、カイリーミノーグだのボンジョビだのニューキッズオンザブロックだの、そんなものが溢れていて、世界は多大な犠牲を払った戦争後の再生に伴う勢いを既に失い、徐々に世紀末へと続く退廃的な空気に包まれようとしていて、多様化という名のもとに人々は進むべき方向を見失い、カリスマという言葉は死語になっていた。僕はバイトで稼いだお金で一生懸命Bronski BeatだのFalcoだのTime X Social Clubだのといった連中のレコードを買い込んでは、満たされないままの心を冷やそうと必死になって何度も無機質なリズムマシーンの音に身を任せようとしては失敗していた。

熱を帯びたJohn Lennonの声や、暗闇へと僕達を引きずり込むようなJim Morrisonの声を、もしリアルタイムで聴くことができたら、というよりも、僕を陶酔させ夢を見させてくれるようなカリスマ的なヒーローがもし僕の10代最後の頃に存在していたなら、トラウマを抱えきれないほど溜め込んだ破滅主義者の無軌道で刹那的で暴力的な存在の具現化としての自己表現に人々が陶酔した時代がもし僕の目前にあったのなら。。。

ふとそんなことを感じ、つくづくJohnの生きた時代とその時代を作り上げた人々の存在に対して、敬意を表したくなった。ま、僕も一応69年生まれだから、一応参加はしてたんだけどね、ぎりぎりで。




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