思うこと



1998年2月19日(木)


Supermodel Sandwich / Terence Trent D'arby


最近一日一冊近いペースで本を読んでいる。

こんなに読書パワーが高まっているのは久し振りだな、というか、生まれて初めてかも知れないな。通勤電車の中や仕事での移動中に本を読むのは時間の有効活用という面から考えてもすごく良いことなのかも知れないんだけど、ストーリーにのめり込み過ぎてしまってその後ぼんやりとしてしまうこと。

村上龍だの中上健次だのという結構過激な人達のものを営業の移動中に読み耽ってしまったりすると、その後でお客さんと会って話をしているときにも何となく呆然としてしまっていて、時々意識が飛びそうになってしまったりして(笑)。いや、笑いごとではない。

あんまり気合を入れないようになんて思っても、面白い話にはついついのめり込んでしまうので致し方が無い。



Dance Little Sister / Terence Trent D'arby


今日読み終わった本で、「人間・失格」というものがある。大宰じゃない。野島伸司という売れっ子の脚本家が書いたもの。僕はテレビドラマは100%観ないので、この本を買ったときにはこの小説がドラマのノヴェライゼーションだということを知らなかった。内容は学校のイジメに耐えきれずに自殺した少年の父親が子供を追い詰めた人々に復讐して行くというもので、凄惨なイジメの現場がリアルに描かれていてどっぷりとのめり込んだ。だが、全文読み終えて解説を読んでいて、これがドラマになっていたと知らされて、ちょっと考えさせられてしまった。

子供達のイジメがどんどん陰湿になりエスカレートし、実際に自殺をする子供が出たり様々な精神的な障害を持つに至る子供達がいるという現実を認識し、その惨状を極力リアルに伝えたいという欲求を持つという行為自体は小説であろうがテレビであろうが同じなのかも知れない。ただ、小説とテレビではメディアとして明らかに性質が異なっていて、小説で書かれて何も問題にならないようなものでもテレビドラマにされてしまうことによって思いも寄らない問題が発生するのではないだろうか。

いくつか気になったことがあるのだが、一つはメディアの性質の違いということ。

小説というのは、こちらから積極的に参加しようと努力しなければ自分の中に入ってくることのないメディアだ。本屋や図書館に行って手に取り、本を開き、活字を追わなければ自分の中に入ってこない。「読もう」という積極的アプローチがなければならない上に、膨大な数の書籍の中から何を読むかを自分で選択しなければならない。更に読み始めた後も自分の想像力を働かせて、活字を自分の中で映像に変換していかなければならない。

しかしテレビというのは非常に受身なメディアだと僕は思う。何も努力をしなくても簡単に体の中に入ってくる。電源を入れてリモコンでチャンネルを選ぶだけで、後は何の努力をしなくても勝手に映像と音が飛び込んでくる。想像力は全く必要ない。とにかく寝転がって眺めているだけで良いのだから。

イジメという、非常にデリケートな内容を扱っていても、それが小説として本屋に並んでいるか、テレビのドラマとして放映されるかでは、その内容を受け入れる人間達の層が大きく異なってくるのではないだろうか。

もちろん例外はいくらでもあるだろうけれども、毎日小説を読んでいる中学生と毎日テレビドラマを観ている中学生の数は、比べ物にならないぐらい違うと僕は思う。本屋でこの本を見つけて手に取り、小遣いで買って読もうと思う中学生はごく稀であり、逆に殆どの中学生はこの作品をゴールデンタイムに放映されるテレビドラマという形式で受け入れたのだと思う。

そして、高いレベルでストレスを受け続けている現代の子供達が、この「人間・失格」という作品を小説ではなくドラマという形式で受け入れることは、非常に危険なことではないのだろうか。

中学生がテレビドラマで木村拓哉が使っていたバタフライナイフを持ち歩いて人を刺す事件が多発しているが、それと同じで、作者がたとえどんなに崇高なメッセージをちりばめていたとしても、それが受け身系メディアであるテレビによって伝えられることにより、子供達は作品自体が持つメッセージというものよりも、単に目を引く場面やルックスにばかり目が行ってしまい、作品の持つメッセージ(があると仮定しても)が霞んでしまうような気がしてならない。イジメという問題を正面から捉えようという気持ちを喚起させるよりは、より具体的な映像という形で、今まで思い付かなかった「もっと凄いイジメのスタイル」のようなものを受け入れてしまったのではないだろうか。

二つめの気になったことは一つ目とも関係してくるのだが、ドラマに出演しているキャストが、いわゆる売れ筋で固められているということだ。売れ筋の人が出てるドラマが悪質だと決め付けるつもりは毛頭ないんだけど、注射器で血を抜こうとしたりすうるような凄惨なイジメのシーンをジャニーズ系の若者にやらせるというのはちょっとどうかな、と思ってしまう。

もし本当にイジメの本質を深くえぐって凄惨さを伝えたいならば、もう少し配慮のあるキャスティングがあっても良いのではないだろうか。

「101回目のプロポーズ」、「一つ屋根の下で」、「高校教師」、「家なき子」。これらの作品を配してきた作者が果たして本当にイジメという非常に根深く陰湿な問題を正視しようとしてこの作品を書いたのか、僕はちょっと疑問に思ってしまった。

何も前情報がない状態で読んだ時にはかなりはまって読んだので、逆に後から付け加えられてくる情報によってひどく不安にさせられてしまった。




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