People Get Ready / Rod Stewart featuring Jeff Beck

もちろん「ファッショな居酒屋」にはきとんとした名前がある。いくら吉祥寺を歩き回ってもらっても「ファッショな居酒屋」という看板を見つけることはできない。

でも僕とニナにとっては「ファッショな居酒屋」はあくまでも「ファッショな居酒屋」であり、そのファッショさ加減がなんとも心地良いのだ。だから僕達は普段は絶対に行列に並んだりしないのに、ファッショな十河君がおごってくれた缶ビールを握り締めて雨の中を一時間も待ってしまったりするのだ。

僕の言いたいのは、ここは最高の店だということだ。

「ファッショな居酒屋」の何が最高かというと、まず店の雰囲気がすごく良い。ミステリアスな外観もその一つ。人通りの少ない路地にポツンとあるその店は、まるで一見の客を寄せ付けないかのような凄みさえ漂っているのだが、店の中に入ると何ともひなびていて、それでいて暖かみがある内装が僕達を迎えてくれる。明るすぎず暗すぎず、何とも心地よい感じだ。

続いての魅力は、料理が物凄く美味いということ。吉祥寺には他にも美味しい店はたくさんあるが、やはり「ファッショな居酒屋」の料理が一番だと思う。気取った料理はないが、どこにでもあるようなメニューはなく、どれも一捻りが加えられていて、何とも素晴らしい。「湯葉春巻」や蒸したてのパンと一緒に食べる「角煮」は絶品。

そしてこの店のもう一つの魅力は、店員の応対で絶対に嫌な思いをさせられないこと。店内には店員の男性がいつも4、5人いるのだが、彼らはそのイケイケなルックスとは正反対に、絶対的に、圧倒的に親切で、丁寧に僕達に接してくれる。どんなに忙しくても嫌な顔一つせず、料理や飲み物を運んでくる時にも必ず笑顔と共に丁寧に応対してくれる。マニュアル通りのガチガチの慇懃無礼さを見せ付ける店が多い中、フランクで我流に崩しているのにとっても暖かいサービスを提供してくれる店、今どきこんな居酒屋は他にない。

思い切り黒人顔の十河君や金髪のロンドンブーツ1号君を始め、店員さん達の髪形や髭はド派手なのだが、彼らが真剣に接客してくれるのが何よりも心地よくて、僕達は週末になると彼らの店へと脚を運ぶ。

いつまでも彼らの笑顔とともに繁盛した店であってくれるといいなあ、などと思いつつ、今日もオナカ一杯いい気分で帰ってきた。

「ファッショな居酒屋」万歳！