あなたの温もり 思うこと  不明編



1997年11月27日(木)


Synchronicity I / Police


今日はちょっとのろけ話。

もう皆さんご存知だとは思うけど、僕の彼女はニナという娘である。ニナというのは本名ではない。インターネット上に登場する時だけニナと呼んでいる。念のために書いておくが、Age37という日記を書かれているNINAさんとは何の関係もない。ニナはまだ20代前半だ。どうして僕が日記上で偽名で彼女を呼ぶかというと、彼女もインターネット日記を書いているためで、お互いの自由なネット上での活動の妨げになると詰まらないから。

ニナとは去年の夏にインターネット日記を通して知り合い、秋から付合うようになった。だから僕達は一年と数カ月は恋人同士として過ごしているが、大したケンカもなく、結構仲良くやっている。

実はこれは僕にとってはとても目新しいことなのだ。何が目新しいかというと、これまで僕は女性と付合っても、一年以上続いたことがなかったからだ。すごくうまくいっていた彼女とも、つきあってるんだかつきあってないんだか分からないような相手もいたが、誰とも一年以上仲良く一緒にいることができたことがなかった。

これは僕に女性を見る目がなかった、ということではなくて、僕の性格に大分問題があったように思う。

今でこそべらべら喋ってしょっちゅうオフなんぞにも参加したり主催したりしているが、僕はずっととっても警戒心が強くて誰にも心を開かない、内気な青年だったのだ。彼女を作るという行為は結構勢いでなんとかなってしまうのだけれども、それを維持していくことができないのだ。それは何故か。僕が女の子に心を開いていなかったからだ。

自分に恋人ができると、僕は常に二つの疑問を感じ続けながら彼女達とつきあっていた。一つは「自分は本当に愛されているのだろうか」というもので、もう一つは「自分は本当に相手を愛しているのだろうか」というもの。もちろん付合っている相手が変われば僕と相手の想いのバランスのようなものが違うから、その時々でどっちを考えている度合いが強いかというのは異なるのだけれども、僕は基本的にいつも自分の恋人に対して全面的に心を開くことができなかった。

単に付合っている相手に心を開かずに突き放している分にはそれほど問題はないのかも知れないのだが、僕の場合そこまでタフじゃなかったから、自分は心を開いてないくせに、相手からは浴びる程の愛情を注いで貰いたいという邪心を常に抱き続けていた。相手がどれぐらい開けっ広げに愛情を示してくれるかを常に確認していないと自分自身が安心して存在することができなかった。さらにそれに付け加えて、僕は幼い頃から異様な寂しがり屋で、潜在的には相手に徹底的に甘えまくりたいという強烈な欲求を持っていた。それは欲求というよりも、「乾き」とでも呼んだほうが正しいのかも知れない。

まあ、僕の心理状態はざっと今まで書いたみたいな感じなんだけれども、僕はこういった心の動きをもちろん相手に知られたくないから、仏頂面で相手と接することになる。妙にプライドも高かったから、相手に素直に甘えることもできず、相手からは「立花君て、何考えてるのか全然分からない」だの、「立花君て、すごく冷たいよね」だのと言われていたのだが、内心は怯えと焦燥と嫉妬と欲望とその他もろもろのものがグチャグチャになって渦巻いていて縺れあっていて、自分ではどうやって表現して良いのかが分からなかったのだ。

そんなことを心の中でぐるぐるやりながらドライブしたり旅行に行ったりセックスしたりしている訳だから、これはなかなか僕としても疲れるのである。常に芝居を無意識のうちに続けているみたいなものだから、相手が誰であれ、いつかは演じ続けることに疲れてしまうのだ。

そして崩壊がやってくる。崩壊のパターンははっきりと二通りだ。相手が違ってもシチュエーションが違っても、本当に型にはめたように二つのパターンに分類することができる。

その1:僕がいきなりふられる。そう、何の前触れもなく、というかホントは相手も何となくシグナルは出しているのだけれども、僕は自分の演技に一生懸命で気付かないだけなんだろうけれども、とりあえずは何の前触れもなく、相手が僕のもとを去って行く。更に相手は確実に別の男に乗り換えている。去年の春から夏にかけてつきあってたみねちゃんの時がこのパターン。青天の霹靂を絵に描いたようなものだ。

その2:僕がいきなり相手を捨てる。これは「その1」の逆。ほぼ確実に僕は誰か別の相手に乗り換えている。当然のことながら僕は相手と別れる前から別の女性と親交を深めていたり深めたいと思っていたり、何らかの前兆があるから、「その1」の場合も、当然相手は僕に別れ話を切りだしてくる前から、何かしらの行動を起こしていると僕は信じている。

ほぼ100パーセントの確率で、その1の場合には僕の方が相手に惚れ込んでいて、その2の場合には相手が僕に惚れ込んでいる。相手に惚れているとどうしても「嫌われたくない」という心理状態に陥るので、元来自分の存在自体に自信を持っていなかった僕などはとにかく疑心暗鬼の塊になってしまうのだが、それを素直に表現することができなくて、ただひたすら嫉妬と猜疑心を隠しながら無関心を装うのだ。暗い。

「その2」のケースは、僕があまり相手に惚れ込んでいない場合。相手が素直に僕に愛情表現をしてくれることによって僕はひどく満足するのだが、その満足感は長続きしないのだ。だいたいすぐに僕は相手が従順であることに飽きる。自分にはもっと自分にぴったりと合った女性がいるのではないか、などとすぐに思い始め、さらにちょっと良さ気な娘がいるとすぐに行動に移す。ひどい男だ。

だいたいのパターンとしては、その1(ふられる)→独りでいることに耐えられなくなって適当な相手と付合う→飽きる→すごく好きな女の子に乗り換える→その2(それまでつきあっていた相手をふる)→惚れてしまって自分の立場を弱くする→自信を持てずオロオロする→飽きられる→その1(ふられる)、というパターンを繰り返していた。うーん、こうやって書いてみると、実にくだらない青春だ。

そんなこんなでずっと続けて、もういい加減恋愛なんてイヤになった頃にふっとニナが僕の前に現れた。

ニナが僕に最初に与えてくれたものは、絶大なる安心感だった。普通だとここで僕は「その2」のパターンに入り込んでしまうところなのだが、彼女は僕に安心感と同時に確固たる「自分」というものを示してきた。僕はそれまでニナほど自分のスタイルを持っている女性とつきあったことがなかったので、最初はすごく新鮮だったのだが、やがてニナが僕に自分のスタイルを示してくれることによって僕も自分をさらけ出す勇気を持ったような気がする。

そんな感じでつきあい始めてから、一年以上経ってもまだ仲良くやっていられる最大の理由は、僕が彼女を尊敬して、恐らく彼女も僕のことをある程度認めてくれているからだと思う。もちろんお互いのスタイルをもろにぶつけながら生活しているので、細かいケンカはしょっちゅう発生しているが、基本的に相手の存在と考え方をお互いに認めあっているからこれだけ濃い二人でもうまくやっていけているんだろう。

多分世の中の夫婦や恋人同士の殆どはそんなこと当たり前のようにしているのかも知れないんだけど、僕としてはようやく信頼できるパートナーと知り合えたって感じで、ニナには大変感謝している。

でも、やはり今充実するには、これまでのうまくいかなかった恋の積み重ねがあったからこそと思うと、何となく感慨深いような気もする。

以上、のろけ話、終わり。最後まで読んでくれた皆さま、ありがとうございました。




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