Hey Lula / Yutaka Fukuoka
漆黒の闇の中で耳を澄ませば、
そこには永遠に続く静かな潮騒の音と、
とどまることを知らぬ心の震えが、
突き刺すような冷たい北西の偏西風に乗り、
僕へと届く。
瞳を閉じると塗りこめたような暗闇が、
僅かに暖められるように、
瞼の内側に血液の流れを感じる。
冷たい風に誘われるように、
細かい砂の粒が舞い上がり、
僕の頬に当たっては、あてもなく飛び去っていく。
乾いて硬直した皮膚に砂塵が触れるたびに、
僕の心の中の柔らかい部分に傷がついていき、
僕の心は静かに黒い涙を流し始める。
きつく閉じた瞳の裏側に銀色の閃光が現れたとき、
僕は両手を高く掲げ体を痙攣させる。
砂粒が頬に当たるたびに僕の瞳の裏側に銀色の塵のような光が舞い、
微かな光はやがて断続的な明滅へと変化していく。
乾いた唇が開き僕は両手を広げたまま、
僕は漆黒の海へと歩き始める。
流砂が足元を擽りながら通り過ぎ、
銀色の砂に混じってやがて静かな雪が舞い始める。
銀色の砂と雪の結晶が僕の瞳の裏側で強く輝いた瞬間に、
僕は大きく目を開き、
間近に迫る黒い海を見つめた。
厚く重苦しい黒い雲が突如として切れ、
眩い白金の月が僕と海を照らし出した時、
砂粒と雪と海と僕は暗闇の中で無数の銀色の結晶となり、
僕と僕の心が彷徨う世界を無数の閃きの中に包み込み、
螢の群れのように舞い続ける砂と雪の結晶が、
冬の海を銀色の世界へと導いていく。
僕は冷たく湿った海の風を受けながら、
涙を流し銀色に輝く砂浜に跪き、
体を震わせて思い切り泣いた。
僕の頬を伝う涙も、
冷たく輝く銀色に染まり、
やがて僕の体から震えが消える頃、
空を厚く覆う雲は去り、
満天の星の儚い光が僕を温めていた。
僕は体を丸め涙を流したまま、
銀色の世界の中で子供のように眠りに落ちた。
遠のく意識の中、
静かな潮騒だけがずっと僕の耳に届いていた。
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