窓は思い切り結露していて、部屋の中にいても何となくひんやりとしている。外に出れば吐息は真っ白に濁り、細かい雨粒に打たれながら散り散りに飛び去っていく。そんな中を、重くて分厚いコートを着込み、黒くて大きなこうもり傘を差して歩くのは悪くない。艶やかに黒く光るアスファルトの上には黄色や茶色や赤に変色した落葉が雨に濡れ、つるつると滑るように折り重なっている。
子供のころは、冬の雨だけに限らず、夏の雨も秋の雨も春の雨も好きだったような気がする。というよりは、気象の変化に対する耐性が今よりも強かったのか、それとも単にそこまで気が回っていなくて、天気よりも晩ご飯のおかずとか、7時からのアニメとか、そんなものが一番大切だったのかも知れない。どっちにしても今よりは天気だの気温だの湿度だのといったことに対してブツブツと文句を言っていなかったような気がする。
子供のころ、というよりは、つい数年前までは、東京に雪が降るとか、東京に台風が直撃などと言うと、嬉しくてしょうがなかった。アスファルトに静かに降り積もる新雪の上を歩くためだけに夜中までじっと起きていて、コートを着て手袋をはめて、深夜の六本木の街の風景を見るために外出したりした。大通りの車道にはそれほど雪は積もらないが、一本裏の路地に入ると一面の雪景色で、都会の重くて水っぽい雪を踏み締めながら歩き回り、自動販売機で熱い缶コーヒーを買って、両手で包むようにしながら飲むのが楽しかった。横殴りに降り続く台風の雨の中、わざわざ用もないのに歩き回るなんてのは、しょっちゅうだった。
大人になると、どうしても物事を合理的に考え過ぎてしまう。雪が降れば会社の往復が大変だな、とか、台風がくれば、営業で外に出たくないな、とか、そんなことばかりだ。外的要因によって自分自身の行動に責任を持たされているということも確かにあるとは思うが、それ以上に自分自身が気象の変化に接するだけの余裕を失ってしまっているような気がする。
無邪気であるという言葉、大人になると何かと皮肉を込めて言われがちだが、休みの日ぐらいは無邪気に過ごしたいな、などということをぼんやりと考えていた。
冬の雨は、やっぱり好きだな。
Afro Blue / John Coltrane Quartet
冬の雨は好きだ。
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