怒りの鉄拳 思うこと  激情編



1998年1月30日(金)


ヒマワリ / UA


不快だ。

今日、シャチョウとブチョウは出張で留守。僕は久し振りに机の周りの掃除をしたり、ファイリングをやり直したりと、比較的のんびりと過ごした。

午後になってぽつりぽつりと仕事の依頼が入り、それを片付けるともう夕方。

5時半の定時を過ぎて、社員は皆帰っていく。僕と部下のスギモト君だけが残っていた。そこにシャチョウとブチョウが帰ってきた。二人とも赤い顔をしている。酒臭い。帰りの電車の中で大分飲んで帰ってきたようだ。

二人は戻ってきていきないある顧客の悪口を言い始める。そのお客さんは今回の二人の出張とは全く関係がなく、スギモト君が飛び込みの営業をして取ってきた、一回目の仕事なのだが、仕上がった翻訳に対してクレームが入ったことが気に入らなかったらしく、ブチョウなどは「こんな客の仕事なんかもういらん」などと息巻いたりしている。シャチョウはシャチョウで、「もうこの仕事はやめて欲しい」などと言っている。

冗談じゃない。営業がどんな思いをして新規開拓をしているのかあんたらは知ってるのか。自分がチェックした翻訳に若い女性がクレームつけてきたからって、「もういらない」なんて言われたら、営業なんてやってられない。スギモト君がどんな思いをしてあんたらの酔狂を聞いてたと思ってんだよ。

営業が必死に歩き回って取ってきた仕事、それをきちんとお客さんが納得するように納品まで持っていくのが制作の仕事だろうが。バカタレオヤヂの首を切ってからは、ブチョウとシャチョウが制作の責任者だろうが。あんたらがチェックした翻訳にクレームがついた途端、「こんな客なんてもういらん」じゃ、どんな仕事もとれないよ、ホントに。昼から酒飲んでフラフラ帰ってきて、気持ち良く週末を迎えようとしてる僕やスギモト君を不快のどん底に落として何が楽しいってんだよ。

スギモト君は逃げるように帰っていった。可哀相に。せっかく飛び込みの営業で取ってきた新規のお客さんの最初の仕事だったのに。最初の仕事としてはすごく規模の大きい仕事だったのに。

「こんなちっぽけな会社なんて相手にするな」とブチョウは言う。でもさ、あんた何も分かってないよ。あんたが言う「ちっぽけな会社」って、ウチの会社の50倍ぐらいの社員がいるんだけどね。数も数えられないのかね。

頭に血が上り、ブチョウに食ってかかっているところで、シャチョウに会議室に呼ばれた。嫌な予感がした。そして、そういう時の予感て、必ず当たる。



Wild Thing / Jimi Hendrix Experienced


僕はシャチョウに呼ばれて会議室に入った。酒臭い息が会議室に篭るので、僕は窓を開ける。

シャチョウの言いたいことは、制作の一人の女性の仕事の質が良くない、だから首にする、ということ、簡単に言えば。

それをどうして僕に言うんだ。彼女は僕の部下ではない。僕には彼女の仕事を管理する責任もないし、実際彼女の仕事の内容を僕は把握していない。それを、金曜日の定時後にどうして僕を会議室に呼んで言うんだ。僕には全然理解できない。

「立花に彼女を管理する権限と責任を与えるから彼女を何とかしろ」と言うなら話はわかる。でもそうじゃない。シャチョウは僕に何の権限も与えないで、ただ僕に愚痴を言っているのだ。彼女の能力を引き出せないのはブチョウとシャチョウの責任だ。自分たちの手に負えないから首にする、何てことだ。信じられない。

彼女は確かに要領は良くないと思う。失敗は良くするし、ケアレスミスも多いかも知れない。でも、大企業の窓際じゃないんだ。彼女はちゃんと仕事を回していて、3人しかいない制作の仕事の1/3をこなしているんだ。それをどうして「切る」なんてことが言えるんだろう。

人を殺した訳でもないし、会社の金を着服した訳でもない。役にたたなくなって窓際で新聞読んで過ごしているのでもない。ただ、ちょっと他の人より要領が悪いだけだ。本人はすごく一生懸命やってる。そして結果も残してる。シャチョウとブチョウは夜に飲み屋で酔っ払いながら、客観的事実に基づかない、完全に感情的なレベルでお互いに勝手な妄想を膨らませて、彼女を完全な悪者に仕立て上げている。

ミスが多いなら、それを注意すればいいじゃないか。それをムッツリと黙って見ていて、叱ることもせず、酒飲みながら勝手に「ダメだ」という烙印なんか押されたら、まったくやってられない。

あんまり頭にきたので、思わず「僕が彼女の面倒をみます」と言ってしまった。「間に入ります」と言ってしまった。

僕はホントは近い将来に会社を辞めようと思っている。だからホントは今以上に責任が重い仕事に足を突っ込みたくないのだけれど、このままシャチョウとブチョウの客観的事実に基づかない勝手な妄想により彼女が首になってしまってはあまりにしのびないので、とりあえずは両側から話を聞いて、お互いの言い分を伝えて、という仕事が僕のタスクに加わった。

でも、僕も本気で今のカイシャに嫌気がさしてきた。自分が面接して自分が育てて自分の管轄にある部下が育たないことを、責任転嫁するような経営者なんて、何の魅力も感じない。

とにかく僕は、絶対に彼女をクビになんてさせない。




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