「セルフ・ブランディング」、「バーソナル・ブランディング」という言葉をずいぶん良く耳にするようになった。
「セルフ・ブランディング」とは、直訳すれば、「自分のブランド化」、「自分の商品価値向上」と言ったところだろうか。
この言葉が生まれた背景を知っている人もいれば知らない人もいるだろう。
本書「Facebook X Twitterで実践するセルフブランディング」は、知識を既に持つが具体的にどうしたら分からないという人、そしてこれから践してみたいという人向けの、自分ブランド向上術を教示してくれる。
Facebook×Twitterで実践するセルフブランディング
倉下 忠憲 ソシム 2011-05-30
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「無名の有名人」の時代。
何故いまセルフ・ブランディングが必要なのだろうか。
そこには幾つもの側面が複雑に入り交じっているが、単純化すれば、以下の2つの要素の組み合わせと言えるだろう。
一つは、「高速インターネットとSNSの普及に伴うマスメディアの弱体化」である。
テレビ、新聞、雑誌といった大規模なメディアの影響力が弱まった背景には、人々がインターネット上で自由に発言し、記事を引用できるようになったことが大きい。
そしてもう一つは「資本主義の加速による企業寿命の短命化」。
これはドラッカーも予言し、実際日本でも山一証券や日本航空など、絶対潰れないと思われていた企業が倒産する時代となっていることからも理解できるだろう。
マスメディア全盛の時代には、国民的ヒーローが次々生まれた。
ピンクレディー、王貞治、マドンナ、マイケル・ジャクソンなどなど。
人々は多くても6つくらいしかないテレビのチャンネルの中から好きな番組を選び、駅前の小さな書店に在庫がある定番雑誌を買い、そしてその雑誌に乗っている歌手のレコードを買った。
書店もレコード店も店は小さく、棚は限られていた。だから僕たちは、限られた棚の中にある在庫からしか、選択肢を得ることができなかった。
だが、ブロードバンド接続により、僕たちの生活は大きく変化した。
買い物はオンラインで出きる。店の棚は無限に増やせる。マドンナやマイケルを選ばなくても、もっと自分にぴったりな曲をどんどん探していくことができるようになった。
そしてその曲を好きな人同士が繋がって、直接アーティストとSNS経由で連絡を取り合ったり、ライブの前後にファン・イベントを開催したりもできるようになった。
1,000万人のファンを擁するスーパースターは登場しにくくなり、代わりに数は少ないが熱狂的なファンを持つ、「無名の有名人」が次々生まれ、指示される時代がやってきたのだ。
「弱い絆」を繋げ
そしてインターネットの高速化は企業にも大きな影響を与えた。
情報は24時間365日、光の速さで世界を駆け抜け、「グローバル化」をもたらしてしまった。
「グローバル化」。言葉はカッコいいが、要は物価が高い先進国に、物価が安い新興国の商品やサービスが大量に流入し、先進国の商品が売れにくくなることを差している。
従って、物価が高く人件費も割高になる先進国では、単純労働を生業とする企業は生き残っていくことができない。
日本航空の破綻には複雑な要因があるが、一番の原因はコスト高で料金競争に負けたということになる。ただ空を飛ぶだけなら、コスト競争になってしまい、新興国の割安会社に負けてしまうのだ。
企業の寿命が短くなると、僕たちは、たとえ今勤めている会社が潰れても生き残っていけるよう、武装しなければならない。
つまり、いつでも履歴書の内容をブラッシュアップしておく必要が生じるのだ。
そして、調査によると、人々は次の職を探す時に、遠い知り合いからの助けを利用することが多いのだ。
「そういえばあの人はこんなことを得意にしていたはずだ」程度の繋がりが、紹介を呼ぶ。
濃い人間関係同士で職の斡旋などをすると、うまくまとまらなかったり、入社後にトラブルがあったりした際のリスクが大きくなるので、人々は躊躇する傾向にあるそうだ。
だからこそ、僕たちは、「ちょっとした知り合い」程度の人達に、自分がどのような人間で、何を得意としているのかを、分かりやすく提示し、いつも最新の状態にしておく必要があるのだ。
「弱い絆」が必要な時代なのだ。
セルフ・ブランディング5原則と3つの要素
本書では、セルフ・ブランディングの原則を5つにまとめている。
- 自分で行う
- 継続する
- 嘘はつかない
- 短期的な効果を求めない
- 自分だけを目立たせない
如何だろうか。詳しくは本書を読んでもらいたいのだが、セルフ・ブランディングとは、とても地味でしかも効果に時間のかかる、どちらかと言えばカッコ悪い作業なのだ。
コツコツと毎日、自分が他人からどのように見えるかを調査して、カッコ悪い部分をひっそりと直していく。
しかも「嘘はつかない」ことが重要なので、不人気な自分を見つけたら、なぜなのかを自分に向き合って解決しなければならない。
「ブランド」というと、華やかなイメージがあるかもしれないが、実は地道な作業だということが良く分かる。
次に、著者の倉下さんはセルフ・ブランディングを3つの要素に分解している。以下の通りだ。
- 何をしてきたのか
- 今何をしているのか・何ができるのか
- これからどうしたいのか・何がしたいのか
ブランディングは自己満足で終わってはいけない。
相手が自分を見た時に、どのような点に魅力を感じてくれるのかを客観的に予測して戦略を立てる必要がある。
つまり、誰に「この人と一緒に仕事をしたい」、「この人なら仕事を任せられそうだ」と思って欲しいのかを、きちんと考える必要があるということだ。
もちろん、嘘を書いて自分の経歴やスキルを偽ることは絶対してはならない。
SNSは公開されてこそその真価を発揮するわけで、公の場で嘘をついたことがバレれば、あなたの信頼性は大きく傷つき、ブランディングどころの話ではなくなってしまう。
まとめ
本書後半では、大きくページを割いて、TwitterとFacebookをセルフ・ブランディングに具体的にどのように活用するかをレクチャーしてくれる。
Twitter、Facebook、そしてブログ、それぞれが異なる特性を持つメディアであり、活用法も大きく異なっている。
正しく実践することで、あなたの自分ブランド力は確実に上がり、その都度、あなたの人生は、今までよりも少しだけ生きやすくなっているかもしれない。
効果が出るかどうかは、誰も約束はできない。ブランディングするのは、あなたの経歴であり現在であり、未来だからだ。
だが、何もしなければ今と変わらないことだけは間違いない。
もし危機感や興味を持ったなら、是非実践してみて欲しい。
著者倉下氏自身がこの本に書いたことを実践してきたのだ。間違いない。
Facebook×Twitterで実践するセルフブランディング
倉下 忠憲 ソシム 2011-05-30
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2011年の81冊目の書評としてお送りしました。
著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。